17/08/25●「書店ゼロの自治体、2割強に」との記事が |
朝日新聞(8月25日)が「書店ゼロの自治体、2割強に 人口減・ネット書店成長…」という特集記事を載せている。その記事によると、書店が地域に1店舗もない「書店ゼロ自治体」は、香川県を除く全国46都道府県で420の自治体・行政区にのぼり、全国の自治体・行政区(1896)の2割強を占めるという。 記事はお決まりで、「文化拠点の衰退と危惧する声も強い」と書き、全体としては懐古ムードに満ちている。 いったいなぜ、こんなふうになってしまうのだろうか? 書店がなくなったとしても、文化が衰退するわけでないし、人口減とネット通販が進展しているのだから、書店に限らずリアル店舗がなくなっていくのは当然だ。問題は、こうしたことが加速していくと、この先どうなるかだろう。 ただ、私のような年代の人間には、書店減少は身につまされることなので、記事から2エピソードを、以下、勝手に引用させてもらうことにした。
■宮崎県串間市の例 《宮崎県最南端の串間市では14年、1万冊を扱っていた創業約100年の「つまがり書店」が倒産した。最盛期には年間2億円の売り上げがあったが、9千万円台まで落ち込んでいた。経営していた金川敏洋さん(51)は「人口が減る街で本屋はできない」。人口は30年間で3割も減り、現在約1万8千人。6校あった中学校は今春、1校に統合された。 人口減に加えて、雑誌を扱うコンビニの増加、活字離れなども影響。本や雑誌の売れ行きが悪くなることで人気の本が配本されにくくなり、それが客の不満を呼び、さらに本が売れなくなる「悪循環」にも陥ったと振り返る。 長年愛用してきた主婦(63)は「市は交通の便が悪く、昔から陸の孤島だが、書店は心休まる場所、ほっとする場所だった。本を読めば心は遠くに飛んで行けた」と惜しむ。 市は15年1月、県内大手の書店幹部に図書館内も含めた書店の開設を要請したが、人件費などをまかなえるめどがつかず、実現できなかった。「文化の灯が消えた感じ。急激に進む人口減が地域経済を直撃している」と市の増田仁・生涯学習課長はいう。》
■北海道留萌市の例 《官民一体の誘致で書店が再生したのが、人口約2万2千人の北海道留萌(るもい)市だ。 10年に地元書店が閉店し、書店ゼロに。翌年3月、三省堂書店(本社・東京)が参考書などを販売する臨時店舗を開いたが、約1カ月後には閉じる予定だった。このまま残ってもらいたい、と市民が動いた。 「冬は吹雪で寒さが厳しく、市外に出るのは難しくなる街。書店がなくなったら困るという強い危機感があった」と塾を経営する武良(むら)千春さん(55)が、元教員の塚田亮二さん(84)らと「三省堂書店を留萌に呼び隊」を結成。大手の三省堂書店のポイントカード会員になる同意をとりつけた署名約2500人分を集めた。北海道留萌振興局もビラを手作りするなど後押しした。 当時、三省堂書店札幌支店長だった横内正広取締役は売り上げを試算し、赤字にはならないかもしれないと判断しつつも、「バクチの面はあった」。でも、熱意に押され、自身が北海道出身ということもあり、「私が責任を取りますから」と亀井忠雄社長を説得。11年7月、「留萌ブックセンターby三省堂書」が開店。地元書店に勤めていた今(こん)拓己さん(68)に業務委託して運営を任せることで人件費を抑え、武良さんら「呼び隊」は「三省堂書店を応援し隊」に名前を変え、雑誌梱包(こんぽう)の作業や市立病院での外商などボランティアを続けている。市も中学校の図書を購入するなど支援している。 店内での「キルト展」「陶磁器展」などのイベントも奏功し、売り上げは月額1千万円を超えた。「市民の力、行政の支援、三省堂の決断。三つがそろったからうまくいった」と今さんは話す。》
記事の最後には、【各都道府県の「書店ゼロ自治体」の数】のデータが載っているので、これも、以下まとめておきたい。 北海道58(31)青森12(30)岩手7(21)宮城6(15)秋田9(36)山形10(29)福島28(47)茨城3(7)栃木2(8)群馬13(37)埼玉9(13)千葉8(14)東京9(15)神奈川4(7)新潟4(11)富山2(13)石川1(5)福井3(18)山梨8(30)長野41(53)岐阜6(14)静岡4(9)愛知2(3)三重7(24)滋賀2(11)京都4(11)大阪5(7)兵庫2(4)奈良19(49)和歌山9(30)鳥取4(21)島根4(21)岡山3(10)広島3(10)山口4(21)徳島7(29)香川0(0)愛媛3(15)高知15(44)福岡17(24)佐賀4(20)長崎3(14)熊本18(37)大分1(6)宮崎8(31)鹿児島9(21)沖縄20(49) *トーハン調べ。7月末現在。丸カッコ内は自治体・行政区に占める割合で単位は%、小数点以下は四捨五入 なお、現在の全国の書店数は1万2526店(書店調査会社アルメディア調べ、2017年5月現在)。2000年の2万1654店から4割強も減っており、年間約500店舗のペースで閉店している。 これは都市部でも同じで、最近、東京で惜しまれて閉店した書店に、山手線目白駅そばの「野上書店」(7月25日閉店)がある。野上書店には、昔、何度か行ったことがある。
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