メルマガ[009]パナソニック、シャープ大幅赤字。家電産業が日本から消える日は来るのか? |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 No.009 2012/11/06 パナソニック、シャープ大幅赤字。家電産業が日本から消える日は来るのか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ お早うございます。秋が深まるとともに、憂いも深まります。 パナソニックとシャープの大幅下方修正は、今秋最大のニュースです。メディアは相変 わらず年内解散(政局)を追いかけていますが、家電産業の崩壊は、日本の崩壊です。 政治より深刻な、私たちの未来を揺るがす大問題です。 [目次] ─────────────────────────────── ■大幅な下方修正というが、じつは予想されていたこと? ■量販店の店員まで現在の状況がわかっていない ■松下幸之助の「水道哲学」を忘れたパナソニック ■ハイアールのほうが「水道哲学」を実践している ■「つくったものを売ろう」とし「売れるものをつくろう」としない ■テレビに大型投資をしたことが凋落の原因ではない ■シャープの利益率はサムソンの10分の1という不思議 ■日本とはまったく違う家電量販店の売り場に驚く ■消費者の暮らし、文化を無視していた日本製品 ■「イノベーション」に対する日本人の御認識 ■二つの破壊的イノベーションにより既存企業は転落する ■コンピュータの歴史に見る「イノベーションのジレンマ」 ■スマホ「iPhone」とタブレット端末「iPad」は新市場型破壊 ■日本の半導体産業崩壊の教訓から学ぶこと ■同じことを繰り返す背景にはなにがあるのか? ───────────────────────────────────
■大幅な下方修正というが、じつは予想されていたこと?
パナソニックは10月31日、2013年3月期の連結最終決算(米国会計基準)が7650 億円の赤字(前期は7721億円の赤字)になる見込みと発表した。2年連続の大幅赤字 である。当初は500億円の黒字としていたのだから、これは下方修正ではない。はなか ら予想されていたことで、発表したくとも怖くてできなかったのだろう。
続いて、シャープが11月1日、同じく3月期連結決算を8月時点の予想の2500億円の 赤字から4500億円の赤字に変更すると発表した。たった2カ月で2000億円も下回るの だから、これも下方修正とは言い難い。
要するに、日本の家電・エレクトロニクス産業の「最後の日」が近づいているということだ。 メディアはまだ悠長に構えているが、すでにこの2社は破綻状態にあり、回復の見込みは ほとんどない。これを書いてしまうと、パニックが起こりかねないので、事情を知っている記 者も記事を控えているだけだ。 ただ、パナソニックの津賀一宏社長も「われわれは負け組」と発言したように、この後は、 どのように事業を縮小し、撤退していくかが課題になる。
■量販店の店員まで現在の状況がわかっていない
それでは、日本から家電産業がなくなってしまう日が来るのだろうか? その答えはイエスでもありノーでもある。ただし、このメルマガは未来地図を描くことだか ら、はっきりとイエスと言っておきたい。かつて日本の家電産業は、アメリカの家電産業を 壊滅させた。それと同じことが、日本で起こると思っていい。
パナソニックが大幅赤字を発表した翌日、あるメディアは家電量販店の店員のコメントを 載せていた。このメディアは、日本の家電が「負け組」に転落したことを特集していたが、そ の原因を「韓国勢の台頭、空前の円高、テレビなどの価格の下落」などとしていたので、家 電量販店の店員のコメントも「価格では中国、韓国製品にかないません。でも、日本製品に は安心感があります」だった。
しかし、このコメントは完全に間違っている。 いまや日本製品に安心感があるはずがない。いつ、その会社がなくなってしまうかわからな いのだから、もっとも危険だ。その意味で、量販店の店員のコメントは間違っている。
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