[136] 愛国無罪? まさか、中国人には愛国心などない。ただ、彼らはアメリカ人の言うことだけは聞く。 印刷
2012年 9月 19日(水曜日) 20:04

 

   今回は、尖閣問題と日中関係について書きます。

 なお、この原稿はメルマガの[No.003] と同じ内容です。

 

青島のジャスコの映像を見て正直怖くなった

 

  いま日本中が中国に対して憤っていると思うが、私は、憤りより、怖さを感じる。あのデモの向こう側には、何百万、何千万人の怒り、怨念が渦巻いているのを感じるからだ。青島のジャスコが無残に破壊された映像を見てぞっとした。去年の7月、私はあそこで家内と買い物をしていた。その店内が完全に破壊されている。正直、驚く。そして怖くなった。

  青島には去年初めて行ったが、中国のどこに行っても感じることを、同じように感じた。それは、ひと言で言うと「なにか変。これは本物なのか」ということだ。

  青島空港から市内に向かう幹線道路の両側に、高層マンション群がこれでもかこれでもかと建設されていた。市内も建設ラッシュで、マンションやオフィスビルがどんどん建てられていた。こんなに建てて大丈夫なのか? いくら人口600万人の大都会といっても、そんなに入居者がいるのか?

  地下鉄の工事も、市内いたるところでやっていた。2014年開通とかで、駅ができる周辺は開発工事が進んでいた。青島は北京オリンピックのヨットレースの開場になったので、それに合わせてベイエリアの整備がなされ、素晴らしいハーバーができていた。

  ところが、ベイエリアにあるモールやレストランは一部の人気店を除いて、ガラガラだった。

 

中国の街を歩くと感じる嫌な視線 

 

  繁栄は表面だけ。その裏側は空っぽ。中国のどこに行ってもそう感じることが多い。たしかに豊かになった人はたくさんいる。しかし、その一方で取り残されてしまった人もたくさんいる。

  その取り残されてしまった人々の視線にぞっとすることがある。たとえば、工事現場のそばを歩くと、現場の作業員がこちらをじっと見ている。上海でも北京でも、南京でも、そういうことはよくあった。ときどき、家族で歩きながら、背中に嫌な視線を感じるときがある。そういうことに家内と娘は敏感で、「早く行きましょう」と、足早になる。

 

ジュウリンホウの不満がたまっている

 

  今回の反日デモが過激だったのは、北京、青島、深圳だ。いずれも、失業者が多い。北京では、地方から上京して大学を出たが職にありつけなかった若者たち。いわゆる「ジュウリンホウ」(90後:90年代生まれ)の不満がたまっている。深圳周辺では、この不況で中小企業は軒並みフル稼働できなくなくなっているから、職がない農民工らの不満がたまっている。

  じつは「反日」など、彼らにとってどうでもいいことだ。きっかけはなんでもよかった。ともかく、彼らはたまった不満のはけ口を求めていた。

  そこに、尖閣国有化という日本政府の「場当たり」政策が、火に油を注いだかたちになった。北京政府はこれに乗じてデモを仕掛けたが、やるだけやらせると抑制に転じた。北京市は今日、「反日デモ中止令」を出した。しかし、北京政府は政治的な対立ではけっして降りないだろう。さらに攻勢を仕掛けてくるはずだ。

 

アメリカの口出しをけん制する北京

 

  それにしても、日本の大手メディアはいい加減だ。

  いまだに日中友好的な見地からお気楽な論評をしている。「冷静さを保ち外交的な話し合いを優先してほしい」などとは、誰でも言えるだろう。テレビのコメンテーターも表情は深刻だが、どこかお気楽に見える。

  中国政府は、昨日のパネッタ米国防長官との会談で、梁光烈国防相が発言した内容をみても、本当に強硬だ。

 

  北京はアメリカに向かっても「釣魚島をめぐる紛争激化を誘発した責任は完全に(国有化を断行した)日本にある」と言っている。しかも、「米国が釣魚島を日米安全保障条約の適用対象に含めることについては、断固反対する」として、アメリカに対し「いずれか一方の肩を持たないという約束を厳守することを望む」と求めている。要するに「口出ししてほしくない」と言っているのだ。

 

意図的に「暴動」を報道しない中国メディア

 

  『人民日報」の海外版(英語版)を読むと、驚くことが書いてある。

  「いくつかの中国の都市で先週末、わが国が主権を有する釣魚島を日本が侵害行為をしたことに対し、人民が街頭で抗議活動を行った。その際に、散発的な暴力沙汰が起きた。しかし、このような暴力行為は、ごくわずかな人の手で行われた」

  「違法で非合法的な行為に出た人間は、ほんのわずかだ。大半の抗議参加者は、日本の国有化に対して反対を表明していただけであり、それは平和的かつ合理的なやり方だった」

  これらは明らかなウソだ。あきれるしかない。こうした報道に合せるように、中国国内のTVニュースは、暴動化した映像を流していない。

 

『人民日報』は日本と戦争せよと言っている

 

  『人民日報』海外版の論調は、日本人が読めば頭に血が上ることばかりだ。

 「日本が主権および領土挑発を継続すれば、中国は応戦するしかない」

「島を盗んだのは侵略行為と変わらず、経済制裁などの手段を使うのは国際法にも背かない」

  などと、平気で書いている。

    政府メディアだけに仕方ないが、これは戦争を仕掛けるぞと言っているのと同じだ。中国が日本に経済制裁ができるかどうかは知らないが、経済制裁は戦争の第一段階である。

 

尖閣問題は日中問題ではなく日米問題

 

  ただ、中国がいくら強硬姿勢を取ろうと、アメリカが「ノー」とさえ言えば引かざるを得ない。それは梁光烈国防相が「米国が釣魚島を日米安全保障条約の適用対象に含めることについては、断固反対する」と、パネッタ米国防長官の前で、わざわざ強調したことでわかる。

  つまり、尖閣問題は日中問題ではなく、日米問題である。日本としては、アメリカに「尖閣は守る」と言わせ続けなければならない。本当なら、公式発言で、中国に苦言を呈してもらうのが一番だ。中国と対話するのが外交ではない。ワシントンでのロビーイングが最優先だ。

 

米軍も原発もなくせば日本は裸同然

 

  しかし、オスプレイ問題にしても、原発ゼロ問題にしても、いまの日本の世論は「自分たちだけよければいい」と、完全に幼児化している。沖縄は沖縄からは一切の不安を取り除いてほしいと言い、原発周囲住民も国民の多くも原発は怖いからいやだと言っている。

  しかし、米軍も原発もなくすということは、日本が裸になるのも同然だ。オスプレイ問題などなくとも、戦略的に米軍は沖縄から引く可能性がある。そのうえ、原発をなくして核防衛の潜在能力を放棄したら、日本はどうなるだろうか?

 

どこに行った? 尖閣に向かう漁船1000隻

 

  それにしても、日本のメディアがお気楽なのは、今回、中国メディアの尻馬にのって「漁船1000隻が釣魚島に向かっている」というような報道をすることだ。正直、私も最初は本当なのかと驚いたが、これは中国メディアの誇張というか、つくりだ。

  漁船が出るという浙江省象山県石浦鎮などは、尖閣から400キロも離れている。漁民には生活がある。魚を獲るために、わざわざ尖閣まで行くはずがない。これまで3カ月間禁漁期間だったのが解けた。それで、続々と出港しているわけだが、行き先は尖閣とは限らないのだ。

  それを尖閣だと、中国メディアは仕立て上げた。結局、魚を追って尖閣周辺にまで来たのは数隻だ。これはいつものことではないか。それなのに、中国メディアのつくりに日本のメディアも乗っかった。「冷静に」と言いなが、自分たちのほうが冷静ではない。

 

南京では日本語を止め英語でとおした

 

  今回の反日デモで、中国在住の日本人は外出を控え、外出時は日本語を話さないようにしたという。私もかつて南京にいる娘に会いに行き、街に出たときは日本語を使わなかった。2005年の反日デモの直後だったから、とくにタクシーに乗ったり、カフェに入ったりしたときなどは、ぜんぶ英語を使った。

  南京は大虐殺の影響で反日感情がとくに強い。日頃気さくな庶民も、日本人となるとちょっと引く。もちろん、教養のある人間はそういう感情は表に出さない。

  当時、娘はジョンズホプキンズ南京センター(中国名:中美中心、ジョンズホプキンズ大学SAIS大学院が南京大学と提携して開設した中国研究所)に留学していた。ここは、南京大学の卒業生が半分、アメリカからの留学生が半分で、2人1組になって寮生活を送る。

  娘のルームメイトは南京大学の職員の娘で、日本に留学経験があり日本語も話せた。それで、ただ一人の日本人の私の娘のルームメイトになったが、二人は一切日本語を使わなかった。いつも英語か中国語で話していた。

 

アメリカ人に弱いが日本人には強い

 

  中国人はアメリカ人に常にコンプレックスを持っている。これは日本人も同じだ。東アジア、いやアジアの黄色人種すべてが、西洋人(白人)に対してはコンプレックスを持っている。そのせいなのか、東アジア人同士になると、なぜかお互いに敵対してしまう。中国人も韓国人も日本人も、人種的、民族的、文化的にはルーツは同じなのに仲良くなれない。

  たぶん、同じ西洋という主人に仕えているというストレスが、主人がいないところでは開放されてしまうのだろう。それが、ライバル意識となってぶつかり合う。どちらが近代的、進歩的などと競っても無意味なのに、日本人は中国人を常に意識し、見下したい欲望にかられる。

  中国人も、日本人には負けたくない。なんとか見下したいと思っている。とくに、中国人には戦争で日本に占領された恨みがいまも残っている。しかも、彼らにはかつて世界の中心だったという中華思想(China-centrism)があるから、ややこしい。

 

日本人より北京政府を恨んでいる

 

  中国人でも、教養があり、歴史をしっかり学んだ大人なら、このことが理解できる。だから表向き日本人を嫌ったりしない。南京で戦争中日本人にひどい目にあったという人間も、たとえば私が「私の父親は満州で戦い、敗戦後ロシアに連れて行かれそうになったとき、中国人に助けられた」という話をすると、もうそれからは仲良く酒を飲める。

  かつて毛沢東の大躍進政策、文化大革命で過酷な運命に晒された世代には、反日より、北京政府に対しての恨みや猜疑心のほうが強いのだ。

  共産党の中枢にいて権力の旨味を知っている人間は別にして、北京を好きな人間は少ない。

  この点、中国人はアメリカ人とまったく違う。アメリカ人はワシントン批判をしても、じつはワシントンが好きである。

 

中国の「90後愛国」と「ネトウヨ」の背景は同じ

 

  いまの世代、とくにバーリンホウ(80後:80年代生まれ)、ジュウリンホウたちは、間違った反日教育を受け過ぎていて、教養がないと北京政府の呪縛から逃れられない。しかも、反日は受験勉強の一つだ。「柳条湖事件はいつ起こった?」に「1931年9月18日」と答え、「日本が不法に領有権を主張している東シナ海の島は?」に「釣魚島」と答えなければならない。

  しかし、それに正解して大学に行き、やっと卒業しても仕事に就けない。日本と同じだ。その憂さ晴らしを、『新浪微博』で晴らしている。中国の「90後愛国」若者と日本の「ネトウヨ」若者の背景は同じだ。

  南京大学は中国の大学ランキングで5位の上位校だが、それでも就職は年々厳しくなっている。娘のルームメイトは「中美中心」を卒業後、アメリカ留学し、いまは南京に戻って英語教師をしている。娘は帰国し、日本で就職した。

 

中国語を話す白人にびっくりした乗客たち

 

  娘は留学中、アメリカ人の親友と中国全土を旅行した。あるとき、親友と2人で瀋陽に向かう急行列車に乗っていると、何人かの中国人が「その荷物をどかせ」と言ってきた。そのとき、娘と親友は、自分たちの座席以外にバックパックの荷物を置くためだけに切符を買い、その席に荷物を置いていた。そうして、2人は英語で話していたので、立っていた中国人たちは最初はなにも言わなかったらしい。前記したように、彼らは白人には弱いのだ。

  しかし、とうとう切れてしまったようで、荷物を指差して、そう言ったのだという。

 「そのとき、エリザベス(娘の親友)は中国語で言い返した。この荷物はピヤオ(切符)を持っていますよ。あなたたちは切符を持っているんですか?ってね。それで、中国人はびっくりした。エリザベスのような白人の女の子がペラペラの中国語をしゃべるなんてありえないと思っているからね」

  それを聞いて、周りの乗客たちもびっくりしたという。ただ、その後、「あなたたちは中国語を話せるのか」ということで、瀋陽に着くまでずっと話かけられたのだという。

 

北京は本当にアメリカにモノを言えるのか?

 

 娘は中国では日系アメリカ人でとおして、学校の仲間、教師以外とは中国語を使わなかった。アメリカ人の学生たちも中国語は使わず、英語でとおしていた。そうすると、いちばん待遇がいいからだ。これは処世術で、若者たちはこういうことには敏感だ。そうして、なにかあったとき、切り札として中国語を使う。

  これは、日本でも同じだろう。外国人が日本語を話すと、とくに欧米人の場合、日本人はすぐに気をゆるして歓迎する。中国人も同じだ。

  北京政府は、表向きはアメリカに対して、ずけずけモノを言っているように見える。この点だけは、アメリカにはなにも言えない日本政府より北京政府のほうがマシに見える。実際、うらやましがる日本の識者がいる。

 しかし、本当は日本人と同じだ。

 

キッシンジャー元国務長官を大歓迎

 

 2007年7月、南京大学ではジョンズホプキンズ大学提携20周年式典が開かれた。来賓にはアメリカからヘンリー・キッシンジャー元国務長官が招かれた。この式典は、南京市長から共産党幹部まで南京市の権力者がすべて出席し、彼のスピーチに盛大な拍手を送った。しかし、アメリカ人学生に聞くと「思い出話ばかりでぜんぜん面白くなかった」と言う。

 中国人はキッシンジャー氏を中国最大の恩人と考えている。だから、彼が市内を移動するときは厳重警備が敷かれた。中心街・新街口の道路の両側には公安がずらっと並び、道路は封鎖された。キッシンジャー氏の南京訪問は、翌日の新聞もテレビニュースもトップ扱いだった。

  ただ、厳戒態勢のなか、彼のクルマが行った先は宴会場。そこでは、南京料理がならび、名物の餃子が山盛りになっていた。しかし、アメリカ人学生はまたも言った。「じつは、キッシンジャーは中華料理が嫌いなんだよね」

  今回の反日デモでは、青島のジャスコが襲われた。青島にはカルフールもウォルマートもある。南京にも、北京にも、上海にもカルフールやウォルマートはある。そこで思うが、もし中国で「反米運動」「反仏運動」が起こっても、ウォルマートやカルフールは襲撃されないだろう。はたして、当局は反米デモ、反仏デモを許可するだろうか?

  その答えを、アメリカ人は知っている。

 

20年後中国は世界でもっとも貧しい国になる

 

  クリントン米国務長官がハーバード大学で、中国について語った演説文というのがある。アメリカにある反北京の法輪功系メディア「新唐人」が流しているもので、それを見ると、アメリカ人は中国人の本質を見抜いている。

http://www.ntdtv.jp/ntdtv_jp/society/2012-07-05/226758431876.html

  クリントン氏は「20年後中国は世界でもっとも貧しい国になる」と言っているのだ。その理由は、こうだ(以下、「新唐人」から引用する)


1. 移民申請の状況から見て、中国9割の官僚家族と8割の富豪がすでに移民申請を出した。 またはその意向がある。一国家の指導層と既得権益階級がなぜ自国に自信をなくすのか理解しがたい。

2. 中国人は社会の個体として、国家と社会に対して負うべき、責任と義務がわかっていない。 国際社会に対して負うべき責任はなおさら分かっていない。受けた教育或いはメディアの宣伝はほとんどが 憎しみと他人または他国を歪曲した内容で、人々の理性と公正な判断力を失わせる。

3. 中国は世界で数少ない信仰のない恐ろしい国で、全国民が崇拝するのは権力と金銭のみだ。 利己的で愛心のない、同情心を失った国家が国際社会の尊重と信頼を得られると思うか?

4. 中国政府の所謂政治は人民を騙し人間性に背く以外の何物でもない。
人民大衆は過去の権力の奴隷から今は金銭の奴隷に変わった。このような政権がいかに人民の尊重と信頼を得られるか。

5. 大多数の中国人は「面目が立ち」、「尊厳のある生活」とは何か全くわかっていない。 民衆にとっては権力と金銭の獲得が生活の全てで、成功なのだ。全民腐敗、堕落といった現象は人類の歴史上でも空前絶後だ。

6. 憚ることのない環境破壊と資源の略奪、贅沢と浪費の生活方式は何個の地球だと供給できるのだろか?

 

中国指導層の子息、家族はほとんど中国にいない

 

  クリントン氏が、中国に関して、本当にこのように思っているのなら、アメリカ人はやはり賢い。ただ、先日のクリントン氏の北京訪問は、成果ゼロだったとアメリカのメディアは伝えている。

  ただし、ここで特記しておきたいのは、次の中国のリーダー習近平の娘がハーバード留学生で、現在も在籍中ということだ。失脚した重慶市のトップ薄熙来の息子の瓜瓜もハーバードケネディスクール(行政大学院)に在学していた。

  政治局常務委員賈慶林の孫娘・李紫丹は、2011年スタンフォード大学に入学している。かつて江沢民の孫・江志成もハーバー­ドの留学生だった。趙紫陽の孫娘・趙可哥もハーバード大学のMBA、陳雲の孫娘・陳暁丹や元外務部長の黄華の息子と、李肇星の息子もハーバードである。

 このように、中国指導層の子息、家族はほとんど北京におらず、海外に出ている。地方の指導層、富裕層もみなそうだ。指導層や富裕層が、家族、子息を国外に出すということは、本当は自国が好きではないということだ。「愛国無罪」などと言っているが、中国人に愛国心などあるのだろうか?

 

権力を手に入れお金ができた人間から国を出る

 

  この点だけは断言できるが、彼らは故郷としての中国、文化としての中国は愛しているが、北京を愛してなんかいない。私は世界中でいちばん自分たちの国家を愛していないのは中国人だと思っている。

  ところが、教養のない層は、国家を愛することと故郷と文化を愛することを混同し、北京の洗脳に簡単にひっかかる。愛国無罪なんて言われて有頂天になり、国家主義の手先になって自分たち自身の首を締めるのだ。

  中国は権力を手に入れお金ができた人間から、さっさと出ていく国だ。コネとカネの社会には、自分たち自身も息苦しく感じ、「もういやだ」と思っている人間がいっぱいいる。じつは、日本も同じだ。東アジアの社会は、多かれ少なかれそういう社会で、日本がそのなかでマシというだけだ。

 

今後、日本企業の「脱中国」に拍車がかかる

 

  今後、尖閣の問題がどうなるのか? いまの状況では予測がつかない。次のようなことは言える。今回の反日の背景には、中国がピークを過ぎ、落ち目になってきたことがある。だからこの先、落ちこぼれた人々の怒りと怨念は、ますます強くなるだろう。それが、恐ろしい。

  その反動で、北京は対外的に強硬になる。ただし、これはポーズだ。GDPでアメリカを抜けないと悟った時点で、彼らも方向転換するだろう。

  もう一つ、今後、日本企業の中国離れは一気に加速するだろう。もう、中国はピークを過ぎたと誰もが思い始めているから、今回のことはいいきっかけになるだろう。実際、大手メーカーは、中国に生産拠点が集中するリスクを回避し始めている。

  ベトナム、タイ、インドネシア、そしてミャンマーなどの「新興アジア」に、生産拠点を移す動きが加速している。今回のことで確実に言えるのは、日本企業の「脱中国」に拍車がかかったということだ。