[221]総選挙が終わって思う「安倍首相は経済に本気ではないのではないか?」 印刷
2014年 12月 15日(月曜日) 17:35

「この道しかない」と言ってアベノミクスを継続することになった安倍首相。しかし、彼の経済重視は見せかけではないのか? 選挙の大勢判明後の会見で、「国民の信任をいただいた」「憲法解釈変更を意識した選挙だった」「憲法改正は私の大きな目標であり信念」と言い出す姿を見て、そう思った。

 すでにアベノミクスの第1の矢、第2の矢はほぼ失敗し、日本経済は不況に突入している。石油価格の下落が円安不況をかろうじてカバーしているだけで、国民生活は貧困化の一途をたどっている。

 こんな状況を見れば、首相ならまず経済を語るだろう。しかし、彼は、「雇用は増えた」「賃金は上がった」「この暖かい風を中小企業、小規模業者の方にも届けていく」と言うのだから、そうは認識していないようだ。だから、信念である「憲法改正」を言い出せるのだろう。

 

 そう思うと、予想どおりの「自公圧勝」で、私たちの将来はいっそう暗くなった。この先に待っていることを思うと、暗澹たる気分になる。

 アベノミクスの第3の矢、成長戦略は進展していない。かつてあれほど言っていた省庁や業界の抵抗が強い「岩盤規制の改革」は、ほぼなにも行われていない。歳出削減の努力もされていない。

 日本のこの政治状況に、アメリカをはじめとする海外メディアも疑いの目を向けるようになった。実際、最近は「安倍首相の経済重視は口先だけ」という論調が目立つようになった。

 労働市場の規制緩和、法人税の引き下げ、農業や医療分野の解放、経済特区の創設など、日本経済を活性化させる方法は、メニューだけ並べただけで、首相自身にやる気がないのではないだろうか?

 TPP交渉の妥結も、やり方次第では経済を活性化させる。しかし、これまでの経緯を見ていると、引き伸ばしているだけのように見える。

 

 岩盤規制の打破は、与党が3分2を握っているのだから、憲法改正ほど難しい問題ではない。やろうと思えばできる改革だ。しかし、首相が本気でなければできない。

 現在の憲法はリーガルフィクションだから、これを改正することには異論はない。しかし、それによって、「日本はますます右傾化していく」「復古主義が台頭している」と、海外から批判されるのは、国民も望むところではないと思う。

 

 不況が続けば、社会の閉塞感は強まり、ナショナリズムはますます台頭する。しかし、そうしたナショナリズムは、日本を本来の「美しい国」にはしないだろう。グローバル経済とのバランスのなかで、世界とのヒト、モノ、カネの交流がさらに強まってこそ、日本は「美しい国」になれると思う。

 このままでは、日本はますます鎖国化するのではないだろうか?