[196] 一人負けソニーは北米では電子書籍からも撤退。日本の会社でなくなる日が来る? 印刷
2014年 2月 09日(日曜日) 23:11

このほど1100億円の下方修正、パソコン事業の売却、テレビ事業の分社化、14年度末までに5000人のリストラを発表したソニー。甘利明経済再生相からも「一人負け」と言われ、「創業精神に立ち返って技術開発力をつけて欲しい」と同情される始末だが、じつは、北米では電子書籍事業からの撤退も発表された。

  米Sony Electronics の発表によると、ソニーは独自の電子書籍ストア 「Reader Store 」を3月下旬にも閉鎖するという。これにともない電子書籍端末「 Reader」 や スマホの「Xperia 」などのReader アプリユーザーに対して楽天傘下の 「Kobo ストア」への移行をサポートするとしている。

 こうなると、じきに日本での電子書籍事業もクローズされるはずで、本当に残念だが、ソニーの凋落はまだまだ止まりそうもない。

 

アマゾンが一人勝ちで打つ手なし

 

 電子書籍に関しては、いまや北米でも日本でもアマゾンが一人勝ちだ。北米では電子書籍端末で2番手に付けていたB&NNook」が販売不振に陥り、ソニーの「Reader」にいたっては見る影もない状況になっていた。日本でも、つい先日、ローソンが独自で運営する電子書籍配信サービス「エルパカBOOKS」の閉鎖を発表した。

 一人勝ちになったアマゾン・ジャパンは、現在、電子書籍取次会社に料率の引き下げを要求しているから、じきに、乱立した日本の電子書籍サービスは淘汰・整理されていくだろう。

 私が見聞したかぎり、すでにこの業界の人間たちは「アマゾンに対抗できる日本独自の電子書籍サービス」をしようなどという情熱を失っている。

 

いまや社債はジャンク債に転落

 

 話をソニーに戻すと、平井社長はまだ「技術のソニー」の誇りを失っていないから、これほど採算が取れなくなっても、「エレキ事業を再生、成長させるのが私の使命」と、記者会見では繰り返していた。

 しかし、それが可能だろうか? ソニーが日本という国のイメージを高め、その製品に誇りを持って育った私たちの世代は、ソニーはなにがなんでも再生してほしいと願う。しかし、現状を見ると、それは本当に難しいと思う。

 それを見越して、127日、米ムーディーズはソニーの長期信用格付けを引き下げ、「投機的水準」としている。その理由は「コアであるエレキ事業(テレビ、携帯電話、デジタルカメラ、パソコンなど)の大部分では、引き続き収益が大きな下方圧力にさらされている」というものだった。

 ソニーの格下げは昨年11月に、英フィッチも「投機的」としており、もはやソニーの社債はジャンク債である。すでにソニーはニューヨーク本社ビルなどの資産も売却しているので、もう売るものがない。資産売却によって、業績に「ゲタ」を履かすこともできない。

 

最後に残ったのはCMOSセンサー

 

 ソニーの事業で成り立っているのは、2013412月期に、1878億円の黒字を出したゲーム、映画・音楽、金融の3分野。スマホなどのモバイル機器分野は76億円の営業赤字である。いまのソニー支えるのは製造部門ではないのないのだ。

 ただ、ソニーの製造部門は、「電子の目」と呼ばれるCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサーでは圧倒的に強い。CMOSはスマホのカメラやデジタルカメラには不可欠で、ソニーは昨年から、こちらに経営資源をつぎ込んでいる。最近では、ルネサスエレクトロニクスの鶴岡工場(半導体前工程300mmウエハー生産ライン)を買収した。日本の半導体が総崩れとなったいま、ソニーのCMOSは最後の砦だ。

 ただ、CMOSだけでは、シャープが液晶でサムソンの供給メーカーに成り下がったように、ソニーもただの素材供給メーカーになりかねない。

 

アメリカに本社が移る可能性が!

 

 パソコンのバイオを捨てたことを見ると、ソニーはこの道を歩むかもしれない。そうなると、ソニーは製造業というよりエンターテイメント会社になっていくだろう。

 見えてくるのは、分社化で、このまま赤字体質なら、ソニーの日本法人はCMOSを残すぐらいで、すべて閉鎖。エンターテイメント主力のアメリカ本社に、事業を集約するとことになるかもしれない。

 ソニーがものづくり企業でなくなり、さらに日本の会社でなくなる。そんな日がやってこないともかぎらない。もちろん、そんな日はやって来てほしくないが、時代はものすごいスピードで変化している。