17/11/28●本1冊をオンラインメディアですべて無料公開、その効果は? |
講談社現代新書が11月に発売した『健康格差』は全章を他社のオンラインメディアに無料提供・公開したことが話題になっている。『健康格差』は、NHKが2016年に放送した同名のNHKスペシャルを書籍化したもの。 公開されたサイトは、次の6つ。日経ビジネスオンライン、ダイヤモンド・オンライン、プレジデントオンライン、東洋経済オンライン、BUSINESS INSIDER JAPAN、ハフポスト。 これまでは、フリー(無料)が当たり前のネットで公開してしまえば、有料の紙のコンテンツは売れなくなると考えられてきたから、このやり方は常識破りと言っていい。 しかし、担当編集者や編集部は「なにもしなければ知られないままで終わる」と、決断したという。著者の1人であるNHKのディレクター神原一光さんは「テレビ局も出版社もリーチできない人がいる。そんな人にこそ読んでほしかった。だから『変なことをしよう』と話し合ったんです」(ウエブメディア「withnews」でのコメント)と語っている。 また、前例として、先ごろ新潮社が行ったウエブ戦略も頭にあったようだ。 新潮社は発売前の小説『ルビンの壺が割れた』を電子書籍やサイトで全文無料で公開。限定2週間の期間中、ダウンロード数は1万を超え、募集したキャッチコピーや、寄せられた感想は計6000件を超えた。 まだ、結果はわからないが、「今の時代、ウエブで無料公開しても、紙の売り上げに関係ないと考えています」(「withnews」での青木肇編集長の発言)が実際にどうだったのか、早く知りたいものだ。 ただ、私としては、ウエブだろうと紙だろうと、いったん情報をタダにしてしまえばもう元には戻せない。それでいいのだろうか? それは、情報の価値を自ら低くしてしまう行為ではないだろうか? |