[228] たった2つのグラフでわかるアベノミクス「異次元緩和」は大失敗 印刷
2015年 4月 03日(金曜日) 12:36

20134月に始まったアベノミクスの「異次元緩和」から、2年が経過した。そこで、日銀の統計から、この異次元緩和がどうなったのかを検証してみたところ、なんと、金融緩和がまったく進んでいないことがわかった。

 これは、次に示す2つのグラフを見れば一目瞭然だ。アベノミクスは、金融政策においては大失敗しているのだ。

 アベノミクスでは、金融緩和をすると世の中にあるおカネの量が増える。そうするといずれインフレになるとわかるので、企業も個人もおカネを使うようになる。そうなれば経済は回り出し、日本経済は復活すると説明されてきた。

 実際、メディアも日銀がおカネを大量に刷って、それを市中に流し込んでいると言ってきた。

 しかし、市中のおカネの量はほとんど増えていないのである。

 

 これは、日銀のHPを見ればすぐにわかる。次の[グラフ1]は、日銀のバランスシートの推移を2005年から2014年までをグラフ化したもの。

 バランスシートとは資産と負債を示すものだが、日銀は、異次元緩和以来、資産とされる「国債・財融債」をどんどん増やしてきている。しかしその一方で、負債にあたる「現金」はほぼ横ばいであり、「日銀預け金」(日銀当座預金)だけが「国債・財融債」と同じように増えている。

 日銀の国債保有残高は、異次元緩和が始まる前の20133月は94兆円だった。それが、201412月には207兆円になった。なんと、113兆円も増加している。これは、日銀の総資産317兆円の65.3%にもなる。

 

  民間の銀行は、保有国債を日銀に売る。そうすると、日銀はその代金を銀行が日銀に持っている当座預金に振り込む。これが、日銀当座預金である。

 この日銀当座預金からおカネを引き出して、銀行はそれを企業などに貸し付ける。それによって企業は設備投資を増やして業績を上げる。企業が業績を上げれば給料が上がって、おカネは最終的に個人に回る。そうなれば消費も増えて、景気がよくなる。これが、アベノミクスとそれを推進させたリフレ派と呼ばれる人々が提示した「ストーリー」だった。

 

 しかし実際は、グラフでわかるように、おカネは日銀当座預金に眠ったままである。前記したように国債・財融債は113兆円増え、日銀当座預金は120兆円増えている。つまり、国債・財融債の代金は、ほぼそっくり日銀当座預金になっただけだ。

 これを金融関係者は、「ブタ積み」と言っている。積まれただけで、まったく使われていないからである。では、現金はどうなっただろうか? これは10兆円増えただけである。異次元緩和前とほとんど変わっていない。

 

 では次に、日銀に国債を売ったほうの金融機関はどうなったかを見てみよう。[グラフ2]は預金取扱機関のバランスシートの推移だが、当然ながら、ポートフォリオに占める資産である国債・財融債の比率は下がり、日銀当座預金の比率が上がっている。銀行はただ、おカネを日銀に「ブタ積み」しただけなのである。

 これでは、市中におカネが増えるはずがない。つまり、アベノミクスのストーリーは、初めから破綻している。異次元緩和で金融は緩和などされていないし、バズーカ砲も不発だったわけだ。

 

 金融緩和そのものは実体経済を復活させる力を持っていない。実体経済は需給の改善と企業活動によって起こるのであって、政府の金融政策では起こらない。つまり、アベノミクスは2年を経過したこの時点で「大失敗」していると言うほか言いようがない。