G1予想[044]第27回マイルチャンピオンシップ(11月21日) |
2010年 11月 19日(金曜日) 15:11 |
スノーフェアリー、トリプティク、そしてAPECの惨状から予想する
先週のエリザベス女王杯のスノーフェアリーの走りには、正直、まいった。日本の軽い芝を難なくこなし、4馬身はぶっちぎった。エド・ダンロップ調教師が 「日本の芝に合っている」と言っていたのは、本当だった。欧州の調教師の言葉を、これまで私は信じないことにしてきたが、完全な思い違いだった。 スノーフェアリーの走りを見て思い出すのは、1987年のジャパンカップで断然の1番人気になったトリプティク(Triptych)である。このとき、ト リプティクの調教師パトリック・ビアンコーヌ(Patrick Louis Biancone)も同じようなことを言った。「トリプティクの走りは日本の芝に合っている。とくに東京競馬場の芝は彼女に合うだろう」 しかし、トリプティクは負けた。1週早いが、今回はジャパンカップの忘れられない思い出を書いてから、マイルチャンピオンシップの予想に入る。
英オークスでのスノーフェアリー(racingpostpix.com)
トリプティクの走りは「異次元の走り」
トリプティクは、3歳時、アイリッシュ1000ギニートライアル、アイリッシュ2000ギニーを連勝、オークスも2着と好走したが、完全に本格化したのは 5歳時。この年の前半のシーズンで、ガネー賞、コロネーションカップ、インターナショナルステークス、フェニックスチャンピオンステークスの4つのG1を 制し、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスと凱旋門賞も3着と好走。凱旋門賞の後に出走したチャンピオンステークスを 勝ち、ジャパンカップのために来日した。 欧州での戦績からトリプティクは「鉄の女」と言われた。ジャパンカップはまだ始まって数年しかたっておらず、これほどの外国馬が参戦するのは珍しかった。 トリプティクはジャパンカップ前の試走として富士ステークスに出ると、最後方から、直線一気に全馬を交わして、なんと5馬身も突き抜けた。この走りは、当 時の日本競馬のレベルを超えていた。同レースでシンボリカールに乗っていた岡部幸雄は、「並ぶ間もなく交わしていった。異次元の走りです」と言った。 富士S:ゴール前の1ファロンで一気に抜け出したトリプティク
レセプションでビアンコーヌ調教師を直撃
当時の私は、競馬に熱中しており、競馬には勝負馬券があり、間違いなく勝てることがあると信じていた。その考えからすると、トリプティクは「鉄板」。ジャ パンカップを勝てると確信した。この年のジャパンカップは、日本馬に強い馬はおらず、メンバーを見渡すと、トリプティクの次に来そうなのはムーンマッドネ ス、ルグロリューぐらいだった。いずれも欧州のG1馬だから、相手はこの2頭。ジャパンカップはこの馬券で勝負しようと思った。 当時、ジャパンカップの週の水曜日には、新宿の京王プラザで、海外招待馬の関係者を招いてのレセプションパーティがあった。このレセプションに出かけた私 は、トリプティクの調教師ビアンコーヌを見つけると、さっそく話を聞いた。「調子はどうか?」「絶好調だ。日本は彼女に合っている」「自信はあるか?」 「もちろんだ。それで彼女を連れてきた。ジャパンカップで彼女は最強のレースを見せてくれるだろう」
馬券は枠連4-7で鉄板、4倍もつく!
レセプションから2日後の金曜夜、編集部で私は、週刊誌で競馬記事を書いていた大泉清記者と、ジャパンカップの話で盛り上がった。枠順が発表されて、トリ プティクは4枠に、ムーンマッドネス、ルグロリューは共に7枠に入った。「4-7の1点で決まりだ」。そう私は言いい、当日都合が悪くなって競馬場に行け なくなったので、大泉記者に馬券を託すことにした。 「いくら買うんだい?」「鉄板だから10万、いや30万にしよう」「そんなに買うのか?」「ええ、勝負ですよ。こんなレースは滅多にないでしょう」「4-7は4倍だから120万になるな」「当たったらおごりますよ」 このやり取りを聞いていた、事件もの記事担当の沼崎京介記者(故人)が言った。「お前らはバカだ。競馬にそんなカネをつぎ込んでどうする。大泉が行くならオレも買うが、2000円にしておく。1-4-7が好きだから、お前らが4-7を買うなら、1-7に入れてくれ」
ゴール前のアクシデントで4着負け
レースは、日本のテジェンドテイオーが逃げ、それを早めにムーンマッドネスが交わして直線で先頭に立った。それをルグロリューが交わして、トリプティクは後方から猛烈な足で追い込んできた。 しかし、届かなかった。代わりに内を突いて伸びてきたのは、まったく人気がなかったアメリカ馬サウスジェットだった。勝ったのはルグロリュー。馬券は1-7、6170円ついた。 私の皮算用の120万円は吹っ飛び、沼崎記者は12万円儲けた。 トリプティクが伸びなかったのは、前をふさがれるアクシデントのせいだった。これがなければ、富士ステークスと同じく突き抜けていただろう。しかし、競馬は結果がすべて。結局、トリプティクは4着に敗れた。
それからは暑くなって馬券を買わなくなった
このジャパンカップ以後、私の馬券に対する考え方はかなり変わった。 それでも若かったから、勝負レースにはつぎ込むような買い方をしていたが、いつしかそれもやめた。オグリキャップが勝った1990年の有馬記念ごろから、 無茶なことはしなくなり、90年代半ばからは、それまで毎週のように買っていた馬券も買わなくなった。いまでは、重賞とG1レースだけ、それも小額しか買 わない。1000〜3000円がいいところだ。 そんな私だが、ジャパンカップだけは、いまでも胸が熱くなる。 ビアンコーヌ調教師は、その後、フランスから香港に渡って活躍していたが、現在はアメリカベースで調教師を続けているようだ。しかし、トリプティクのような馬にはめぐり会っていない。
エド・ダンロップ調教師は3人娘の父
話を戻して、スノーフェアリーのエド・ダンロップ調教師(Edward A. L. Dunlop)は、1968年生まれの42歳で、イートン生まれ。アイルランド、ケンタッキー、オーストラリアで研修を重ねた後英国に帰国して1994年 に、ゲインズボロー厩舎を起こした。これまでの代表馬はOuija Board。娘3人のよきパパだ。 日本の競馬メディアには、こうしたことに触れないので、いま、ウエブで調べてみた。このキャリアなら、彼の言葉を信じればよかったと思う。 ただ、スノーフェアリーはジャパンカップの出走を回避した。ダンロップ師は「思ったほど馬体重が戻ってこない。ジャパンカップまで中1週というのはやはり 短く、3歳牝馬では酷であろうという判断から、残念ながら、回避することにした」と、娘3人の父らしいコメントを出した。
外国人のなかにはいるとなにもできない日本人
さて、ここからは、マイルチャンピオンシップの予想だ。 今日のニュースは、菅内閣の閣僚たちの相次ぐ失言問題がトップ。とくに柳田法相の発言は、責任ある地位にいる人間として言ってはいけないことだ。この内閣、というより、いまの日本のトップの人々は、自分がどこにいて、なにをすべきなのか、まったくわかっていないようだ。 私は横浜に住んでいるので、厳重警備のAPECが終わってほっとしたが、日本のことを思うと、APECでの日本の政治家たちの様子は見るに耐えなかった。 とくに、各国首相に比べて、菅首相のオロオロぶりには情けないというか、本当にあきれた。日本の外交は支離滅裂で、現政権が続くかぎり、なんの希望も持て ないことがよくわかった。 というわけで、マイルチャンピオンシップ の予想は単純だ。競馬も外交も同じ。APECで見たように、いまの日本人は外国人のなかに入ると、なにもできない。ただ、ニヤニヤしているだけである。と すれば、競馬でも日本馬が外国馬に勝てないと見たほうがいい。同じく、日本人騎手は外国人騎手に勝てないとみる。これが、いまの日本の情けないトレンド だ。
ただ1頭の外国馬サプレザと外国人騎手で決まり
当然、結論は、ただ1頭の外国馬、昨年3着のサプレザがアタマ。といっても、同馬は社台ファームが購入しているので、完全な外国馬とは言えないが、勝てば1億円の褒賞金も視野に入る。 続いて、サプレザ以外に外国馬はいないので、あとは外国人騎手。ムーアのキンサシャノキセキ、スミヨンのダノンヨーヨー、デムーロのトゥザグローリー、この3頭だ。では、この4頭をどう組み合わせるかだが、面倒なので、この4頭の馬連の組み合わせを全部買うことにした。 本当にこんなことでいいのだろうか? もし、こんなんで当たるのなら、競馬のことより、日本が本気で心配になる。そして、毎日真面目に取材して記事を書いている競馬記者、真剣に予想して馬券を買っている人々が、かわいそうだ。 かつて、真剣に競馬を予想し、ビアンコーヌ調教師を直撃したころは、こんなことは考えもしなかった。
■第27回マイルチャンピオンシップ(京都競馬場 GI、芝1600m) 1-1 ファイングレイン(牡7、浜中俊、栗・長浜博之) |
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