[125] 破綻国家ギリシャとドイツ国民の関係は、日本政府と日本国民の関係と同じ |
2012年 6月 06日(水曜日) 02:09 |
朝日新聞の6月5日朝刊に、「ギリシャでドイツ語を習う市民が増加している」という記事が出ていた。ギリシャでは、ユーロ圏離脱かという経済危機のなか、ドイツ語を身につけてドイツに移住しようという人間が増加しているのだという。 すでに、富裕層が逃げ出したギリシャだが、いまは一般層のうち、優秀な人間、若い人間から、率先して国を出て行こうとしている。記事の終わりに、ドイツ連邦庁のデータが出ている。それによると、2011年のギリシャからドイツの移住者は2万3779人。前年の1万2522人からほぼ倍増している。 マイケル・ルイスによるユーロ危機の真相を追った『ブーメラン』という本がある。リーマンショックのインサイドを追ってベストセラーになった『世紀の空売り』 の続編ともいうべき本だが、この本を読むと、真面目なドイツ人納税者の手に世界の運命がかかっていることがわかる。 『ブーメラン』と『世紀の空売り』 ギリシャ人のダメぶりに、いい加減愛想を尽かしてもいいが、ドイツ人は本当に粘り強い。とくにメルケル首相のタフぶりには驚く。6月17日のギリシャの再選挙の結果は見えている。彼らは、世界のことなど自分たちの知ったことではない、ともかく自分たちの暮らしがこれ以上悪くなるのは耐えられない、としか思っていないからだ。
ドイツの地方銀行がCDSによるデフォルトのリスクを引き受けた
『ブーメラン』は、リーマンショックを引き起こしたCDSの空売りで大儲けしたヘッジファンドが、今度は日本とフランスの国債のCDSを買っているところから話が始まる。ヘッジファンドの次の狙いは、国債のデフォルトなのだ。すでに、ギリシャは血祭りにされた。国民と政府に責任感がなく、野放図に借金を重ねてきたのだから、当然の報いだろう。この本で、いまやヘッジファンドの標的は、国家破産になったことがわかる。 ところで、世界金融はゼロサムゲームだ。誰かが儲ければ、誰かが損をする。では、リーマンショックのとき、ヘッジファンドや投資銀行に莫大な利益をもたらしたCDSの売り手は、誰だったのだろうか? CDSを売るということは、デフォルトのリスクを引き受けるということ。答えは『ブーメラン』に書かれている。ドイツの地方銀行である。ヘッジファンドと投資銀行の利益は、ドイツの地方銀行の損失、つまり、ドイツ国民のお金だったのだ。
勤勉な日本人が無能無策な日本政府を支える理由はない
今回のユーロ危機は、住宅ローンのCDSが国債のCDSに変化しただけの話である。ギリシャをはじめとする破綻国家の国債リスクを引き受けているのもまた、ドイツの勤勉な納税者なのだ。現在、ギリシャ、スペイン、イタリアなど破綻国家の国債は、ドイツの銀行に大量に眠っている。だから、これらの破綻国家を救済しなければ、ドイツ国民は自国の金融システムの崩壊により、莫大な損失を被ることになる。 このようなドイツの納税者とギリシャのような破綻国家の関係は、現在の日本の納税者と日本国政府の関係と同じだ。日本の勤勉な納税者は、日本国政府を懸命に支えなければ、日本国債を大量に抱え込んだ日本の銀行が次々と破綻することになるので、莫大な損失を被る。 野田首相が「日本がギリシャになっていいのか?」と、増税を迫る。これは脅迫だ。しかし、勤勉なドイツ人が無能無策なギリシャ政府を支える理由がないように、勤勉な日本人が無能無策な日本政府を支える理由もない。
アジアでは、希望のない日本を脱出した若者たちの姿が目につく
ギリシャは日本の明日の姿とすれば、財政危機が顕在化すれば、資産フライトを終えた富裕層から、海外移住が始まるだろう。すでに一部の富裕層はそうしている。次が一般層で、優秀な人間(世界どこでも仕事がある人間)と若者の番だ。 じつは、メディアはあまり伝えないが、すでに一部の若者たちの日本離れは進んでいる。アジアに行けば、希望のない日本を脱出した若者たちの姿が目につく。香港、シンガポール、バンコク、バンガロール……などで、現地の若者、中国、韓国の若者、欧米の若者たちと競争を始めた日本人の若者たちが目につきだした。
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