[197]いま日本は危機的状況にあるのでは? GDP下方修正、ウクライナ、オバマ夫人訪中……。 印刷
2014年 3月 10日(月曜日) 21:41

中国・韓国の世界的な「反日キャンペーン」によって、日本の国際的地位は著しく貶められ、私たち日本人に対しても、世界の見方が変わってきている。海外にいる日本人は、最近は本当に肩身が狭くなっているのでないだろうか? 国内にいるとほとんど感じないが、海外にいる友人知己から、そういうことをたびたび聞くようになってきた。

 そんなわけだから、最近の次の三つのニュースは、どうしても気になる。

 一つ目は、310日に発表されたGDPの下方修正、二つ目が、混乱を極めるウクライナ情勢、三つ目がオバマ夫人の訪中だ。

 

GDP下方修正はアベノミクス失敗の証し

 

  310日、内閣府はGDPの下方修正を発表した。昨年1012月期のGDP(物価変動の影響を除いた実質)が、速報値の1.0%増(年率)から0.7%増へと、なんと0.3ポイントも引き下げられた。

 これがなにを意味しているかは明らかだ。アベノミクスが失敗だったということだ。なぜなら、アベノミクスなどしなくても、日本経済はこのくらいなら成長するはずだからだ。 

 GDP下方修正の理由は、設備投資、個人消費、公共投資と、すべての部門が速報値よりも下回ったことにある。設備投資は1.3%から0.8%へ、個人消費は0.5%から0.4%へ、公共投資も2.3%から2.1%へ引き下げられた。日本経済は明らかに落ち込み出したのである。

 マスメディアは、どこも政権擁護だからはっきり書かない。「安倍晋三政権の経済政策アベノミクスによる経済再生が正念場を迎えている」(産經新聞)などという表現でお茶を濁している。しかし、成長が減速しているということは、消費税増税を控えて「危機」が迫っているということだ。

 すでに、日本は貿易収支ばかりか経常収支まで赤字に転落するようになった。これだけでも、円安誘導は明らかに失敗だったと言えるだろう。

「円安になれば輸出が伸び日本経済は復活する」と言っていた人は、「円安になって日本経済はますます落ち込んだ」事実を、どう説明するのだろうか?

 

■ロシアの行動は第二次大戦後の秩序の破壊

 

 ウクライナも遠い国の出来事ではない。プーチン大統領としては、ウクライナに貸し込んだ債権の肩代わりとして、クリミアを獲りにいったのだろう。ヤヌコビッチはロシアから借りるだけ借りて、天然ガスの代金も払わなかった。このままいくと、ウクライナ国債は6月にはデフォルトするのは確実と言われていた。

 だから、ウクライナに国家破産されたら困るロシアは介入するほかなかったと言える。旧西側(アメリカとEU)は、ウクライナを助けるにも資金がなかった。なにしろ、先日、急遽キエフに入ったケリー国務長官は、たった10億ドル(1000億円)という融資保証しか表明しなかった。 

 しかし、このロシアの行動は、第二次大戦後の国際秩序の完全破壊だ。第二次大戦後の世界は、国連憲章で「武力の威嚇または行使によって国家の主権と領土を脅かす」のを禁じたところから出発している。しかし、今回のロシアの行動は、まさしく武力の威嚇によって他国の主権を侵し、領土を奪い取っている。しかも、ロシアは安全保障理事会の常任理事国である。

 つまり、もはや安保理は機能しない。安保理の常任理事国は拒否権を持っているのだから、自分に制裁が科せられる決議案には当然、拒否権を発動する。つまり、アメリカをはじめとするほかの常任理事国がいくらロシアを非難しても、なにも解決しないことになる。

 

■アメリカの覇権に挑戦し続ける中国

 

 そこで思うのだが、今回のロシアの動きをいちばん注目していたのは、じつは中国ではないだろうか。中国の権力者たちは、ロシアがどう動くのかをじっと観察していた。そして、いまやある結論に達したはずだ。アメリカは動かない。いや、動けない。EUも同じだ。となると、今後は中国だってロシアと同じことができると―。

 最近はどこの国も経済が苦しいから、政治家は自国のことしか考えなくなった。とくに、ロシアや中国の政治家はそうだ。彼らは自国の権益拡大こそが、最大の使命だと思っている。とくにこの2国は、アメリカ主導のパックスアメリカーナを認めず、ことあるごとにアメリカの世界覇権に挑戦しようとする。

 これまでの中国の動きを見ると、アメリカが後退すると、権益拡大のために、そこに出ていくということを繰り返している。アメリカはスービック基地をフィリピンに返還し、1995年の米比合同軍事演習を最後にフィリピンから撤退した。すると、中国は南シナ海の実効支配に乗り出した。まず南沙諸島のミスチーフ礁を、続いて2012年からはスカボロー礁にも手を伸ばし、そこに建造物を建てた。

 フィリピンのアキノ大統領は、中国の習近平主席をチェコからズデーテン地方を奪い取ったヒトラーと同じだと、非難したが、そんなもんどこ吹く風である。

 となると、尖閣諸島も同じ目にあう可能性は十分に考えられる。保守派の人々は以前から警告してきたが、その脅威はウクライナを見ていると現実化するかもしれない。

 それなのに、沖縄の名護市の市長・稲嶺進氏は普天間基地の辺野古への移設の「断固反対運動」をまだ続けている。沖縄の多くの住民もオスプレイ反対などと、いまだに自分たちの首を絞めるだけの「平和運動」が大好きだ。

 

■オバマ夫人訪中で米中蜜月を演出

 

 その中国に、今月半ばから末にかけて、ミシェル・オバマ米大統領夫人が出かける。なんと、19日から26日までの1週間の滞在で、もちろん初めての公式訪問だ。 

 となると、習近平国家主席の妻の彭麗媛夫人との初顔合わせも実現する。驚くのは、この公式訪問には、2人の娘マリアさんとサーシャさんに加え、母親マリアン・ロビンソンさんも同行するということだ。 

 中国にとって、こんな嬉しいことはないだろう。この機会を捉えて「米中蜜月」を演出しまくるだろう。ミッシェル夫人の訪中の目的は、教育問題を話し合うことだという。

 そのため、ミッシェル夫人はこの4日、ワシントンの中国語学校を訪れている。

 ミシェル・ファミリーはまず北京入りし、その後、西安、成都を訪れることになっている。どこの市でも高校訪問が予定されているので、中国人の若者との笑顔溢れる記念写真が世界にバラまかれるだろう。また、成都はパンダの街だから、パンダとの記念写真も撮られるだろう。

 そして、この間、中国は「反日」をさらに声を大きくして世界に発信し続けるはずだ。

 

■このままでは中国・韓国の“思う壷”

 

 こんな情勢なのに、現在の日本は、国会で経済問題に関する論議は後回しにされ、集団自衛権に関する憲法解釈だの、慰安婦問題に関しての河野談話の見直しなどが討論されている。そして、マスメディアはこうした問題を取り上げ続けている。

 もういい加減、政治家もメディアも、過去の話はやめしたらどうだろうか? 中国・韓国の戦略は「アメリカを中心とする世界の世論を巻き込んで、日本包囲網をつくりあげること」だからだ。

 彼らに、いまさら歴史の真実はこうだと言っても、始まらない。証拠を出しても認めない。とくに、中国人は「声の大きいほうが勝つ」ということを信じている人々である。 

 南京大虐殺問題、靖国参拝問題、慰安婦問題、すべて、日本側(日本のマスメディア)がつくり出した問題である。 

だから、こちらが止めなければ向こうは止めない。

 とすると、このまま政府が過去の歴史にこだわっていると、私たち日本人はますます肩身が狭くなる。

 いずれ、中国・韓国は、歴史認識に絞れば墓穴を掘る可能性もあるのだから、このへんで終わりにしてほしい。そして、経済に専念してほしい。第三の矢の改革を早急に進めてほしい。いまのままでは、結局は、中国・韓国の“思う壷”になるのは確実だ。