G1予想[071] 第56回有馬記念(2011年12月25日) |
2011年 12月 21日(水曜日) 12:44 |
馬連と枠連で「1-6」を買って迎える2012年
有馬記念は、いろいろな意味で「総決算レース」だ。暮れも押し迫った最後の日曜日、ファン投票で出走が決まった馬たちが、芝枯れの中山競馬場のターフを駆け抜ける。出走馬はみな、タイトルホルダーであり、その年活躍した馬たちだ。世代も性別も超え、最後のタイトルに向かって、4コーナーを回る。 競馬ファンも、馬券の収支ばかりか、1年間の人生の総決算を、このレースに賭ける。今年はどんな年だったのか? そして来年はどんな年にしたいのか? こんなレースがあるのは、日本だけだ。
今年の有馬記念はクリスマス当日になった。 世間もメディアも「ブエナビスタとオルフェーヴルの対決」に湧いている。ブエナはファン投票1位で、ここが引退レース。それにだけに、昨年逃した悲願のグランプリVが成るかどうかに注目が集まっている。しかも、今年はなでしこジャパンの年だった。 一方の三冠馬オルフェーヴルは、ジャパンカップを見送って万全の態勢での出走。最近の有馬では3歳世代が好成績を残しているだけに、4冠達成も夢ではない。 しかし、この2頭が本当に来るかどうかは、誰にもわからない。今回は脇役になったが、出走馬はいずれも、過去に主役になった馬たちだ。ドバイWC勝ち馬ヴィクトワールピサ、天皇賞春の勝ち馬ヒルノダムール、宝塚記念の勝ち馬アーネストリー、天皇賞秋の勝ち馬トーセンジョーダン、どの馬にもドラマがあり、関係者、ファンの思いが託されている。
私にとっての競馬は、最初は大人の世界への入り口だった。初めて競馬を知った10代後半、その年の有馬記を勝ったのはスピードシンボリだった。20代、社会人になってからの競馬は、サラリーマン生活の潤滑油だった。テンポイントとトウショウボーイでなにもない有馬が1年の締めくくりになった。結婚もし、子供生まれた30代、競馬は絶対本命に賭けるゲームになった。三冠馬シンボリルドルフは、難なく有馬を制した。人生がわかってきたように思えた40代半ば、なぜか競馬は哀しいゲームになった。阪神大震災があった年の暮れ、マヤノトップガンに絶叫した。 そしていま、競馬は行くあてもない旅だ。年々歳々、競馬も人生も、どんどんわからなくなる。だから、成績、タイム、格、血統、調教、展開、新聞の予想……あらゆるファクターを無視することにした。
今年の有馬は、ブエナビスタでもオルフェーヴルでもいい。ヴィクトワールピサでもかまわない。それぞれのストリーを完結させてほしい。ブエナは史上最強の牝馬として、なでしこジャパンが大活躍したこの年に、最後の栄光をつかんで引退してほしい。オルフェーヴルは三冠馬として、大震災からの復活の意味で、世代交代、主役交代で未来を切り拓いてほしい。ヴィクトワールピサは、大震災直後に日本馬として初めてドバイWCを勝ち、悲しい中での歓喜という、不思議な感動を与えてくれた。だから、もう一度有馬を勝って、今年を締めくくってほしい。 今年の私は、文春から2冊本を出させてもらい、いまは小学館から来春出す本を書いている。こうして本を出せることは幸せだが、妻がガンになり、一時は未来が見えなくなった。なんとか、妻には早くたちなおってもらい、残された人生を娘と妻の3人で、精いっぱい生きていきたいと思っている。妻は、年内の再入院の予定が年明けにずれ、1月6日の再手術が決まった。 だから、有馬は馬連と枠連で1-6を買う。これだけを買う。これは、予想ではない。
■枠順確定(12月23日)/有馬記念 2500m芝中山競馬場 1-1 ブエナビスタ(牝5、岩田康誠・松田博資)
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