[054]朝日新聞も早期退職者募集! ジャーナリスト受難時代が始まった 印刷

2010年5月16日

日本の紙メディアも、アメリカ同様、崩壊過程に入ったようだ。出版界では、すでに光文社、マガジンハウスが早期退職を募集して波紋を呼んでいるが、今回は、新聞界のトップ・朝日新聞社。朝日新聞社では、4月26日付けで社内向けに「早期退職者制度」を発表。昨年、産経新聞社が全社員の5%にあたる100人の希望退職を募集したのに続いて、新聞界では2番目の大きなリストラ策に踏み切った。

 朝日新聞は、2009年3月期(連結)は1879年設立以来初めて最終赤字(139億円)に転落し、その後の発表でも「10年3月期、11年3月期と3年連続の赤字となる見通し」とし、「10年から3年かけ、社員を5000人から4500人に減らす」としていた。今回の早期退職者募集は、その具体的策だが、「早期退職制度」という言葉を使わず、「転進支援制度」となっている。


 2009年、日本国内の新聞発行部数は、史上初めて百万部を超える減少(1,138,578部減)となった。おまけに、リーマンショック後の経済の落ち込みは、広告出稿を激減させ、新聞社の経営を大きく圧迫するようになった。新聞の部数減のうちの約3割は押し紙廃止の影響だが、広告の激減は紙メディアの生死を大きく左右する。これは、雑誌も同じで、出版界も同様に経営が苦しくなった社が続出した。

 朝日の「早期退職制度」の第1回締め切りは7月末、第2回締め切りは来年初頭で、対象は45歳~58歳。転進支援制度というだけあって、手厚い内容になっている。09年の年収が1000万円に満たない場合は1000万円とし、1800万円を超える場合は1800万円として計上し、その半額を60歳まで年金として毎年受け取ることができるというもの。さらに再就職の斡旋付きだ。
 つまり、最低でも毎年500万円が保証されるのだから、一般企業のリストラと比べたら、かなりの厚遇だと言えるだろう。

 朝日新聞では、すでに給料カットが行われているが、30代で平均年収1000万というラインは崩れていない。だから、崩壊が始まったと言うのは大げさかもしれないが、紙メディア自体が衰退しているだけに、今後どのようになるかは予測がつかない。そのため、「いま辞めた方が圧倒的に得」という声が社内では強いという。
 今後は、日経などでも早期退職に踏み切るとされ、業界では「最低でも500万円をもらって再就職できる朝日はうらやましい」という声と、「大量に掃き出された記者の転職先が果たしてあるのか」という声が交錯している。アメリカでは09年、約1万人のジャーナリストがリストラされたが、他メディアで同じような職を得られた例は少ない。

 じつは、この私も、この5月いっぱいで、光文社を退社してフリーになる。ジャーナリスト受難時代をどう生きるかは、他人事ではない自分のテーマでもある。

Introducing the New Vanity Fair Magazine iPad App by Vanity Fair May 13, 2010, 12:00 AM

 ところで、アメリカではiPadの出荷から1カ月が過ぎ、紙メディアに変化が起こってきた。特に雑誌は、電子時代に生き残ろうと必死で、iPadに適応していこうと様々なアイデアが出現している。その現場(編集会議)を「Vanity Fair」(コンデナスト)がサイトで公開しているので見てみたが、なるほどと思わされた。

「Vanity Fair」は6月号からiPad/iPhone向け電子雑誌版を発行している。その第1号が、5月12日から4.99ドルで売り出されたが、目玉はサッカーのワールドカップ特集で、なんと各国のスーパースター、ポルトガルのクリスチアーノ・ロナウドやブラジルのカカが、国旗の水着スタイルで出演している。
 このような編集ができれば、雑誌は紙を捨てても生き残れるだろう。サイトを見てそう思った。