[146] 年末年始久しぶりのハワイ滞在。現地で思った日本の行く末とアベノミクスへの疑問 |
2013年 1月 10日(木曜日) 00:04 |
この年末・年始は、ハワイ島のワイメアという高原の町に滞在していて、一昨日、帰宅した。この間、締め切りが迫っている単行本の原稿を書こうと思っていたが、案の定、なにもしなかった。ワイメアでの滞在先は、娘が見つけたワイメア・ガーデンズ・コテージというB&B。コテージは三つしかなく、どれも完全なアメリカン・カントリースタイル。一つは、毎年やって来るというスイス人のカップルが1カ月滞在中。もう一つは、メインランドからの旅行客が泊っていた。 コテージの経営者は、ロードアイランド出身のキャンベルさんという老夫婦。ご主人のほうは「日本へは朝鮮戦争のときに行った。ただ休暇でだが」というので、年齢は80歳を超えているだろう。毎朝、愛犬といっしょに庭にやってきて、庭隅にある鶏小屋の卵を取っていた。 その卵6、7個とマフィンと果物を、毎日、妻のバーバラさんがコテージに持ってきてくれた。
Waimea Gardens Cottageの庭と鶏小屋
強風が吹く夜、空には満天のきらめく星が
ワイメアは、北のノースコハラの山麓と南のマウナケアの山麓の合流点にあり、標高2500フィート(約750メートル)を超えているので、海岸部と違って夜は寒い。それに、北東から吹く貿易風が直接山肌に当たるのか、いつも風が強かった。まさに「風の町」といった趣だ。ときには嵐かと思うぐらいの強風が吹き、その音がひと晩中続いて、夜中に目を覚ますこともあった。 そんな夜には、空には、満天の星がきらめいていた。北斗七星とカシオペア、そして北極星、冬の星座オリオンが、これほど間近に見えたことはない。日本では、八ヶ岳高原、アメリカではメイン州の奥地、コロラドのグランドキャニオンなどで、これと同じ星空を見上げたことがあったが、そのときよりも感激した。 ただ、風が強くて冷えるので、ジャケットを着込んで庭に出た。 もちろん、朝になり、風が止んで陽が差すと、南国だけにすぐに暑くなる。朝になると鶏が鳴くので、目をこすりながら庭に出ると、そこに野生の七面鳥が歩いていて、びっくりしたこともあった。
日本のニュースを見るたびに、株価上昇と円安に驚く
ハワイ島に来る前までは、マウイ島のパイアという小さな町にいた。ここでも小さなビーチ沿いにあるB&Bに泊った。だから、観光地に出向かなければ、日本人の観光客とは出会わなかった。日本のニュースも、テレビやネットであえて見ようとしなければ、程遠くなる一方だった。 そのせいか、ときどき日本のニュースを見にいき、そのたびに株価が上がっていて、円安が進んでいることに、かなり驚いた。 アベノミクスに対する期待感はわかるが、日本の現実はなにも変わっていない。投資家が金融緩和で円がばらまかれる状況を見越して「先食い」しているだけだろう。日本が不況から脱して、成長路線に乗るという確実な話があるのだろうか?
少子高齢化による人口減と教育の劣化で衰退は止まらない
日本がここまでダメになったのは、たった二つのことからだと、私は思っている。一つは、人口減による少子高齢化。毎年、人が減り続けて社会から競争が失われ、外から移民も入ってこない社会は、必然的に衰退する。 もう一つは、教育の遅れだ。グローバル化した世界、IT化した世界では、それに適応するための新しい教育が必要だ。それを日本は怠り、繁栄の後に続く世代から国際競争力を奪ってしまった。内向きで英語を話せない若者が増えた。いまの日本には、次の時代を担うリーダーやエリート人材が、ほかの国に比べて圧倒的に少ない。 そう考えると、日本の衰退はすぐには止まらないと、思う。金融・財政政策だけでは日本経済は立ち直らない。インフレターゲットで物価を上げ、円安にして輸出を促進してみても、給料が上がらず、海外に売るものがないのなら、逆に生活はさらに窮乏するだけになる。
いくら公共投資しても、それによって成長する産業があるのだろうか?
安倍内閣は成長戦略を練るため、1月8日、「日本経済再生本部」を立ち上げたが、その中身は、相変わらず総額20兆円の公共事業だ。 現在、世界の先進国では、財政削減の影響で公共事業がどんどん減っている。それを、日本だけが国債増発(借金をして)で公共事業を行うというのだから、外から見ると滑稽に思える。日本に必要なインフラはすでに国内にはない。日本の成長のためには、国内から出て行った企業のために、たとえば、東南アジア諸国でのインフラを整備するしかない。 国内で、いくら公共投資しても、それによって成長する産業があるのだろうか? デフレによる物価の安さで日本人は生活レベルを維持できた
ハワイはアメリカのメインランドに比べると、物価が高い。島国だから、生活に必要なほとんどものを外から運びこまなければならないので、これは仕方ないことだ。ただ、それにしても、たとえば牛乳の高さにはびっくりする。ワイメアにはパーカーランチという東京23区より広い牧場がある。ここには、馬も牛もいる。ハワイ島最大の畜産地だが、酪農による牛乳生産は行っていない。そのため牛乳は本土から運んでくるので、必然的に高くなる。 また、電力料金もガソリン代も高い。 たとえば、ランチにスタバックスでコーヒーとサンドイッチを買うと、すぐに10ドル以上になる。ターキーのサンドイッチが10ドル以上するのだから驚きだ。スタバに限らず、ちょっとしたカフェでランチにサンドイッチ、パンケーキ、クレープ、パスタなどを食べれば、15ドルは取られる。 それに比べると、日本の一般物価は、本当に安い。ランチはワンコイン(500円)ですむところも多い。これが、日本のデフレであり、その恩恵で、これまで日本人は年々収入が減っても、いままでどおりの暮らしを維持できたのだ。 しかし、アベノミクスは、下手をすれば、こうした暮らしを破壊してしまうだろう。 ワイキキで行列ができる店の人気の秘密とは?
クリスマス前はワイキキにいたが、びっくりしたことが一つある。それは、クヒオ通り沿いのナフアストリートそばの一画に、連日、連夜、行列ができていたことだ。娘が高校生まではナフアストリートにあるコンドで毎年夏を過ごしていたから、この一画はよく知っている。しかし、これまで、こんな行列は見たことがなかった。 それで、なんの行列かと見に行くと、讃岐うどんレストラン「丸亀製麺」(Marukame Udon Waikiki Shop)の店の前の行列だった。日本人観光客はもちろん、ロコの人間、アメリカ人観光客など50人近くが、いつ通りかかっても、店の前に並んでいた。 昔、ここには、日本のカレー店「CoCo壱番屋」や「ジャック・イン・ザボックス」があったが、昨年4月に「丸亀製麺」がオープンして以来、毎日、行列ができているというのだ。
異常ににぎわう丸亀製麺 地元の観光産業の人間によると、「じきに2号店ができるほどの人気です。全68席ありますが、いつ行っても20分から30分待ち。ただ、日本と同じでセルフサービスですから、回転は速い。人気なのは、なんといっても価格。定番メニューの釜揚げうどんの並、ざるうどんの並が3.75ドルと、安いこと。円にして300円ちょっとですから、ホントに安い」とのこと。 ワイキキに来てまで、なぜ、讃岐うどんを食べなければいけないのかとは思うが、安ければ当然だ。アメリカ人だって、世界どこに行ってもマックを食べる。 価格が安いこと、つまりデフレは、ここまで人間の行動に影響する。
観光客が戻り、観光産業に頼るハワイ経済も活気が戻る
ハワイの新聞によると、昨年のクリスマスシーズンの小売りは前年度を上回ったという。メインランドの状況が渋かったのに比べ、ハワイは好調だったと伝えていた。言うまでもなく、ハワイ経済の中心は観光産業である。リーマンショック以後、一時的に落ち込んだ観光客は、いまやすっかり回復し、メインランドからの観光客も2012年は前年比で上回ったという。 ハワイを訪れる日本人観光客は、年間約120万~140万人。約500万人訪れるメインランドからの観光客に次いで第2位。全観光客の4分の1を占めている。日本人観光客は、ほかの国の観光客に比べて大量に買い物するので、ハワイ州にとっては非常に重要な収入源となっている。 ワイキキでは、最近はインド人観光客(米本土からの)、韓国人観光客、中国人観光客も多くなったが、やはり日本人がいちばんおカネを使っている。ただ、それはお仕着せのパッケージ化されたツアーや食事、そしてショッピングに傾いているが、それでもブランドブテックに行くと、ほとんどが日本人観光客だ。
もしかしたら、円高の今回が日本人の海外旅行の最終シーズン
デフレで超円高。1ドルが恒常的に80円を切るという時代は、これまでなかった。その分、円はアメリカでは使い手があり、いくらハワイの物価が高くても、それを感じないですんできた。しかし、それも、安倍政権のインフレターゲット政策によって終わるのだろうか? この先、1ドルが100円以上の円安になれば、海外旅行は激減するだろう。その意味で、日並びがよく円高がまだ続いていた今回の年末年始が、日本人にとって最後の海外旅行シーズンになったと言えるかもしれない。 ハワイ州第二の町ヒロは時代に取り残されてさびれている
ワイキキは観光客が戻り経済も好調さを取り戻したが、ハワイ島では、観光スポット、リゾートエリア以外は、経済的には恵まれていない。 とくに、ハワイ州第二の都市ヒロはさびれていた。 日本のガイドブックのなかには、日系人にゆかりが深く、古い映画館やカフェがあるこの町を、「昔に帰ったような懐かしい町」として称賛するものもあるが、若いツーリストにとってなんの魅力もないだろう。「3丁目の夕陽」の世界をハワイに見て感動するのは、日本人の年配旅行者だけだ。 地元の人間は「ヒロはいいとろで住みやすいけど職がない」と嘆く。ホームレスの姿もよく見かける。
ヒロの町のダウンタウン「カメハメハ通り」。左の写真正面は、昔ながらの映画館。
ヒロは雨の町。毎日スコールがある。町からヒロ湾を望む。
メリーモナーク・フェスティバルには日本人女性が大挙してやって来る
ところが、ヒロは、毎年4月に開催されるフラの祭典、メリーモナーク・フェスティバルによって蘇る。メリーモナーク・フェスティバルというのは、ハワイでもっとも権威のあるフラの競技会とされ、世界中からフラの関係者を集める大祭典だ。このメリーモナークに近年もっとも貢献しているのが、日本人女性。それも中年以上のシルバー世代である。 現在、ハワイ以外でもっともフラが盛んなのが、日本である。いまや日本中にフラ教室があり、年々フラ人口は増加している。フラの特徴は、誰でも気軽にできることであり、そのため、フラ教室はいまや年金暮らし世代の女性の社交場となっている。 このシルバー世代女性たちが、メリーモナークの期間中、ヒロに大挙して押し寄せる。 「1週間の間、店中、日本人でいっぱいになります。みなさん、フラ関係のものならなんでも買い込んでくれるので文句は言えませんが、集団でうわーっと-来てうわーっと帰っていくので、なんか異常です」と、ヒロの町のスーべニア店の女性は言う。
昔は単なる「町おこし」祭りで、フラの祭典ではなかった
日本でフラをやっている女性にとってヒロは聖地だが、じつは当初、メリーモナーク・フェスティバルは、フラの祭典ではなかった。1964年に第1回大会が開かれたが、このときは1960年の津波被害で経済衰退した町の「町おこし」祭りにすぎなかった。当時のフェスティバルの内容といえば、カラカウア王の戴冠式デモンストレーション、カラカウア王の髭そっくりさんコンテスト、リレー競走などだったという。 それが、1971年からフラの大会として生まれ変わり、そのために尽力したアンティ・ドッティ・トンプソンとハワイ・フラ界の伝説的クムフラ(指導者)、故アンクル・ジョージ・ナオペは、日本のフラ関係者の教祖となった。 当然、フェスティバル期間中、ヒロのホテルは満室だ。コンテスト出場者ですら、日本人観客のせいで、宿探しに追われるという。今年のメリーモナークは50周年だから、いまからヒロの人々は、大挙してやってくる日本人シルバー女性軍団への準備に追われている。
日本は世界でも最悪の「女性差別、女性蔑視の国」
日本が経済衰退した原因の一つに、女性のパワーをうまく使わなかったことも挙げられる。日本は現在、世界の中でも女性の地位がもっとも低い国、私に言わせれば「最悪の女性差別国家」である。 ハワイに来る前、2012年12月17日、先進34か国が加盟する経済協力開発機構(OECD)から、「ジェンダー・フォーラム」の報告書が発表された。 それによると、日本の男女間の給与格差は40歳以上では40%にも上り、OECD加盟国中、韓国に次いでワースト2位。上場企業の役員の女性の割合はわずか5%で、これも加盟国中では最低レベル。つまり、日本では「男女平等」は実現していないのだ。
女性2人を執行部に登用した安倍内閣だが、女性の地位向上に本気なのか? 日本で暮らしていると、感じないかもしれないが、たしかにこの国では、女性の社会参加が極端に少ない。給料も男の6割程度に抑えられ、管理職は少なく、社長となるとほとんどいない。 また、政治分野でも、女性議員は少なく、まして大臣となると、これまでの内閣で1、2名がせいぜいだった。また、女性が首相になったこともない。 そこで安倍内閣は、党執行部四役に女性を2人起用した。高市早苗さんが政調会長になり、野田聖子さんが総務会長になった。しかし、これで本当に「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする」と公約が実現するのだろうか?
男女雇用機会均等法がかえって女性を会社から追放した
日本で男女雇用機会均等法が制定されたのは、もう20年以上前のことである。 もし、この法案の主旨通りに日本の社会が進んで来ていたなら、いまの日本の会社には、女性正社員、女性管理職があふれていただろう。なぜなら、入社試験をやれば、女性の方が男性より、筆記試験においても面接においても優秀だからだ。 しかし、日本の企業は、優秀な女性を採用せず、それより落ちる男性を採用し続けた。官庁も同じだ。 男女雇用機会均等法は、職場の女性社員の地位と給料を上げることにはならず、むしろ逆に、職場から女性を追いやった。1990年代に入り、日本経済が低迷しだすと、企業は職場から正社員女性を減らし、その代わりに、解雇が簡単な派遣やパートなど非正社員女性を増やした。 つまり、均等法で保護されるはずの正社員女性はむしろ減り、非正社員女性が増えたのだ。それでも、今日まで女性たちは必死に働き、企業、いや日本経済を下から支えてきた。
低賃金で懸命に働く女性たちがいるからいまの日本経済はもっている
厚生労働省の調査によると、現在、女性労働者の約50%が、パートタイムや有期契約労働者、派遣労働者など契約形態が正社員とは異なる非正社員として働いている。そして、パートのなかには、フルタイマーと同じ仕事をさせられている女性は多い。スーパーや銀行などはとくにそうだ。女性労働白書によれば、1999年からは、全就職女性の5割以上が、パートタイマーとして就職している。 低賃金で懸命に働く女性たち。彼女たちがいなければ、いまの日本経済は持たない。なのに、それを誰もはっきりと指摘しない。 優秀で働き者の日本の女性が、自分たちの子供を、いじめが絶えず、受験重視で画一的な人間にしかならない日本の教育現場に預けられるだろうか? グローバル時代なのに、英語教育もいい加減で、ITや経済の最先端教育もできていない、日本の教育現場に委ねられるだろうか? とくに公立学校に行ったら、日本では、もはや将来はないと考えたほうがいい。
ハワイ島でいちばんのプライベートスクールがすぐ近所に
私たちが泊っていたワイメア・ガーデンズ・コテージのすぐそばに、「Hawaii Preparatory Academy」(HPA)という私立のボーディングスクールがある。高原の一画の広大な土地に校舎と寄宿舎、それにトラックフィールドなどの施設があり、ハワイはもとより、世界中から学生が集まる。 娘の小中学校の同級生の一人は、ここを卒業して東部のアマーストカレッジに行った。アマーストは今年の大河ドラマ『八重の桜』のヒロイン新島八重の夫・新島襄の出身校で、全米最難関のリベラルアーツカレッジである。
素晴らしい環境にある寄宿学校HPAのゲートとフィールドトラック 新島襄は脱国者だった。日本では、江戸幕府が1633年に海外渡航禁止令を発布して以来、日本人が国を出るのは禁止されていた。鎖国とは、外国を受け入れないことばかりではなく、外国に行くことも禁止された「監獄状態」を指す。 海外渡航禁止令が廃止されたのは、1866年。 このとき、江戸幕府は、海外渡航を志願する者に対して「御免の印章(ごめんのいんしょう)」、つまりいまで言うパスポートを初めて発給した。これを明治新政府が引き継いだ。 新島襄は、明治政府のパスポートをアメリカで受け取り、晴れて日本に帰国し、明治の日本の発展に寄与した。
近代日本の発展は海外に渡った人間たちによって成し遂げられた
日本は、明治以来、海外、とくに欧米で先進文化に触れた人間たちによって発展してきた。第二次大戦後も同じである。 しかし、そうした人間が活躍して半世紀が過ぎると、日本人は再び内向きになり、発展から取り残されるようになる。先進人間たちが始めた先進教育はいつの間にか、管理教育になり、進取の精神を持った人間が育たなくなってしまう。この揺り戻しが日本をダメにしてしまうのである。 日中戦争から太平洋戦争へ道のりも、バブル崩壊から失われた20年への道のりも、海外第一世代から半世紀以上を経た後、その精神を受け継がなくなった内側人間によって引き起こされた。 崩壊した民主党政権もいまの安倍政権もそんな人間ばかりだから、この先、日本を変えることなど無理だろう。
ハワイ州で暮らす人々の最大の悩みは教育レベルが低いこと
ハワイ州は全米の50州のなかで、教育レベルが下から2番目と低い。とくに公立学校のレベルは最低クラスで、しかも財政難から週4日授業(金曜日が休み)をいまも続けている。 「ハワイ島はいいところですけが、子供のことを考えるとパブリックスクールには通わせられません。かといってプライベートとなるとHPA以外にいい学校はないし、授業料はものすごく高いので、本当に悩んでいます」 と、日本から移り住んで6年目になるという、ある日本人夫婦は私たちにこぼした。 オバマ大統領がハワイ出身であるのは、よく知られている。大統領が出たのはプナホウ・スクールで、ハワイ州トップの名門私立である。このプナホウとイオラニスクールがハワイの最高レベルの高校で、ここでトップレベルの成績を取れば、東部のアイビーリーグ進学への道が開かれる。だから、日本からの留学生も何人か通っている。
経済は回復しても、貧富の格差が縮まることはないだろう
アメリカ経済は今後、オバマの第二期に入って、回復していくだろう。ただ、社会の格差は開き、アメリカ人全体が豊かになっていくという道はもうありえない。お金持ちはますます富むので、そこからのトリクルダウンに頼って、自由な社会を維持していくしかない。 それにひきかえ、日本は、借金財政による公共事業という税金のバラマキで、ますます社会主義的な国家になっていくだろう。税金にぶら下がる人間ばかりが増え、競争が失われる。そうして、人々はますます内向きになるだろう。 ハワイ島の玄関は、コナ空港である。年末、ここに着いたとき、飛行機の窓から、滑走路脇にずらっと並ぶプライベートジェットが見えた。その数、4、50機はあったと思う。メインランドの富裕層は、アスペンの別荘での雪の暮らしに飽きると、ハワイ島にやってくる。そうして、高級リゾート地にあるフォーシーズンホテルや自分の別荘で暮らす。
朝日新聞が伝える「脱ニッポン」現象は、今後加速する
ハワイから帰国後、たまった新聞に1日がかりで目を通した。そのなかで、朝日新聞の1月6日の別刷り 『Globe 』の見出しと記事が目についた。見出しは「となりの山田さん、マレーシアに引っ越すんだって」となっていた。中面の記事には「お向かいの小池さん、インドネシアで就職するみたい」という見出しもあった。 「いま、海外に住む日本人は118万人を超える。100人に1人の割合だ。内向きと思われがちだが、新しい形で海外を目指す人たちが出てきている。 」 一つめは、いまだに日本が鎖国状態にあり、自由がないこと。二つめは、社会システムと税制から、いくら頑張っても報われないこと。そして、三つめが、子供の教育だ。
大量の国債発行を続けるなか、インフレターゲット2%は本当に可能なのか?
今日もまた、株価は少し上昇し、円相場は円安にふれている。アベノミクスのアドバルーン効果は続いている。しかし、インフレターゲットが目標とする2%のインフレが本当に実現するだろうか?そのためには、どう見ても円が100円を超えなければならない。 日本でインフレ率が2%近くなったのは、バブル期以降では、円安が140円台まで進んだ1997年の1.76%だけだ。原油が1バレル147ドルに急騰した2008年でも、1.38%にしかなっていない。 日本の国債発行額は、現在、年間41兆円に達している。安倍内閣が組む今年度予算では50兆円を超えるだろう。しかし、これは年度予算のなかでの「新規発行国債」であり、「借換債」も入れれば日本は毎年150兆円以上の国債を発行している。つまり、10年前に発行した10年国債を返済できず、60年償還ルールで「借換債」を発行して60年後に償還するという離れ業を続けている。
空洞化は進み、資産フライトも進む。そして、ついに人材のフライト時代になった
アベノミクスは、じつは破れかぶれではないのだろうか? 太平洋戦争と同じく、負けるとわかっていて始めた破れかぶれの政策のようにも思える。具体的にどの産業で今後日本が食べていくのか? そういうことのほうがよほど大事なのに、それが見えてこない。 昨年暮れに、三菱商事の金属資源部門がシンガポールに本社を移転させるというニュースがあった。こうした空洞化は、今後ますます進むだろう。それとともに、資産フライトも進み、有益な人材のヒューマンフライト(海外移住)も、ますます進むだろう。 |
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