[161]「株価1万4000円、ドル100円」突破は確実か。米国景気の後追いをするだけのアベバブル相場 印刷
2013年 5月 04日(土曜日) 14:19

5月3日、米国雇用統計が発表されると、安堵感からダウ平均は、一時、なんと1万5000ドルを超えてしまった。これで、GW明けの日本株も1万4000円代に乗る可能性が出た。円も100円を突破するかもしれない。

 「今回の米国雇用統計が危ない。アベバブルはGW後弾けるかも」とあるエコノミストは私に言ったが、予想は外れた。彼によると、すでに米国はリセッションに入っており、「日銀の異次元金融緩和はアメリカを助けるために行われた」とのことだった。しかし、現実はこの予想とは逆に動いているようだ。

 

 3日に発表された4月のアメリカの失業率は7.5%。前の月より0.1ポイント改善した。非農業部門の就労者数も16万5000人増加し、市場予想 を上回った。ダウ平均はこれを受けて高騰し、一時1万5000ドルを超えた。結局、終値は1万4973ドル96セントだったが、これは史上最高値だ。

 「春の景気失速は懸念されていたほど顕著ではない可能性がある」と、コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジの首席市場アナリスト、オメール・エシナー氏(ロイター通信記事より)。

 

                               (SBI証券のサイトより転載)

 ただ、前回(4月5日)の 非農業部門雇用者数は予想19.0万人で結果は8.8万人。失業率は予想7.7%で結果は7.6%だったから、今回、それほど大きな変化があったわけではない。

 米国雇用統計は、これまで一貫して好調に推移してきた。昨秋は再選の目安とされた失業率8.0%割れが達成され、オバマ大統領は再選を果たしている。この雇用統計に先だって、消費者信頼感指数、ISM製造業景気指数、ADP雇用統計などでも雇用関連の数値の発表があったが、いずれも大きな変化はなかった。

 そのため、「まだ景気後退の可能性への懸念は拭えない」との声もある。

 

 雇用統計が改善し、就業者数が増えれば景気は底堅いと判断できる。労働需要が強ければ、平均賃金も上昇しやすい。アメリカ経済は、このようにわかりやすくできている。失業率が低下すれば、インフレ懸念が出てくる。インフレ懸念が出ると、米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げを行う可能性が高まる。

 しかし、日本経済は失業率が見せかけ(企業内失業も多く、統計の取り方も違う)のうえ、国債管理政策(政府と金融機関の談合で国債消化)が効いているから、インフレ懸念など出ようはずがない。

 

 では、今後アベノミクスはさらに進展し、株価1万5000円、ドル110円があるのだろうか? ここ何年かの日本株の動きで言えるのは、ダウ平均とほぼ連動していること。ダウが上げれば上げ、下げれば下がる。そこで、アベバブルが弾けるかどうかは、日本の経済動向より、米国の経済動向を見ておけばいいことになる。

 その主な指標は、以下の3つだ。

   1、国雇用統計(労働省)

  2、小売売上高(商務省)

    3、ISM製造業景況指数

  先のエコノミストは、「その3つも大事だが、VIX恐怖指数(シカゴ証券取引所)は大事だ」と言う。VIX恐怖指数はなにか事があれば大きく跳ね上がる。現在は10~20だが、たとえば9.11のときは44を記録した。最高はリーマンショック後の世界同時不況局面で90近くになった。したがって20を超えてくると注意が必要という。

  アベノミクスはこれから正念上の「第3の矢」の策定に入る。ただ、この政策が、米国の属国としての米国経済下支え政策なら、その中身など吟味する必要はない。投資家は、アメリカだけを注視していればいい。