16/07/15●アマゾン「電書読み放題」に講談社、小学館が作品提供するも先行きは「?」 印刷
2016年 7月 15日(金曜日) 14:03

アマゾンの定額読み放題サービス「キンドル・アンリミテッド日本版」がいよいよ日本でも始まる。注目は、どんなラインナップになるかだが、日経新聞の7月15日の報道では、講談社や小学館のほか、複数の中堅出版社などが参加する見通しだという。KADOKAWAは検討中で、集英社は参加を見送るという。

 日本の電子書籍市場は、漫画に偏っているので、大手漫画出版社が参加しないかかぎり会員は集まらない。また、その作品に新作や話題作が含まれていないと、会員数は増えない。

 アメリカの「キンドル・アンリミテッド」では作品数が100万冊を超えているが、日本版では「5〜6万冊」というから、どうなるかまったくわからない。

 

 もし、会員数が集まらなければ、出版社も著者もほとんどリターンがえられない。月額980円の提供だから、仮に10万人としてアマゾンに入るのは月に9800万円。その半額の4900万円が利用量「読まれた回数」に応じて出版社に支払らわれるが、その額は微々たるものになる。

 著者にはここから15%が支払われるとすれば、このようなサービスに作品を提供する意味(収益面での)はない。アマゾンは作品集めに、初年度にかぎって単品販売と同額を出版社に支払う特別条件を提示しているというが、この条件はいずれ変更される。

 

 要するに、ネットでのサブスクリプションモデルはサービス提供するネットビジネス側だけが収益を上げられる構造になっている。ドコモの雑誌読み放題サービス「dマガジン」は好調だが、提供側の雑誌出版社の雑誌が部数減で次々に廃刊していけば、このサービスは成り立たなくなる。それなのに、こうしたサブスクリプションモデルを礼賛しているジャーナリストがいる。 

 

 音楽配信の世界では、「Apple Music」、「Amazon Prime Music」などの定額制サービスが世界的に主流になったが、ミュージシャンにはライブという収益源がある。しかし、漫画家や作家などにはそういうものがない。

 作品づくり、著作者の発掘・養成などにまったく投資していない側だけが得をする構造は、どこかおかしい。いずれ、それを楽しむ消費者側もソンをする。

 アマゾンをはじめとするネットサービス提供業者は、もっと、著作者や作品作りに理解を示すべきだ。アマゾンは、せめて75%は出版社側に戻すべきだろう。