[208]鶏肉偽装なんて氷山の一角。中国の本当の問題は「空気」「水」「油」の汚染だ! 印刷
2014年 7月 25日(金曜日) 03:03

またも中国で食品偽装事件が発覚、大騒ぎになっている。ニュースやワイドショーを見ていると、識者たちはいろいろな見解を述べているが、私にはどれもピンとこない。というか、どんな見解も的外れとしか思えない。

 なぜなら、今回は鶏肉などの加工肉が問題とされているが、問題は中国の全食品に及んでいるからだ。つまり、識者たちが言うように「安全管理意識を徹底させる」「HACCPを徹底導入する」「抜き打ち検査をする」なんてコメントは、まったく意味をなさない。

 

 鳥インフルエンザ、冷凍ギョーザ中毒事件などを受け、日本企業は、これまで取引先である中国企業の安全管理やトレーサビリティの徹底を図ってきた。しかし、今日まで、中国側の安全意識が改善されたと、私は聞いたことがない。つまり、この問題はそんなことでは解決できないのだ。

 

■中国の養鶏は抗生物質漬けでヨレヨレ

 

 今回、不正が発覚したのは、米国企業傘下の「上海福喜食品」という会社。ここは、マックやフライドチキンなどが納入先という、中国でも有数の大手企業と言われている。ということは、この会社でこれほど大規模な組織ぐるみの偽装が行われていたのだから、他の会社、まして中小などは偽装だらけだろう。中国の食品加工会社なら、どこも同じようなことをやっていると見て間違いない。

 つまり、鶏肉に関してだけ言えば、イオンなどがいち早くしたように、たとえコストが上がってもタイ産やブラジル産に切り替えるしかない。それに中国の鶏は、肉が消費期限切れという問題以前に、抗生物質漬けで危険極まりないからだ。

 中国の養鶏場では、えさに抗生物質をそれこそ何十種類も混ぜて与えている。そうして、とにかく鶏を太らせ、ヨレヨレの状態で出荷している。

 

数歩歩いただけだけで脚が折れてしまうブロイラー

 

 2011年アメリカでヒットし、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた映画『フード・インク』では、大量の鶏肉が生産される過程が描かれていた。

 業者は、ブロイラーをできるだけ早くフツーの鶏の2倍の大きさに育成するために、徹底してえさやクスリを与える。だから、ブロイラーはあまりに早い体の成長に骨や内臓の成長が追いつかず、数歩歩いただけだけで脚が折れてしまうのだ。

 こうしたブロイラーが、最終的にフライドチキンになる。

 アメリカでさえこれだから、中国はもっとひどいと容易に想像できる。

 

酸素マスクが必要な北京はもはや地球ではない

 

 ともかく、中国の工場でつくられている加工食品はすべて信用できないと思っていい。肉だけではない、魚も野菜もすべてだ。

 私の場合、中国で痛い目(食当たり、下痢、発熱など)に何度もあっているので、これは確信を持って言える。 

 なぜなら、食材がどうであろうと、加工するために使う「水」や「油」が、ほぼ汚染されているからだ。しかも、「空気」まで呼吸すれば肺が汚れるほど汚れているのだから、「食の安全」など成立しようがない。

 冬の北京はPM2.5汚染のため、酸素マスクが必要なのだから、もはや地球ではない。バス亭でバスを待っていても、50メートルほどのところまで来ないと何行きなのかわからない。

 

■水道水で水餃子をつくったら黄色に変色

 

 中国の水のひどさと言ったらない。誰もが知っているように、中国の水道水は飲めない。飲めないばかりか、歯を磨いても、顔を洗ってもいけない。それくらいならいいだろうとタカをくくって、あるとき水道水で洗顔したら、しばらくして顔の皮膚がこわばり赤くなったことがある。真夏にひどく日焼けしたときと同じ状態になった。

 もちろん、料理に使うなんてとんでもない。娘が上海に住んでいたとき、間違えて水道水で水餃子をつくったら、ぜんぶ黄色く変色してしまった。レタスなどの生野菜を水道水で洗ったら、もう食べてはいけない。確実にお腹をこわす。

 水道水がダメなら、ペットボトルということになるが、これも信用できない。街の商店に売られているペットボトルの中身はすり代えられていることが多い。北京では、ある年売られていたペットボトルの半数が、水道水を詰めただけの偽装ペットボトルだった。

 

■「山紫水明」はもはや中国には存在しない

 

 上海の水道水は、長江水系から来ている。2010年に万博があったので浄水設備は改善されたが、長江の水自体がひどく汚染されているのだからどうしようもない。上海市を流れている黄浦江は、昨年、豚の死骸が流さてきて大騒ぎになったが、その水はいつも土色で濁っている。

 上海郊外には「水郷の町」と呼ばれる観光地が何カ所かあるが、どこも水は濁り淀んでいる。「山紫水明」はもはや中国には存在しないも同然だ。

 上海では、食材を地元のスーパーや商店で買ってはいけない。私たち家族は、静安寺のリッカールトンの1階にある外国人向けスーパーか、「そごう」(いまは久光百貨店)の地下の食品売り場でしか買わなかった。

 

■「地溝油」まで売られ、しかも油はたらい回し

 

 中華料理は油を本当によく使う。しかし、その油はリサイクル油のことが多い。最悪なのは、「地溝油」といって工場などの排水溝、下水溝などにたまった廃油を食用油に再加工して売っていることだ。

 もし、これで料理をしたら、どうなるかは言うまでもない。そこまではいかなくとも、中国では油の使い回しは日常茶飯事だ。

 娘が南京にいたとき、一緒に新街口(南京の繁華街)にある高級中華料理店に行った。そして、帰り際、その店の裏手にある調理場口に、リヤカーが止まっていて、何本かの金属ボトルが積んであった。それで、「あの中にはなにが入っているのか?」と聞くと、「あれは油だ。この店で使った油を買いに来ている」と言われた。

 買いに来ているのは、街の中華料理店の店員。つまり、油は高級店から中級店、街の庶民の店というふうに、たらい回しになっているのだ。

 

2049年、中国に健康な人間はいるのか?

 

 というわけで、「チェック体制」「トレーサビリティ」「HACCP徹底」などをいくら導入・改善しても、中国の食の安全は確立されない。まして、これは中国人のモラルをいくら問うても解決しない。たとえ中国人がモラルを守っても、「水」も「油」も「空気」も、同じ地球とは思えない環境を根本的に変えない限り、無理だからだ。

 中国は食に関しては「絶望国家」である。こんな国で暮らし、まともなものを食べられず、反日教育を受けている13億人の人々は本当に哀れだ。

 「食在中国」(食は中国にあり)というが、この言葉を復活させたいなら、習近平政権は全力で国内の環境改善に取り組むべきだろう。

 習近平主席は「中国の夢」をさかんに唱えている。2049年、つまり中華人民共和国の建国100年までに、アメリカを逆転し、中国が世界一の覇権国家になることを目指している。これは、1840年のアヘン戦争の敗北から1949年の中華人民共和国の建国までを、「屈辱の百年」と位置づけ、その後を「栄光の百年」とするという、とんでもない野望の実現化だ。

 つまり、彼は、2049年までに「中華民族の偉大なる復興」を成し遂げようとしている。しかし、たとえそうなったとしても、そのとき、中国には健康な人間は一人もいなくなっているのではないだろうか。