[148] アベノミクスによる株バブルはいつまで続くのか? 印刷
2013年 1月 17日(木曜日) 00:57

株価の上昇が止まらない。年明け後、いったんは調整すると思われたが、今週はほぼ毎日、じょじょに上げている。これで、昨年11月13日から1月15日までの上昇率は25.6%に達したという。2カ月間で25%以上の上昇は、実体経済を見れば異常というしかない。

  家電ショックで、史上最大規模のリストラが行われ、景況感も悪化しているのに、なぜこんなことが起こるのだろうか? 

  アベノミクスへの期待感。それに尽きるだろう。

  安倍内閣が取り組もうとしている金融緩和、積極財政が日本を変えてくれる。その期待感が株価を押し上げ、円安を誘導しているのだ。しかし、アベノミクスはまだ始まったばかりで、日本経済自体は、まだなにも変わっていない。カンフル剤としての補正予算約13兆円が組まれただけだ。

  つまり、いま起こっているのは、幻影かもしれないデフレ脱却、不況脱出の未来を先取りした「バブル」である。

 

もっとも大事なのは成長戦略がいまひとつ不透明

 

  バブルは起こったときには乗るしかない。乗ってから、周りを注意深く観察し、ここがピークと思ったらすぐに手じまいする。そうしたものだけが勝てるのがバブル相場だ。

  だから、いま投資家はみなそのような行動を取っている。それで、じょじょにだが株価は上がっているのだ。ただ、彼らは「いつどのタイミングで引くか」を冷静に考えている。

  そのタイミングとは、アベノミクスの成長戦略が、中身がない、達成不可能なものとわかったときである。アベノミクスは3本の矢によって成っている。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間の投資を引き出す成長戦略」の3本である。

  このうち、もっとも大事なのは成長戦略である。しかし、これがいまひとつ不透明だ。

  「日本経済再生・産業競争力強化法」(仮称)を制定し製造業の復活を目指すというが、どんな製造業なのか? また、空洞化を防ぐため、イノベーション基盤の強化や法人税の引き下げなどを行うというが、いつ法人税を引き下げるのか? いずれも具体的に見えてこない。

 

アクセルとブレーキを同時にかけているのと同じ

 

 そればかりか、すでに消費増税は決まり、それを先食いしたつなぎ国債の発行も決めている。さらに、富裕層増税も打ち出している。復興増税にしても富裕層増税と考えられるし、この先、所得税の最高税率を55%にしようとまで言っている。さらに、相続税の税率を引き上げ、控除額の引き下げも決めている。

 これでは、アクセルとブレーキを同時にかけているのと同じではないか?

  このままでは、日本でいくらイノベーションを起こして起業し、そのうえで成功したとしても、その果実は国家に吸い上げられるだけだ。頑張ってリスクを取って働いても、その富は国家に奪い取られ、バラマキに使われる。

 

当面の課題は、1月21~22日に行われる日本銀行の金融政策決定会合

 

  いまのところ、財政規律に関しては放置されている。税金にぶら下がる公務員たちの既得権も見逃されている。そのうえで、金融・財政政策だけを変えても効果はない。

  当面の課題は、1月21~22日に行われる日本銀行の金融政策決定会合でなにが決まるか? つまり、安倍内閣の意向を受けて大胆な金融緩和策が発表されるかだ。すでに市場は日銀が2%のインフレターゲットを導入することを織り込んで動いてきている。

  とすれば、資産買入基金で、リスク資産、たとえば多額のETFを購入するなどという政策を導入する必要がある。そんなことを日銀が決めるだろうか? そうすれば、少なくとも株価1万2000円は見えてくるだろう。ただし、過去に日経平均株価が1万3000円までなったときでも、インフレ率は上がっていない。

 

成長戦略が絵に描いた餅とわかったら日本経済は大きく崩れる

 

  いずれにしても、アナウンス効果だけでは、バブルしか起きない。肝心なことは成長戦略であり、そのためには、税制を思い切って変え、企業も国民もこれ以上苦しめないことだ。現在のような税制、国家体制の下で、誰が頑張るだろうか?

  結局、勝ち組はみな海外に逃げていく。また、海外から投資も入ってこない。いくらアベノミクスで、安倍首相が景気回復を訴えても、金融・財政政策だけでは、日本はなにも変わらないのだ。

  「1ドル100円、株価1万2000円が限界。そこを超えて、成長戦略が絵に描いた餅とわかったら、日本経済は大きく崩れるだろう」と、私の周囲のエコノミストは見ている。同じく個人投資家たちも、そこが逃げるタイミングと考えている。