[198]羽田の国際線拡充ニュースに欠けている空での日中逆転 印刷
2014年 3月 25日(火曜日) 05:52

この330日から羽田空港の国際線発着枠が拡大され、国際線ターミナルも大幅に拡張される。羽田の国際線といえば、これまでの昼の便は、ソウル、北京、上海などアジアの中距離路線のみだったが、今後は、ロンドンやパリなどへの長距離路線も就航する。また、エールフランスやガルーダ・インドネシアなどが新たに参入する。この国際線拡充により、これまで韓国の仁川空港に奪われていた乗り継ぎ客を奪い返せるのではと、メディアは伝えている。

 これは、はるか以前から「羽田を国際空港に戻せ」と主張してきた私にとっては、本当に嬉しいニュースだ。もともと、成田を国際線、羽田を国内線と分けることにはなんの意味もなかった。これを続けために、国内線から国際線への乗り継ぎが不便になり、世界に通用するハブ空港として建設された仁川に大きく水を開けられてしまった。

 したがって、2020年の東京オリンピックが決まり、やっと日本の空もまともになってきたと言える。そんなニュースだからだ。

 

■羽田空港と仁川空港にある圧倒的な差

 

 しかし、このニュースには大きな視点が欠けている。それは、羽田がいくら発着枠を拡充しても、もう日本の空はダメかもしれないということだ。つまり、すべてが手遅れなのだ。

 というのは、まず、今回ぐらいのことでは仁川に勝てっこないということ。次に、海外の航空会社は、とくにアメリカの航空3社はもう日本に興味がないということだ。

 では、仁川と羽田を比較してみよう。2012年の国際線の利用者数は、羽田が795万人で仁川が3835万人。なんと約4倍もの差がある。次に就航都市の数だが、羽田が18都市、仁川が175都市で、こちらは約10倍も差が開いている。また、空港着陸料金は羽田が72万円で、仁川が26万円。これでは、差が簡単に詰まるとはとうてい思えないのである。

 

■ユナイテッドもデルタも成田発を減便

 

 続いて、海外の航空会社が日本に興味を失っている件だが、これは成田からのアジア便がどんどんなくなっていることに顕著に現れている。

 たとえばここ12年、ユナイテッド航空は、日本経由のアジア路線を減らしている。201210月から成田—台北便がなくなった。そして、201310月からは成田−香港便もなくなった。また、この3月でバンコク便も運休になった。

 この結果、日本からのユナイテッドのアジア便は、ソウルとシンガポールだけになった。おそらくこのままいくと、日本発のユナイテッドの路線はアメリカ向けだけになるだろう。

 デルタ航空も日本便は減便している。ただし、アジア便は減らしておらず、成田を経由しないで米本土からアジアへの直行便に力を入れているのだ。デルタは明らかに日本軽視・中国重視で、中国東方航空、中国南方航空との関係を強めて、日本を素通りするようになった。

 デルタはアジア向けのハブとしてシアトルを使っているので、日本を素通りさせたアジア直行便を飛ばしやすい。今後は、成田を素通りするシアトル発の韓国ソウル行きと香港行きの直行便ができるという。

 さらに日本人観光客向けのハワイ、グアム、サイパン路線も減らすとされている。

 

■太平洋全便日本のシェアはどんどん低下

 

 2014211日の『ウォールストリート・ジャーナル日本語版』に、「米デルタ航空、日本から他のアジア諸国に軸足シフト」という記事に、次のような記述がある。

《コンサルティング会社CAPAによると、ユナイテッドと、アジア路線を運航する米国第3位の航空会社(デルタ)、そしてアメリカン航空グループにとって、太平洋全便の乗客定員に占める日本のシェアは50%未満にまで下がっている。
CAPAによると、米航空3社の米日間の便の乗客定員は2008年と比較して減っているのに対して、米中間の便の乗客定員は同期間に3倍にまで増えている。》

 

■ついに空でも「日中逆転」が起こった

 

 このようなことから言えるのは、アジアの空は、いまや中国・韓国に日本が大負けを喫しているということだ。これは、歴史認識問題より大きな問題ではないだろうか?

 しかも、両国はアメリカとの関係を強めている。このほど、オバマ大統領夫人とファミリーが1週間も中国を訪問・滞在したことは、明らかに「ジャパンパッシング」(日本素通り、日本軽視かあるは無視)である。

 空に関しては、中国の利用客が増えて日本の利用者が減っているのだから、パッシングは仕方がないとも言える。しかし、ここまで日本人が内向きになって海外に出ないと、国力のさらなる衰退を招く。

 アメリカと中国はいまだにオープンスカイ協定を交わしていない。しかし、デルタは現在、シアトルとデトロイトから北京と上海へ直行便を運航している。

 しかも、今後、円安が進んで行けば、日本人の海外旅行はさらに減るだろう。とくにアメリカ本土などの遠方は減る。そうすると、なにが起こるだろうか?

 最近、アメリカに行くと、どこに行っても日本人より中国人、韓国人が目立つ。おかげで、飛行機に乗るときに客室乗務員から「ニーハオ」と言われることもある。

 

■中国本土からハワイへの直行便

 

 私がさらに心配なのは、この2年ほどで、中国とハワイの直行便が次々とできていることだ。まず、中国東方航空が、20118月から上海−ホノルル直行便を飛ばすようになった、当初週2便だったが、いまや週5便に増えた。また、この1月22日からは、中国国際航空(エアチャイナ)がついに北京−ホノルル直行便を週3便飛ばすようになった。続いて、この418日から、今度はハワイアン航空が週3便ホノルル−北京直行便を飛ばす。 

 かつてハワイには中国人観光客はほとんどいなかった。それが、ここ数年、激増している。ハワイ州観光局によると、中国からの旅行者の数は2012年以降、年間約40%も増加しているという。

 ハワイを空路で訪れた旅行者数は2012年には計784万人で、アメリカ本土からが489万人で断トツの1位。続いて日本からが145万人、3番目がカナダからで約50万人。韓国人は15万人、中国は12万と低いが、直行便ができたので一気に増えるだろう。しかも驚くのは、中国旅行者のハワイでの支出額が1日1人当たり約400ドルということ。これは日本人の289ドルを大きく上回っている。

 もともと日本からハワイへは、各地の空港を合計して毎日10便以上が飛んでいた。しかし、アジアからは、台北から中華航空が成田経由で1便、ソウルからは大韓航空、アシアナ航空、ハワイアン航空の直行便が3便、ほかにはマニラとグアムがあるだけだった。だから、中国人がハワイへ行こうとすれば日本かソウルで乗り継ぐしかなかった。

 しかし、いまやダイレクトに行けるのである。

 

■中国人がワイキキでサーフィンをやる日

 

 昔はワイキキの街角のスタンドに、ハングルのガイドブックなどなかった。しかし、いまやハングルのガイドブックがスタンドに置かれているから、次は簡体字のものもできるだろう。これからは、ビーチにコリアンに続いてチャイニーズも続々とやって来るはずだ。

 娘が小学校の頃、カピオラニビーチでよく一緒にボディボードをやった。そのとき、コリアンの姿はなかった。しかし、最近では観光客のコリアンの若者がボデイボートをレンタルしてやっている。サーフィンなど知らないはずの本土から来たチャイニーズがボディボードをやる姿は想像がつかないが、きっとやるだろう。

 時代は本当に変わった。歴史認識、慰安婦、尖閣などと言っている場合ではない。

 最後にもうひとつ書いておくと、2020年は東京オリンピックの年だと日本人は思っている。しかし、この年、中国は有人月面探査を実行する。中国人が人類として2番目に、月面に立つのだ。