[260]マカヒキ出走「凱旋門賞」を巡るどこか虚しい大騒ぎ |
2016年 10月 01日(土曜日) 14:29 |
今年からJRAが凱旋門賞の馬券を売ることになった。しかも、ただ1頭出走する日本馬マカヒキが、現地のブックメーカーのオッズで2番人気になった。さらに、今回は地上波によるテレビの生中継もある。 -----というわけで、例年になく、欧州の2流のG1にすぎない凱旋門賞が盛り上がっている。
しかし、よくよく考えると、どこか虚しい。なぜなのだろうか? それはまず、馬券にある。JRAが売るとはいえ、この馬券は日本だけのプール方式。つまり、ガラパゴス馬券だから、現地とオッズが大きく違ってくる可能性がある。もしかしたら、マカヒキが1番人気になるかもしれない。 となると、これはオッズではない。単なる人気投票だ。それほど、日本の馬券購入者は愚かだろうか? 毎週、JRAの馬券を買っているファンは、今回は苦渋の選択を迫られる。お金か? 馬か? それとも日本か?という選択だ。お金が好きなら、マカヒキなどどうでもよく、ただギャンブルとして買えばいい。馬が好きなら、自分の好みの馬を買えばいい。ところが、マカヒキが出ているというだけで、これを買うとなると、こういう人間は、お金も馬も好きではなく、単に日本が好きということになる。日本が勝てばなんでもいいのだ。そこまで、競馬ファン、つまり、ウィークエンド・ギャンブラーは愚かだろうか?
さらに、もっと困っているのは、競馬記者、評論家などの“プロ”と言われる人々だろう。これまでなら、海の向こうのレースに日本馬が出るだけだから、愛国心丸出しで、勝ってほしいと言っていればよかった。それが、今回は馬券を売るので、ファンのために、まともに予想しなければならない。 そうなると、向こうの競馬に対する知識・知見がないうえ、取材もしていない、情報もないのだから、プロとしてのメンツが保てない。それに、ほとんどの人間が日本語以外できない。いったい、どんな予想とコメントが出るのか、私はレースよりもこちらのほうに興味がある。
ただ、私がもっとも嫌いなのは、向こうの競馬を「本場の競馬」と称し、凱旋門賞を「世界最高峰の一戦」と言って、「やはり違いますね」「素晴らしいですね」などと言う人たちだ。文化・伝統に対する見識ゼロのこういう人間たちが、じつは競馬の本当の面白さを歪めて伝えてきた。 凱旋門賞は、例年、ロンシャン競馬場で行われるから、どこからどう見ても「ズブい馬」ナンバー1決定戦だ。しかも、近年はアメリカ馬がまったく出ていないので、欧州のローカルG1だ。いったい、どこが本場なのだろうか? 情けないのは、こんなレースさえ、日本馬が勝っていないことだ。すでに日本調教馬は世界トップクラスだから、もう勝っていい。しかも、今年はロンシャンでなくシャンティイ競馬場で行われる。ここなら、スピードとキレ主体の日本馬でも十分通用する。
ただ、マカヒキには勝ってほしいが、勝つと勝ったで、見たくない光景がある。それは、騎手、調教師、馬主などの関係者が喜ぶ以上に、キャスターから解説者、ゲストまで、みな大喜びすることだ。その浅ましい姿を本当に見たくない。 日本が世界を負かすことが、そんなに嬉しいのか?
Harzand beats US Army Ranger to win the Derby というわけで、なんか手放しで楽しめない凱旋門賞になってしまった。私の予想、私がなにを買うかは、別の「G1予想」コラムに書いた。繰り返すと、英ダービー馬のハーザンドだ。日本ダービー馬マカヒキより弱いのは明らかだし、前走のチャンピオンSではまったく見せ場なしの8着と惨敗している。明らかに調子もよくない。だから買いだ。 私は勝つと思う馬は買わない。負けると思う馬を買う。馬そのものを、また競馬というスポーツそのものを、本当は好きではないからだろう。 |
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