[294]白鵬、稀勢の里休場。このままだと国技も伝統も崩壊。それでいいのだろうか? |
2018年 1月 19日(金曜日) 19:37 |
予想していたとおり、相撲が大変なことになってきた。「まさかここまで」という予想を超えた事態になっている。注射と談合がなくなり、ほぼすべてがガチンコ相撲となった。その影響で、照ノ富士、白鵬、稀勢の里が休場し、今後もさらに休場者が出るのは間違いない。とすると、相撲事態の存続が危ぶまれることになりかねない。 いったい、どうなるのか? 以下は、6日目が終わった時点で、「Yahoo個人」欄に書いたコラム記事だが、ここに収録しておきたい。
《白鵬、稀勢の里休場。このままガチンコが続けば休場者続出で国技も伝統も崩壊。それでいいのか?》 日馬富士暴行事件の影響は絶大だ。今場所は、注射、談合が消えてしまい、土俵は毎日がほぼガチンコだ。モンゴル互助会も、幕内談合連合もなくなった。全力士が激しくぶつかりあっている。 これは、見ていては面白いが、やっているほうはたまらない。 その結果、2連敗した照ノ富士が早々と弱音をはいて、“もういやだ脱落”し、白鵬が2連敗後に“ふてくされ休場”してしまった。そして、稀勢の里が4敗を喫して、とうとう毎度おなじみの“投げ出し休場”してしまった。さらに、最年長の安美錦も右膝故障で“無念休場”となった。 このまま、ガチンコによる壮絶な星の潰し合いが続けば、もっと、ケガ人、休場者が出るのは間違いないだろう。誰もが、豪風のように、力を抜くのが上手いわけではない。
それなのに、メディアは根本問題にふれない。テレビに出ているコメンテーターたちも、本当のことを言わない。ここまでの流れで形成された「横暴横綱・白鵬VS正義を貫く改革者・貴乃花親方」の図式にのって、やれ「やはりかち上げ、張り手を封じられた白鵬は弱いですね」「稀勢の里はケガを直して万全の状態に戻して戻ってきてほしいですね」などと言っている。要するに「ざまあみろ白鵬、かわいそう稀勢の里」という感情論を正当化して、ただ、頭を抱えているだけだ。
いまの白鵬はかち上げ、張り手なしのガチンコでやれば、10番がせいいっぱい。稀勢の里にいたっては、休場中に体がぶよぶよになってしまったので、10番ももたいないだろう。 注射と談合が行われていたときの相撲は、それなりに秩序があった。この秩序形成が、長年にわたって、「国技」を表向き持続させ、相撲を「伝統文化」にしてきた。大鵬、千代の富士、北の湖などは、それなりに努力してきたのだ。 しかし、それが崩れてしまったらどうなるのか? 2011年の八百長事件のときは、なんとか取り繕って持ち直したが、今回は先が見えない。
ところがいまだに、相撲をスポーツとし、社会的公正を基に報道するという「間違い」をメディアは犯している。コメンテーターも同じで、偽物の正義だと気づきながら、それでコメントしなければいけないという縛りから逃れられない。 しかし、こんなことを続けていると、相撲自体が成立しなくなってしまいかねない。ガチンコを1年間続けたら、全力士が潰れる。横綱、大関がいなくなってしまう事態も考えられる。そうなったら、国技、伝統文化のへったくれもない。いったい、どうするのか? 「いやあ、琴錦は本当にうまいな」と、注射を楽しんでいた時代がなつかしい。
全取組がガチンコになって、誰が優勝するのかわからない。完全なサバイバルゲームになれば、そのほうが面白いという見方もある。そうなれば、従来の相撲ではなくなるので、それではつまらないと思ってきたが、最近は、それでもいいのではと思い出した。貴乃花親方のメールを読んで、とことんあきれてしまったからだ。 貴乃花親方が、 “偉大なる阿闍梨”池口恵観氏に送ったというメールが、『週刊朝日』の記事で公表されている。ウエブでも全文が読める。読むと、もはや終わっていると、頭がクラクラしてくる。 https://dot.asahi.com/wa/2017121100028.html
貴乃花親方は日本語を知らないのではないか?もっともらしいことが書かれているが、日本語としては通じていない。また、言っていることが大仰しく、しかも誤解がある。 これは、『週刊文春』のコラムなどで、能町みね子さんが鋭く指摘している。また、能町さんは相撲愛好家として、貴乃花親方の「思想」について、繰り返し危惧している。 以下は、能町さんも指摘していることだが、あえて、ここに記しておきたい。
貴乃花親方は、自分を「大相撲の起源を取り戻すべくの現世への生まれ変わり」(原文ママ、以下同じ)とし、それが「私の天命」と言っている。相撲道を「角道の精華」と言い、相撲協会は「陛下のお言葉をこの胸に国体を担う団体」としている。そして、相撲教習所に掲げられている「角道の精華」の訓話を、「陛下からの賜りしの訓」とし、「陛下の御守護をいたすこと力士そこに天命あり」などと言っている。 いったい、貴乃花親方はなにを勘違いしているのだろうか? これでは、相撲協会は極右団体にならねばならず、力士はその構成員にならなければならない。これは、保守の伝統文化ではないから、陛下もご迷惑だろう。 だいたい、「角道の精華」の訓話は陛下が力士に下賜したものではない。相撲教習所に掲げられている「角道の精華」は、陛下の言葉ではない。「大井光陽 作」とちゃんと書かれている。
貴乃花の頭の中がこれでは、負傷休場中の愛弟子のモンゴル力士・貴ノ岩が、相撲道など理解できるわけがない。モンゴル力士だけではない。いまの相撲取り全員が理解不能だろう。相撲道が、なぜ一つの思想で染らなければならいのか? 日本文化とはそんなものではないだろう。 最後に記しておきたいのが、国技、伝統文化というのは、スポーツではなく、その国独特の秩序形成力学が働くからそう言うのだということだ。そうでないなら、相撲を全世界共通のスポーツにする以外、道はない。そうすると、パーフェクトな格闘技として、力士に身体が壊れるまで本気で闘わせる、じつに残酷極まりない競技になるが、それでいいのだろうか?
|
What's New(最近の更新)
- メルマガ[713] 大谷翔平スキャンダルでつくづく思う。日本はなぜスポーツベッティングを解禁しないのか?
- [427]桜開花に異常あり。温暖化は猛スピードで進んでいる。
- メルマガ[710] 日本の低賃金は低学歴が原因。教育を変えなければ日本は復活しない!
- 2024年4月2日●幻冬舎ゴールドオンラインで連載6回終了
- メルマガ[714] トランプもバイデンも結局同じか。 アメリカ覇権が後退し続ける混沌世界の到来
- 2024年3月30日●「Yahoo!ニュース」エキスパート欄に3本寄稿
- [外食Diary]エッセルンガ(ESSELUNGA)
- [外食Diary]エクシブ湯河原離宮ボールルーム
- [外食Diary]華暦(エクシブ湯河原離宮)
- [外食Diary]マレッタ(エクシブ湯河原離宮
- メルマガ[712] 郵便遅配、鉄道・バス路線縮小、スーパー閉店-----衰退・縮小ニッポンはどうなっていくのか?
- メルマガ[711] 米大統領選の最大の争点となった「移民問題」トランプ断然有利とされるが大波乱も!
- 24/03/11●書店はどんどん消滅!この10年間で764社が倒産や廃業
- 24/03/08●「Dr.スランプ」の漫画家・鳥山明さんの死は世界でも大報道。国内の低評価は異常。
- 24/03/07●経産省が書店支援の「書店振興プロジェクトチーム」設置という愚策を発表
- [426]大谷翔平の過剰報道はいつまで続くのか?
- [425]大河ドラマ『光る君へ』で、平安時代を見直すと驚くほど新鮮。猛暑と和歌の世界。
- メルマガ[709] 政治腐敗は極致、経済は衰退一方。なのに国家ブランドは世界一という不思議
- 24/02/26●2023年コミック市場は6937億円 前年比2.5%過去最大
- メルマガ[708] トランプNATO発言の背景:アメリカはローマ帝国と同じ道をたどるのか?
- [424]不景気なのに株価暴騰。政治も経済もメタメタなのに、なぜか、安閑とした日々が流れていく
- 24/02/09●ドラマ『セクシー田中さん』問題で、小学館の編集者一同が声明を発表
- メルマガ[707] まだまだ上がる株価。景気がよくないのに株価だけが上がる理由とは?
- 24/02/01●2023年の出版物推定販売金額はかろうじて1兆円を上回る
- 24/01/30●トップカルチャーの連結決算は売上高189億5300万円で前年比9.3%減
- [外食Diary]シードレスバー
- メルマガ[705] 暖冬で雪不足も、このまま春に。そして、10万年に1度の猛暑の夏がやって来る!
- メルマガ[702] 日本では「知らんけど」アメリカでは「Meh」選挙の形骸化で崩壊する民主主義
- メルマガ[703] あるのか初の女性大統領誕生。ニッキー・ヘイリーはトランプに勝てるのか?
- 24/01/15●松本人志スクープで「週刊文春」約45万部が完売。松本のタレント生命終焉