[149] 安倍バブルはまだまだ続くのか? 香港から日本を見る 印刷
2013年 2月 13日(水曜日) 12:32

昨日まで、香港に行っていた。香港はいま旧正月の真っただ中。官庁や銀行、街の商店などは休みだが、セントラルやコ―ズウェイベイなどの中心街はモールもデパートも人でごったがえしていた。一昨日は、旧正月を祝う花火がビクトリア湾で打ち上げられ、セントラルのIFC近辺は人だかりができていた。

 今年の旧正月は、2月10日の日曜日が旧正月(春節)の元旦なので、大晦日の9日(土)から13日(水)まで、5日間の連休。金融関係者は、いつもの正月よりのんびりと過ごしていた。

  香港人、というか中国人は、旧正月になると、家の中を花で飾る。とくに、金柑の木、水仙、牡丹などは人気がある。これは、家族繁栄、商売繁盛につながるという。そして、新年のあいさつは、「恭喜發財 (ゴンヘイファッチョイ、Kung Hei Fat Choi)」。

  これが書かれた短冊が、街のいたるところに貼ってある。文字を見れば明らかだが、日本の「明けましておめでとうございます」とはまったく違って、「発財」すなわち「お金が儲かりますように」というところが、いかにも中国的だ。

  そんななか、何人かの金融関係者に、アベノミクスについて聞いた。その内容は、メルマガにも書いたが、ここにあらためて書き留めておきたい。

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  驚くべきことに、アベノミクス効果はまだ続いている。今日(2月13日)の午前は、円は一時的に円高にふれて1ドル93円台になっているが、株価は1万1000円台を維持して、今後は1万2000円を目指していく模様だ。このブログでは1カ月前に、アベノミクスをバブルだと指摘したが、バブルだからこそ、まだまだ続くのだろう。

  投資家心理として、「まだ大丈夫だろう」という空気が蔓延しているときは、なかなか先に抜けられないものだ。

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  香港のある投資家はこう言った。

  「アベノミクスはやはり本物ではないバブルでしょうね。金融緩和すればカネが余る。そのカネは、昔は企業や家計まで行きましたが、いまは、株、不動産、金などのストック資産に行き、企業や家計に行きません。

 金融が巨大化してしまって、メカニズムが過去とはまったく違ってしまったのです。

  アメリカのQE2、QE3で余ったカネを見ればそれがわかります。アメリカの家計に行かず、NY株に行き、さらに香港にもやってきて、香港の不動産バブルを引き起こしました。いまや、香港は世界一賃料が高い都会です。

  今回の日本のカネも向かうところは同じでしょう。株やそのほかのストック資産に行くだけです」

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  また、別の投資家はこう言った。

  「日本がこんな大バクチを打ってくるとは、思いもよりませんでした。ヘッジファンドの連中も驚いていますが、いまや攻めに転じています。ただ、いつ逃げるかの出口を考えた攻めです。

  もし、これで日本がデフレを脱却して、立ち直れば、それは世界史を変える出来事でしょう。本当にそんなことが起こるのか? 失敗する確率のほうがはるかに高いはず。そのときは、一気に底まで落ちるはずです」

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  ただし、このような見方をしながら、金融関係者はみなアベノミクスを歓迎している。それは、HSBC香港のフレデリック・ニューマン代表が1月末に、こんな発言をしていることに、よく現れている。

  「(アベノミクスにより)日本企業と銀行が東南アジアに投資を拡大するだろう。これは現地資産価格と投資、消費を刺激し、東南アジア諸国の今年の経済成長率を押し上げることになるだろう」

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  香港は、世界の1人当たりの購買力平価換算のGDP(USドル)ランキングによると、第6位。アジアではその上の3位にシンガポール入っている。ところが、日本は10位にも入っていない。アジアでは次に台湾が20位で入り、日本はなんと25位である。

  その日本が始めたアベノミクス。本当にこれで日本は立ち直るのか? 失敗して痛手を負い、このランキングがさらに落ちることは、十分に考えられる。

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  私が『資産フライト』を出した2011年秋は、円は1ドル80円を割り込む超円高だった。「このまま50円まで進む」と言った評論家もいた。だから、こんな時期に「なぜ海外投資なのか?」と、批判する声があった。

  しかし、当時、『資産フライト』で取材した金融関係者、投資家は、誰もが「やがて円安になる」と口をそろえた。

  いま円は1ドル100円を目指している。このままだと、資産フライトはますます加速するはずだ。