[200]消費税30%、国の借金1京円という「シュール・ジャパン」 印刷
2014年 5月 01日(木曜日) 01:20
あまりに数字が大きすぎて、目眩(めまい)がしてくる発表が428日に国からあった。新聞・テレビはさりげなく伝えたが、これは今後の私たちの暮らしを直撃する「重大発表」だ(この報告書は財務省のHPにアップされている)。

 では、なにが発表されたのか?

 それは、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の財政制度分科会が試算した「我が国の財政に関する長期推計」だ。

 そのポイントは、次の2点。

2020年度の日本国政府・地方の借金総額は1500兆円

2060年度の日本国政府・地方の借金総額は11400兆円

  

 この報告書を伝える読売新聞記事は、次のようになっていた。

《長期推計は、欧州連合(EU)欧州委員会の財政分析の手法を活用した。名目成長率3.0%、長期金利3.7%で試算すると、60年度の名目GDPは約2053兆円。収支改善を行わないまま、現在のさまざまな制度や施策を続けた場合、医療など社会保障費の伸びを背景に、借金は20年度に1500兆円、60年度に11400兆円となる見込みだ。消費税率は10%を想定した。》 

 続いて、朝日新聞記事を見ると、次のようになっていた。

《財務相の諮問機関である財政制度等審議会は28日、国の借金を減らすためにどれだけ歳入を増やしたり歳出を減らしたりする必要があるかという試算をまとめた。2021年度に国内総生産(GDP)の8.9%にあたる約57兆円分が必要だという。消費増税によって歳入を増やすだけで達成しようとすると、消費税率を30%近くまで引き上げなければならない計算だ。》

 

 では、この報告者と報道からなにが読み取れるだろうか?

 まず、2020年の東京オリンピックのときに、国の財政を持たせるには、消費税を30%にするか、社会保障費(医療費、年金)などを大幅に削るほかにないということ。

 続いて、2060年だが、これは半世紀も先とはいえ、そこまでに現在の日本国は消滅しているということだろう。国の債務が11400兆円なんて、冗談以外にありえないからだ。

 

 報告書は、名目成長率3.0%(実質2.0%)で日本が成長し続けることを前提にしている。まさか、まさかである。現在、日本は少子高齢化で人口が減っている。その結果、2050年には3300万人減少し、日本の総人口は9515万人とされている。それから10年後、日本の名目GDPは約2053兆円になるというのだ。

 これは、現在のアメリカのGDPと中国のGDPを足した額に匹敵する。そんなことが起こるだろうか? 仮に起こったとしても借金11400兆円で、GDP比で約5.5倍だから、これはもう国とは言えない。シュールというかセクシーというか、そういう世界の話だ。まさに、「シュール・ジャパン」である。

 

 長期金利が3.7%というのもよくわからない。日銀のインフレ目標を前提にしていると思われるが、単純に計算して、現在の国の借金約1000兆円に3.7%を掛ければ、国債の利払い費は年間で37兆円となる。これに国債の元本消却費約20兆円をたすと57兆円。

 これは、税収のすべてを借金返済に回すということだから、この前提だけでも、すでに日本国は破綻している。普通に考えて、金利を成長率より高く設定すれば、借金国家は必ず破綻する。

 

 このように、どんなに考えてもありえない前提を基にして、試算する意味はなんだろうか?

 現在の日本国は持たない。それがいつになるのかはわからない。だから、早く手を打つべきだと、この報告書は警告したいのだろう。つまり、報告書でなく警告書だ。じつは、この手の警告はこれまで何度もあった。しかし、今日までどの政権も手を打ってこなかった。官僚もほぼなにもしてこなかった。だから、いまさら驚くことでもない。私としては、もうこういう繰り返しに、なにか言う気もなくなっている。

 ただ、それでも書いておきたい。

 報告書を読んでも読まなくとも、いまの日本国はいずれ破綻する。それがどんなかたちになるのかはわからない。もちろん、いまの日本国が破綻しようと、私たち日本人と日本はなくならない。ただ、そのときの私たちの暮らしは、いまよりはるかに貧しくなる。それだけだ。