[323]私たちはどこから来たのか?なぜ、国は古代史を封印するのか? 西都原と高千穂を訪ねて |
2019年 6月 24日(月曜日) 04:34 |
今月初め、ずっと宮崎にいた。 宮崎は家内の実家なので、これまで何十回も行っているが、県内で行っていないところが何カ所かある。そのうち、どうしても行きたかった西都原の古墳群と天孫降臨の地・高千穂に行った。 最近、やはり、年のせいだと思うが、いちばん気になるのが、私たち日本人のルーツだ。私たちはどこから来て、そしてどのようにこの国をつくり、そして、今後どこに行こうとしているのか? とくに、古代史には、いまもなおわからないことが多すぎて、興味をかきたてられる。
西都原の古墳群は、日本最大級の古墳群で、大小さまざま300余りの古墳が、広大な丘陵のなかに点在している。これらは、3世紀前半~7世紀前半にかけての築造とされているから、ここに、日本の古墳時代、それも強力な権力が存在していたことがわかる。 実際、古墳群を眺められる場所に立ってみると、その広さに驚く。古墳群全体は「西都原風土記の丘」として国の特別史跡公園に指定され、公園内には「西都原考古博物館」と「古代生活体験館」、それに付随して再現された古墳時代の住居がある。まず、博物館を訪ねたが、現代的な設備と展示の充実ぶりに驚いた。くまなく展示を見ていたら時間がいくらあっても足りないので、古代生活体験館で勾玉づくり体験をし、その後、敷地内を歩いた。南北に4.2キロもあるので、とても全部を歩いて見られない。それに、その日は太陽さんさんの真夏日で、歩いているだけで汗だくになった。 そこで、レンタサイクルで回ってみたが、それでも時間は足りなかった。
古墳群のなかで最大のものは、男狭穂塚(おさほづか)と女狭穂塚(めさほづか)。両方とも長さが150メートル以上もある。男狭穂塚は天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫ニニギノミコト、女狭穂塚はニニギノミコトが一目惚れして妻にしたコノハナサクヤヒメの墓とされる。 しかし、『古事記』『日本書紀』に描かれた2人の話と、実際の築造年代とはまったく合わない。『古事記』『日本書紀』の伝承記述の年代に従えば、それは2600年以上前のことだからだ。
いずれにしても、ニニギノミコトの孫がカムヤマトイワレビコノミコトノミコトで、日向灘に面した美々津の港から旅立って畿内に行き、ここにヤマト王権を建てて初代天皇になった。これが、いわゆる「神武東征」だが、それが実際にあったかどうか検証できない。だから、すべては神話で、実際に検証できるのは、ここ西都原と大和盆地、大阪の堺、北九州などを中心に、全国各地にいくつも存在する日本独特の前方後円墳である。しかし、これらは宮内庁管轄の「宮内庁陵墓参考地」(宮内庁が管轄する皇族の墓地とされるもの)で、なかを開けて発掘研究ができない。もちろん、「宮内庁治定陵墓」(宮内庁が歴代天皇など皇族の墓地としているもの)は、立ち入りさえ認められていない。
西都原古墳群(案内図、勾玉づくり、広大な古墳群丘陵 )
日本は、自分の国の歴史を政府自らが検証できないようにしているのである。いくら天皇が国の象徴で国民敬意の対象とはいえ、歴史的真実のほうが優先すると、私は思う。いまの天皇家も、おそらくそれを望むだろう。 たとえば、そうすれば仁徳天皇陵とされる堺市の大仙古墳が仁徳天皇陵の墓ではなかったとなるかもしれない。しかし、それでもいいではないかと、私は思う。
なぜなら、この規制があるために、学校で教える飛鳥時代になるまでの古代史は、まったくあいまいのままだからだ。これで、子供に日本はこんな国だと教えられるだろうか? 先日、国は大仙古墳を含めた「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」を世界文化遺産に登録するよう勧告した。そのため、この6月30日~7月10日にアゼルバイジャンで開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式に決まる見通しとなっている。 それなら、なおさら、発掘調査をすべきだろう。
というわけで、また別の日、高千穂に行き、ここで神話の世界の景勝地を見て回った。太陽神・アマテラスオオミノカミ(天照大神)が隠れた天岩戸がある天岩戸神社、神々が集まった天安河原、荒立神社、天真名井(あまのまない)などを見て、高千穂峡を歩いた。そして、夜は、高千穂神社で夜神楽を見た。 天孫降臨に関しては、ここと霧島連峰の高千穂の峰のどちらかという論争があるが、神話だけに論争はむなしい。 ただ印象としては、こんな山奥の渓谷の地になぜ、これほど沢山の史跡があるのか不思議だった。伝承と信仰に基づいて、後世の人々がこれらをつくったとしか思えない。とくに神楽は江戸時代は仏教の踊りだった。
高千穂(天岩戸神社、高千穂神社の夜神楽、高千穂峡)
日本の古代史で、いまも論争が続き、それ自体が不思議なのが、邪馬台国と卑弥呼である。『魏志倭人伝』にあるように、邪馬台国と卑弥呼はたしかに存在した。それも、2世紀後半から3世紀前半にかけて、「倭国大乱」の後である。 となると、この邪馬台国の系譜によって、天皇家とヤマト王権が成立したとする見方がある。卑弥呼(あるいは跡を継いだトヨ)は神功皇后とする説があり、なるほどと思わせる。ただ、年代が合わない。 大和盆地で巨大な前方後円墳が造られるのは、年代的には卑弥呼の死後のことである。それが全国に広まったというのは考古学的検証によってはっきりしてきた。つまり、ヤマト王権の全国統一と符合する。
問題は、『記紀』に邪馬台国のことが書かれていないことだ。わずかに、『日本書紀』に「魏志によると」として、倭の女王が使いを帯方郡に送り、魏への朝貢を申し出たとあるだけだ。 ここに古代史最大のミステリーがあるが、このミステリーをそのままにしておいていいのだろうか? 邪馬台国はヤマト王権とは別の王朝であったと思うが、これをはっきりさせるべきだろう。邪馬台国は北九州に存在した一つのクニで、北部九州を支配していた。ヤマト王権は神武東征にあるようにそのルーツは日向で、卑弥呼の死後、仲哀天皇、神功皇后の時代に、北部九州も従え、朝鮮にも出兵して支配下に置いた。これが、いちばん、なっとくがいく日本の成立である。
いずれにしても、私たちは何者なのか?どのようにしてこの国は誕生したのか? 私が生きている間に確定してほしいと願う。この願いは、多分、かなえらえないだろうが----。
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