15/03/09●電子書籍は本でなくサービスとEUが認定し大波紋 |
3月6日、EU最高裁は、フランスとルクセンブルクが電子書籍に適用しているVAT税率が違法であるという裁定を下した。この裁定の根拠が、「電子書籍は紙のようなコンテンツでなくサービスである」ということだったため、欧州の出版業界に大きな波紋を巻き起こした。 VAT税率は、フランスでは電子書籍に対しても紙書籍と同じ5.5%、ルクセンブルクでは3%である。これは、書籍に対して文化財ということで軽減税率を適用しているからだ。しかし、他の欧州諸国はこれを適用していないため18〜20%となっている。EU域内ではEU司法が優先するが、EU法が国内法を破棄させる力は持っていない。そのため今回の結果で実質的な変化はない。 ただし、すでに今年の1月1日から、電子書籍課税は「消費地課税」に変っている。これまではVAT税率が安いルクセンブルクから配信されていたが、この変更により、他のEU諸国の電子書籍価格は実質的に値上がりした。 以上の背景を元に今回のことを考えると、問題は税率や課税にあるのでなく、EUが電子書籍を紙書籍と別のもの、しかもサービスとしたことにある。このことはこれまでさまざまに議論されてきたが、結論は出ていない。 ネットを通してダウンロード、ストリーミングされるものが、はたして商品(モノ)と言えるのか、サービスではないのかという見方は根強いからだ。とすると、EUがサービスとしたことで、これに20%近いVATを課すのはどんな根拠に基づくのだろうか? このような問題は、世界共通である。電子書籍は、そのものの法的性格が定義されないまま、これまで進んできた。今後は、定額ブッククラブのようなサービスが中心となりそうなので、消費税の軽減税率が適用されるかどうかにも影響しそうだ。 |