G1予想[292]第37回 マイルCS(2020年11月22日) |
2020年 11月 19日(木曜日) 11:37 |
新女王グランアレグリアの単勝1点
マイルチャンピオンシップというと、必ず蘇ってくるのが、1989年のオグリキャップの激走、差し切り勝ちだ。この年のオグリキャップは、秋に復帰して2連勝したが、天皇賞・秋では不本意な競馬をしてタマモクロスの2着に敗れた。 そのせいなのか、天皇賞・秋のレース後に、オグリ陣営はマイルCSからジャパンCへ連闘するローテーションをと発表し、関係者の度肝を抜いた。正直、私も仰天した。馬主はどうかしていると思った。そんなにカネが欲しいのかとも思った。 すでにオグリは、オールカマー1着→毎日王冠1着→天皇賞・秋2着と3戦を消化していた。そのうえで、マイルCSからジャパンCを連闘するというのだ。馬の疲労を考えれば、ありえない選択だった。いまはもちろん、当時としても、こんなローテーションは考えられない。
こうして迎えた快晴の京都競馬場。オグリキャップの反応はまたも鈍く、中団を追走。これに対して、若き天才・武豊を鞍上にしたライバル、バンブーメモリーは絶好位でレースを進め、4コーナーで先にスパートした。もたついたオグリは、大きく引き離された。これでは無理と思えた。しかし、ゴール100メートル手前で、必死に追う南井克巳の鞭に応えたオグリは、ラチ沿いを猛然と追い上げた。 ゴールはほとんど同時に見えた。届いたのか?届かなかったのか?
じつは私は、オグリ、バンブーの枠連1点を10万円買っていたので、どっちでもよかった。ただ、オグリには勝ってほしかった。この年、私は1年間でいちばん馬券を買った。G1となると、毎回、10万円は買っていた。オグリはそんな私にとって、鉄板馬だった。いま思うと、ただの庶民サラリーマンなのに、バカとしか言いようがない。 しばらくして、写真判定の結果が出た。オグリキャップがハナ差、差し切っていた。 南井は、勝利騎手インタビューで号泣した。 「なんて偉い馬なんだろうと思うと、どうしようもなく泣けてきた」と、のちに、このレースを回想している。
オグリキャップ、バンブーメモリーの枠連1-3は鉄板の1番人気で配当は180円。私は8万円の儲けを手にしたが、1週後のジャパンCで、ふたたびオグリキャップに投じて、これを溶かすことになる。
ジャパンCの出走メンバーは、本当に豪華だった。欧州からは凱旋門賞馬のキャロルハウス、オイロパ賞の勝ち馬イブンベイ、アメリカからは当時の2400メートルの世界レコードホールダーのホークスター、前年の勝ち馬ペイザバトラー、日本からはオグリのほかに、天皇賞を制した武豊騎乗のスーパークリーク、イナリワンなどが出ていた。 私は迷わず、オグリが入った2枠からこれらの馬が入った枠に流した。当時、馬連はなかった。1番人気はスーパークリーク、オグリは2番人気、3番人気はホークスターだった。
逃げたのはイブンベイ。ペースは速かった。これに、ホークスターが競りかけたので、さらにペースは速まった。そのため、馬群はばらけた。オグリキャップは、絶好の位置で追走した。 直線に入り残りゴール手前400mの地点で、道中3番手追走していたニュージーランド馬ホーリックスが先頭に立った。まったくの人気薄だった。これをオグリキャップが4番手から猛追した。南井はまたしても必死に追った。しかし、ホーリックスの脚色は衰えない。オグリがアタマ差迫ったところがゴールだった。
走破タイムは、なんと2分22秒2。表示を見たとき、私はあっと声を上げた。そして、首をうなだれた。 オグリから流したのに、ホーリックスは抜けなのだ。同じ2枠だったからである。2-2は6760円もついた。以来、私はゾロ目恐怖症になり、常にゾロ目を押さえるようになった。
誰もが、これでオグリは疲れ切ったと思った。ところが、陣営は有馬記念にも出ると表明。呆れるほかなかった。それでも、1番人気に押されたオグリは懸命に暮れの中山を走った。しかし、イナリワンの5着に敗れた。 このとき、私はオグリは終わったと確信したが、翌年復帰すると、安田記念をレコード勝ちし、宝塚記念でも2着した。そして、迎えた秋、やはり、オグリはボロボロになり、天皇賞・秋を6着、ジャパンCは11着と惨敗した。ところが、有馬記念で武豊を鞍上に向かえて優勝。まさに「奇跡の復活」「感動のラストラン」となった。
それにしても、1989年は、歴史が大きく動く年だった。 正月に昭和天皇が崩御して、年号が変わった。オグリが勝ったマイルCSの直前には、ベルリンの壁が崩壊して冷戦が終結した。年の瀬の大納会で、日経平均は史上最高値の3万8957円を記録し、翌年から暴落。バブルは崩壊した。そして、1990年になり、冷戦終結後の世界はグローバリゼイション一色となり、日本経済はこの年を持ってピークアウト、「失われた30年」に突入した。
もうこんな年は2度とないと思った。 しかし、その後も本当にいろいろなことがあり、今年は、コロナのパンデミックである。 そこで思うのは、激動の年の競馬は、それにふさわしいことが起こるということ。実際、今年は3歳では、牡牝とも無敗の3冠馬が誕生し、古馬では女王アーモンドアイが8冠馬となった。そして、この3頭は、来週のジャパンCで激突する。
とうわけで、ここでグランアレグリアを買うほかなくなった。これ以外の選択肢はない。 なんだ、鉄板の1番人気ではないかと言われそうだが、今年の流れは牝馬であること。そして、最強馬が順当に勝っていることを思うと、ここで、流れに逆らうことはしたくない。 しかも、グランアレグリアは安田記念でアーモンドアイに完勝し、スプリンターズSでも2馬身差で快勝している。 3歳時、NHKマイルで直線よれて5着に降着した以外は、乗り損なわなければ、力の違いを見せつけている。
どうみても最強牝馬で、桜花賞勝ちのタイムはアーモンドアイを上回っている。もはや言うまでもなく「新女王」だろう。また、ルメールかとなるが、こうなったら、ルメールはとことんG1を勝ってもらっていい。 そこで、かつてマイル Sで1点10万円を投じたように、今年はグランアレグリアの単勝1点に全額をつぎ込んでみたい。 こんなことをするのは、ほんとうに何十年ぶりだ。そのため、グランアレグリアが飛ぶような気がしてしまう。しかし、馬券は勝つために買うのではないから、飛んで玉砕しても納得だ。
結論:グランアレグリアの単勝1点勝負。
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