[061] 電子書籍戦争激化か?「デジタルパブリッシングフェア2010」は新技術が乱立 印刷
2010年 7月 12日(月曜日) 18:55

「デジタルパブリッシングフェア2010」が、8日から10日までの3日間開催されたので足を運んだ。場所は東京・国際展示場(ビッグサイト)。これは、書籍見本市「東京国際ブックフェア」(8日から11日まで)と同時開催で、本来なら主役は「ブックフェア」の方だが、今年は電子書籍元年とあって、注目は断然こちら。展示ブースの人だかりも圧倒的にデジタルの方が多かった。

 実際、東京国際ブックフェアは年々さびれていて、最近ではアジアでの国際ブックフェアといえば、北京国際ブックフェアを指すようになった。世界の出版人も北京を重視し、版権取引にやってくる欧米の出版人は本当に少なくなった。そのせいか、今年のブックフェアの国際ブースの目玉は、なんとサウジアラビア。これには驚いたが、昔の盛況を知っているだけに、一抹のさみしさも感じだ。ただ、そんなブックフェアの低調を吹き飛ばすかのように、デジタルのほうは連日盛り上がっていた。

    デジタルパブリッシングフェアの展示で私と同行した仲間が注目したのは、以下の3つ。

 「グーグル」と「Fan+」(NTTプライム・スクウェア)と「方正」である。

 グーグルは、この秋からアメリカで書籍全体を100パーセント読める状態にする有料サービス「Googleエディション」を実施する。「Fan+」(ファンプラス)は、角川とNTTが出資した会社で、電子書籍のオーサリングツールを提供し、さらにプラットフォームまで用意して配信までするという一貫した新サービスをする。また、「方正」は中国企業で、デジタル化サービスを行うため、このほど日本に進出した。

 

 グーグルのブースでスクリーンを使ったプレゼンがあるたびに、ともかく黒山の人だかりになった。

 プレゼンでは、Googleブック検索について、現在は全体の20%しか読めないが、「閲覧ページが増えるほど、購入者も増える」ということがしきりに強調された。つまり、今後、100パーセント読める「Googleエディション」は、出版社の脅威ではないということを言いたいのだろう。「Googleエディション」は、来年にも日本での導入を予定しているといい、本を送るだけで、勝手に電子書籍化してくれるサービスも実施するという。

 「Fan+」(ファンプラス)は、「リッチコンテンツ」による新しいかたちの電子書籍を流通させようという姿勢が明確だった。書籍データの単なる電子化ではなく、素材から再オーサリングし、そのためのツールも含めたサービスだと、ブースの人間が説明してくれた。ただ、まだサービス開始にはいたっていない。「10月をめどに進めています」とのことで、現在、30社ほどがコンテンツを提供希望だという。クラウド型であり、当然iPhone、スマートフォンンなどでも閲覧できる。

 中国企業「方正」も人気だった。これも、電子書籍サービスだが、なにしろ紙素材を圧倒的なスピードでデジタル化する行程は見ものである。ポータルもあり、北京大学発のIT企業とあって社長も若く、本社を蘇州に置いているが、日本のどんなニーズにも対応できるという。

 この3つ以外に、電子書籍の日本製YouTubeといえるかもしれない「mixPaper」、アメリカの「Zinio」(ジニオ)、「電子貸本Renta!」(レンタ)などが目を引いた。とくに「レンタ」は、時間を限定したストリーミングサービスだけに、電子ブックがじつは本ではないということに、改めて気づかされた。

 いずれにせよ、電子書籍の普及を見据えて多くの社が、この分野に乱入しようとしている。この秋から、日本では電子書籍戦争が激化するのは間違いない。