2012年01月■自著『資産フライト』(文春新書)記事の記録 |
■2011年12月22日 『月刊BOSS』(2012年2月号 )著者インタビュー
■2012年01月18日『日本経済新聞』夕刊「話題新書インフォメーション」著者インタビュー ↓ 以下、 全文を掲載 今なら間に合う! 超簡単な方法を伝授自分の資産は自分で守るしかない――この本には「資産フライト」の実例がたくさん出てきますが、実際にそうした人々は増えているのですか? 増えているというか、激増中です。かつては富裕層だけでしたが、今はOLから一般サラリーマンの方もしています。第1章で描いたように、たとえば香港のようなオフショアで海外口座を開設する日本人が増えています。HSBC(香港上海銀行)だけでも、日本人の口座は数万件に達しています。 ――円高が続いているのに、本当に海外に資産を移すメリットはあるのでしょうか? 為替変動と資産フライトとは直接には関係ありません。現在の円高のメリットを享受するなら、海外に資産を移す意味はありません。しかし、それは短期的な投資の話。資産を守るという発想に立てば、それをなにで持つかだけが重要です。円かドルかという通貨、株や債券、ファンドなどの金融商品、不動産、金やダイヤモンドなどの実物資産と、選択肢は山とあります。これらをどう組み合わせるかは、個人の人生観、ライフスタイルの問題です。 ただ、すべて日本で円建てで持つというのは、「卵を一つの籠に盛るな」という原則に反しますから、もっとも危険な選択です。 ――山田さんご自身も「資産フライト」をしているのですか? 答えにくい質問ですね。でも、こういう本を書いた以上、正直に答えないと許されないと思います。幸い、私は娘がずっと海外にいたこともあり、海外に家族名義の口座も持っていますし、わずかですが投資もしています。それは、日本のカントリーリスクを回避して、万が一のときに家族を守るためです。少なくとも、半年から1年は世界のどこでも暮らせるようにするためです。ですから、一般のイメージでいう海外投資という話ではありません。資産フライトとは本来、こういうことだと思います。 私は臆病ですから、国家予算の半分が国債発行で賄われ、GDP比200%以上も借金を抱えている国で暮らしているのが、恐くてたまりません。 ――そもそも執筆の動機は何だったのでしょう。 一つは、私がここ数年、富裕層の動向をずっと追いかけてきたこと。もう一つは、現在の日本の政治と社会の在り方が、日本人の財産を守れない方向に進んでいることです。とくに現政権になってからは、東日本大震災後の原発事故の対応を見ても明らかなように、財産ばかりか生命すら守ってくれない。これでは、生命の次に大事な資産をこの国に置いておく意味がありません。富裕層でなくともそう考えると思います。 ただ、一般の人間は、この国で生活の糧を得て、家族を持っている以上、この国と切り離して人生を送れない。もし、送れるなら、現在の状況なら、ほとんどの人間が資産フライトをするはずです。すでに、企業はこの国に見切りをつけ、空洞化が加速しています。次は個人の番でしょう。 そうならないためにはどうすべきか? このことを資産フライトという現実をとおして訴えたかった。ギリシャ、イタリアの例を見ても、日本には残された時間がない。このままでは、日本人がこれまで汗と努力で築いてきたものがすべて失われてしまいます。 ●プロフィール/山田順(やまだ じゅん) ジャーナリスト、出版プロデューサー。1952 年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、光文社に入社し、女性自身編集部などを経て02年光文社ペーパーバックスを創刊し編集長。10年に独立し、現在、紙書籍と並行して電子書籍をプロデュース中。著書に『皇太子のご結婚』『TBSザ・検証』など、翻訳書に『ロシアン・ゴットファーザー』、近著に『出版大崩壊 電子書籍の罠』(文春新書)がある。
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