[150] メディア芸術祭に出かけた。「闇の国々」と「千年万年りんごの子」に感動 印刷
2013年 2月 20日(水曜日) 02:57

「平成24年度(第16回)文化庁メディア芸術祭受賞作品展」(国立新美術館)に出かけた。これは、文化庁のメディア芸術祭で顕彰されたアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門の作品の展示会。私のお目当ては、マンガ部門の展示。

 今年のマンガ部門の最優秀賞は、フランス・ベルギーのコミック「バンド・デシネ」の人気シリーズ「闇の国々」(ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン、訳:古永 真一/原 正人)。すでに世界中で評価が高い作品だが、今回、日本語に翻訳されたことにより、表彰されることになった。

  マンガ部門は、この最優秀賞以外に、優秀賞、新人賞の作品が展示されており、優秀賞作品では、「GUNSLINGER GIRL」(相田裕)、「ましろのおと」(羅川真里茂)が目についた。新人賞のなかでは、圧倒的に「千年万年りんごの子」(田中 相)がよかった。

 

 展示室のなかに入ってすぐに設置されているのはアート部門。この部門の最優秀賞は、スイスのCod.Act(Michel DECOSTERD / Andre DECOSTERD)によるミュージックパフォーマンス「Pendulum Choir」。9人のアカペラと18の油圧ジャッキからなる作品で、声楽家たちがジャッキによって前後左右に振り動かされながら合唱する。

 この映像の前には、人だかりができていた。

 そのあとに、エンターテインメント部門があり、マンガ部門さらにそのあと。

 やはり、目のあたりにする「闇の国々」の絵は圧巻だ。じつに緻密で、場面もよく考え抜かれたうえに構図されている。「闇の国々」とは謎の都市群で、われわれの現実世界と紙一重の次元に存在する。この闇の国々で起こる不思議な事件簿の数々。今回、日本語版第1巻では、3作品が収録された。

  ある日、突然増殖しはじめた謎の立方体に翻弄される人々を描く『狂騒のユルビカンド』、巨大な塔の秘密をめぐる冒険から、数奇な運命へと導かれる男を描く『塔』、未知の天文現象により、体が斜めに傾 いてしまった少女の半生を描く『傾いた少女』。

  作者のインタビュービデオが流れていたが、1ページに1週間かけることもあるという。ともかく、絵の緻密さと、その不思議な世界観に敬服した。

  新人賞の「千年万年りんごの子」は、講談社の『ITAN7号』連載作品。リンゴの国・青森の自然、その中で暮らす人々の温もり、そして受け継がれる伝統文化、それらが混然一体となって表現されているが、なにより絵がいい。最近の漫画のなかでは、もっともポエジーを感じさせる絵だ。