15/10/02●アメリカで電子書籍が失速、なにが起きたのか? |
アメリカ出版社協会(AAP)加盟の1200社の1-5月の電子書籍の売上(予想値)が前年同期比10%減という大幅に失速したことで、アメリカで論争が巻き起こっている。 失速の原因についてはいろいろ言われているが、次の2点に絞られると思う。一つは、出版社がアマゾンと再交渉し、電子書籍の価格決定権を取り戻したことで、多くの出版社が電子書籍の価格を上げたこと。もう一つは2011年には約2000万台だった電子書籍リーダーの売上台数が、昨年は約1200万台と大幅に低下したことだ。 とくに一つめの要因では、たとえば、13ドルの電子書籍とペーパーバックの値段が大して変わらなくなったので、プリント本に戻る読者を増やした。価格はやはりもっとも大きな要因と言える。ただし、AAPのデータには、価格が安い自費出版の電子書籍本の読者は対象外である。 論争の火付け役となった「Good eReader」のコズロウスキ氏は、「デジタル書籍市場は滅亡に向けて進み始めた」と言っているが、これは論争のための「ため議論」にすぎないのではないのだろうか。テクノロジーの進化のなかでの踊り場と見るべきで、プリント本がこれによって復活するというのは当たらないと思う。いずれにしても、大手出版社は、電子書籍とプリント本の双方から利益を求める方向を模索し続けている。 |