[062]日本衰退の真因は「英語ができない」こと。官庁(公務員)言語は英語にすべきだ! 印刷
2010年 8月 01日(日曜日) 19:49

夏休みになったので、海外から来た学生や日本の学生たちと話す機会が多くなった。私はこれまで、できる限り若者たちと接する機会をつくるように心がけ、自分が時代に取り残されないようにしてきた。とくに、電子出版という新しい分野に飛び込んだいまは、そうしないと時代について行けない。
 そんななか、最近つくづく感じるのは、日本の若者たちが日ごとに内向化していることだ。私は、自分の娘がそうしたこともあり、どんな若者にも海外留学を勧める。しかし、そうすると「なんでですか?別に日本でいいじゃないですか」と言われるので、本当にがっかりする。

 好奇心が旺盛なこと。これこそが若者の最大の長所だと思うが、最近の日本の若者にはそれがない。何でも見てやろうなんて思っている若者は本当に少なくなった。だから、まして海外留学なんて、まったく視野に入っていない。「そんなことをしたら就活に乗り遅れる」「英語がだめだから無理です」と平気で言い出すのだ。



なんと昨秋ハーバード大学に入学した日本人はたった1人

 こうした若者の内向化は、一部で話題になっているが、これが日本の将来を左右する大問題であると指摘する人は少ない。メディアもこの問題を憂いてみせるが、この現実の裏で進んでいる事態を警告しようとはしない。日本の将来を担う若者たちが内向化することは、日本という国の衰退に直結する。しかし、それはいまこの時点では見えないことだから、大問題であるという認識にならない。

 実際、日本の留学者数はここ10年で、急速に落ち込んでいる。とくにアメリカへの留学は、1997年の約4万7000人をピークに減り続け、ついに昨年3万人を割った。海外旅行に出かける若者(15〜29歳)も、ここ10年間で34%も減った。
 私が本当に驚いたのは、昨秋のハーバード大学入学者で、日本人はたった1人だったというニュースだ。中国人が約300人、韓国人が約200人も入学しているのに、同じアジアから日本人がたった1人ということは、これまでの常識では考えられないこだ。これはハーバードに限らず、全米の大学のほぼすべてで起こっていることで、日本人は本当にアメリカに留学しなくなってしまった。

 これにビックリしたのは、当の日本人より、アメリカ人。それもハーバードの学長だ。今年の3月に来日したファウスト学長は、鳩山総理(当時)に、留学生を増やしてほしいと訴えたという。
 

   

      社会実情データ図録より(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/6150.html)


TOFELの試験内容が変わったので歯が立たない

 アメリカの多くの大学は、留学生獲得のために、世界各地で、地域別にリクルーティングの説明会を開いている。私も娘がハイスクールの11年生になったときは、そういう説明会に家族ででかけた。アジア地域の説明会は、たいてい東京、ソウル、上海、香港、シンガポールなどで開かれてきた。東京では主にアメリカンクラブで開催されたが、都内のホテルなどでも開かれる。しかし、留学希望者の激減から、こうした説明会が東京で開かれる機会が減っている。最近では、東京で開かない大学も多くなった。

 大阪経済大学の佐藤英雄教授が、先日の朝日新聞「私の視点」欄で、留学生激減の理由を、TOFELの試験内容が変わったことにあると指摘していた。また、佐藤教授は、日本復活のためには、「英語圏に高校生10万人を派遣する」プロジェクトを提案している。ともかく、英語ができないとグローバルなコミュニケーションができず、日本の失われた20年の真因は、このコミュニケーション能力の喪失にあるとした点で、佐藤教授の指摘は私には納得のいくものだった。

 佐藤教授のTOEELについての指摘はもっともで、WritingとSpeakingが加わってからは、日本人学生は歯が立たなくなったという。つまり、これは、日本の英語教育が完全に間違っていることを現している。中学から大学まで何年英語をやってもできない教育を一刻も早く直さないかぎり、日本は衰退を続けるだろう。民主党政権が官僚(公務員)改革を本気でするなら、子ども手当より、中学・高校・大学の英語が話せない教師を即刻リストラすべきである。そして、小学校から本当の意味でのバイリンガル教育を始めるべきだ。
 また、日本の主だった企業は、ユニクロや楽天が始めたように社内公用語を英語にし、入社試験に英語を話す能力を必須とすべきだ。



英語ができない悔しさをこれからの若者にさせたくない


 今後も日本の若者が英語ができないままだと、韓国、中国の若者にバカにされ、世界でも取り残される。それはとりもなおさず、日本がバカにされ、どんどん衰退していくことに直結する。日本は、いまでも世界の中で、国際コミュニケーションができない国とされている。首相がコロコロ変わるより、こちらの方がよほど大問題だと思う。
 
 誤解しないでほしいのは、これは言語の問題、文化の問題ではないことだ。資本主義も、民主主義も、すべて根本は英語でできている。そして、いまの時代必要な経済知識、金融知識、IT技術、どれをとっても英語が基盤だ。したがって、英語は世界標準語なのである。英語というと、米英の言語だと反発する人も多いから、ここからは英語と書いた部分を標準語にすべて置き換えて読んでいただければ、私が言おうとすることが納得いくと思う。

 私はこれまで、なにかを本気で調べよう、最新知識に触れようと思ったときは、英語文献を必死に読むしかなかった。そうして、なんで英語をちゃんと学ばなかったのか後悔した。そんな思いを、なぜ、これからの若者にも経験させなければならないのか本当にわからない。標準語ができない、しゃべれない悲しさ、悔しさをなぜ、また同じように若者に植え付けなければいけないのか、本当に理解できない。

 グローバル時代になってから、経済と政治のパワーを進展させてきたのは、英語ができるようになった国民を持つ国家だ。この先、中国、韓国、そしてロシア、ブラジルもこれに加わってくるのは間違いないことを思えば、日本の英語教育は即刻見直すべきだ。というより、世界標準語教育をいますぐ始めるべきだ。



本当の公務員改革をしたいなら官庁も言語を英語に

 

 日本の現状を見ていてバカらしいのは、社内言語を英語(世界標準語)にしたユニクロや楽天に対して揶揄するメディアや言論があることだ。そうした声を挙げてみると、「英語ができるだけで、ほかの能力が勝っている社員より出世するのはどうか」「外国人の採用が増え、日本人の雇用が減る」「日本の文化や価値が失われる」などだろう。しかし、これらはすべて間違っている。
 とくに「英語ができるだけ……」は救いがたい意見だ。多少能力が劣ろうと、英語ができなければ話にならないし、ほかの能力があるなら英語ができなければそれを表現できないのだから、どっちにしろ、英語が第一なのである。

 というわけで、英語教育はもとより、企業の社内言語もどんどん英語にすべきだ。また、もっと大きな視点で言えば、官庁もそうすべきだろう。これこそ本当の公務員改革である。官庁の言語が英語になれば、当然、政治家もバイリンガルでなければならない。また、英語を話せない日本の首相はいらないので、管直人も小沢一郎も、圏外。そしていまメディアが繰り返しアンケート調査している「首相にふさわしい人」で名前が挙がるほとんどの政治家も圏外だ。

 このままでは、「失われた20年」に続いて、「さらに失われる10年」がどんどん深刻化するだけだ。内向きで英語が話せない若者が30代、40代となったときの日本を想像してほしい。