[063]メディアの報道は現実と乖離!新議員会館と中国が日本を買い占めるのウソ 印刷
2010年 8月 04日(水曜日) 15:24

8月3日、参議院会館に浜田和幸氏を訪ねた。
 鳥取選挙区で当選して晴れて参議院議員となった浜田氏が、日焼けしてすっかり精悍になっていたのには驚いた。改めて、今回の参議院選挙がいかに激戦だったかがしのばれた。電話で「12キロも痩せましたよ」と聞いていたが、そのとおり、浜田氏は見事にシェイプアップしてスマートになっていた。
 娘からいつも「もっとやせなよ。運動しなくちゃ」と言われて、なにもしない自分を恥じた。例年どおりの夏なら、スイミングをしたりして少しは運動するが、今年は打ち合わせで外出する以外、ほとんど家でPCに向かいぱなし。浜田氏がうらやましかった。

 「それこそ、山の奥までくまなく回って、この4カ月間休むヒマなどなかったですね」と、浜田氏。鳥取は浜田氏の故郷。そのため「選挙も地産地消で」と、中央からの応援を頼むことなく、徹底的に地に足をつけた選挙を行い、当初圧倒的に有利とされた民主党の32歳という女性候補を逆転した。ネットやメディアを活用した選挙戦(空中戦)も想定されたが、やはり地方ではいまだにドブ板選挙(地上戦)が強い。私の妻も結婚前は参議院議員の秘書だったから、そういう苦労はよくわかる。それにしても、この30年間、日本の選挙は、都市部は別として、ほとんど変わっていない。

   

 いまや「ねじれ国会」で、9月には民主党の代表選挙が控え、メディアは政局の話題ばかりだ。しかし、浜田氏はそんなことより、今後の日本に行く末を本当に心配している。

 日本が衰退を逃れるためには、国際社会における情報発信能力が、今後はより強く求められる。その能力がない政治家ばかりでは、この国は救いようがない。その点、浜田氏は国際問題に精通し、英語も中国語もできるから、なんとか外交委員会に入ってほしいと思った。
 「現在、第3希望まで出しています。外交、それに安全保障と……いずれにしても、決まるのは9月です」と、浜田氏。

 

新参議院会館のどこが豪華?報道はおかしい

 ところで、参議院会館は、この7月1日にオープンしたばかり。衆議院第一、衆議院第二、参議院と3つある議員会館はすべて立て替えらえ、従来の議員会館の隣に新装のビルが3つ立った。ニュースでは、この新しい議員会館の豪華ぶりが伝えられていたので、今回は初めて中に入るとあって、私は期待して出かけた。

 報道によると、議員会館は、議員室が応接室や秘書室、会議スペースを備えて、面積は従来の40平方メートルから100平方メートルへ拡大、ともかく広くなった。また、コンビニの「セブンイレブン」のほか、コーヒーショップの「タリーズコーヒー」やマッサージ・チェーンの「てもみん」、ビューティーサロンも入居。総事業費は衆参合計で約1700億円。ともかく、一流ホテル並の豪華さなので、「税金の無駄遣い」との批判も出ているという。

 が、私の第一印象は、どこが豪華、どこが無駄使いといった感じだった。
 入ってすぐ思ったのは、なんだ、このがらんとした殺風景な空間は!と、報道とのあまりの食い違いに不思議な気分になった。いまどき、セブンイレブンやタリーズなどがあるのは当たり前だし、5つ星ホテルなら、むしろこうした店は排除されている。エレベーターもたただのオフィスビルのつくりだし、議員室も広いが、応接室や秘書室のつくりは、ホテルなら3つ星以下だ。

    

 (左)手前から衆議院第一、第二、参議院の各会館 (中)参議院議員会館入口(右)だった広いだけの受付ロビー

 これが、国民を代表する議員に与えられた施設なのだろうか? 
 正直がっかりした。
 それにしても、メディアはなぜこんな貧弱な施設に目くじらを立てて批判するのか? どこか間違っていないかと思った。


外国人が見たら驚く日本の時代錯誤ぶり

 議員会館の建設や管理・運営に対しては、競争入札が行われ、2005年11月に、衆院は大林組グループが1107億円、参院は鹿島・清水・大成グループが583億円で落札した。そして、2008年春に着工し、2年がかりで完成した。これだけの資金と一流のゼネコンがそろったのなら、豪華といわず、現代を象徴するような最先端の施設を建てるべきだろう。

 それなのに、ただのハコものビルで、内部もなんの特徴もない。数年前、シリコンバレーでグーグルや他のIT企業のオフィスを見たときは、その斬新なつくりと内部施設に、驚きと時代の息吹を感じた。しかし、今回は本当に失望した。
 この議員会館を外国人が訪れたら、おそらく、私と同じように失望するにきまっている。そして、日本はどうなってしまったのだろうと思うだろう。

  いつも思うが、国会議事堂も古色蒼然として、いまの日本を象徴していない。内部も最悪だ。調度品は古くさく、ここが一時はハイテク立国だった日本の議会なのかと目を疑う。もはや歴史的遺産としての価値しかないのだから、外観は残して、内部は大改造すべきだろう。なんで、あんな古びた壇上で、バックにスクリーンもなく、総理が原稿を読むだけの演説をするのだろう。
 各委員会にしても、なぜ、資料のボードのパネルを掲げて質疑応答があるのだろう。パワーポイントぐらい使い、スクリーンで資料を提示するのが当たり前の世の中で、彼らはなにをやっているのか? また、席にPCを持ち込む議員など1人もいない。本当に日本は時代から大きく遅れている。



「中国が日本を買い占める」報道にあきれる


 新議員会館の報道と現実に落差があるように、最近の日本のメディア報道は、どこかズレている。帰りの地下鉄で見かけた週刊誌の車内広告に、「中国が日本を買い占める」という見出しがあった。7月1日に中国人の旅行ビザが緩和されてから、中国がまるで日本を侵略するかのような報道が相次いでいる。実際、東京をはじめとして多くの日本の不動産が、いま中国人富裕層や投資家の手に落ちている。
 しかし、中国人は日本を買い占めたりしない。日本のメディアは日本が魅力的な国だと自画自賛したい、そうして庶民の不安を煽りたいばかりに、中国脅威論的なトーンになるが、現実はまったく違う。

 浜田氏を訪ねる前日、渋谷で投資家を集めた会合があったので取材に出かけたが、そこで聞いた話は「今後は中国人富裕層、資産家の投資行動のマネをしよう。そうすれば資産防衛できる」という身も蓋もないものだった。日本人が、独自で考える必要はない。アジアのユダヤ人と言われる温州人などはお金儲けのプロだから、彼らのあとを着いていけばいいというのだ。
 では、中国人はいまどのような投資行動を取っているのだろうか?
 不動産投資でいえば、日本は二の次である。カナダ、アメリカ、オーストラリア、ドバイ、香港、シンガポールなどが第一で、その後にベトナム、マレーシア、インドネシアなどのアジアの発展国が来る。そして、その後にやっと日本だから、日本のメディアが言うように中国マネーが日本だけを狙っているように報道するのは過剰反応というものだ。

いまや東京の不動産は上海よりも安い

 中国はかってインバウンドの国だった。海外資本は人民元に転換され中国国内に投下された。しかし、いまや中国国内で溢れた人民元が海外にアウトバウンドしてる。結局、海外から投資されたマネーが回り回って溢れ出しているのだ。中国政府はこれまで人民元のオフショア市場を認めなかったが、いまや容認に動いている。来年には香港で人民元の兌換市場ができる。こうなると、人民元は国際兌換通貨となり、チャイナマネーはさらに世界に溢れ出すだろう。

   香港で人民元取引の可能性を伝える「サウスチャイナ・モーニングポスト」

 上海ではこの10年間に不動産価格は3〜4倍になった。そのため、都市部のコンドの価格は、いまや投資対象にならない。もはや天井に達したと考えていい状況だ。ところが、東京を見ると、2ベッドルーム100平米クラスの物件なら、なんと4、5000万円からある。ということは上海より価格的に手頃なのだ。それに気がついた中国の富裕層が、「上海より安い」と、日本の不動産に手を出すようになったのが、「中国が日本を買い占める」の真相だ。
 アジアの不動産は、いま香港がいちばん高い。続いてシンガポール。東京はその次ぐらいだったが、もう上海に抜かれた。不動産の価格は、現地の購買力平価と合わせて考えなければならないが、そこから見ても中国人にとって東京は安く感じるのだろう。バブル期の日本で不動産価格が高騰し、その力を持ってジャパンマネーが海外の不動産投資に向かったのと同じ構図だ。

 しかし、ジャパンマネーは世界を買い占められただろうか?

 一時期はロックフェラーセンターまで買ったジャパンマネーは、バブルの崩壊とともに世界中から引き上げざるを得なくされた。同じく、いずれ中国もスローダウンするか、国内バブルの崩壊に見舞われるに決まっている。どんなに頑張っても、人民元は切り上げられ、中国の輸出力が衰える局面がやってくる。それは歴史を見れば必然だから、日本を買い占めるなどと荒立てて騒ぐ必要があるだろうか? それにしても、ここ数年、ハゲタカファンド、三角合併など、日本のメディアは海外の脅威を煽るような報道ばかりしてきた。そのたびに、日本は国を閉ざし、鎖国化、ガラパゴス化が進んでしまった。
 国内問題である消費税、財政再建なども、論点を掘り下げないから、政治は空洞化し、政局ばかりになってしまった。
 今年の夏は異常な暑さだが、日本経済は冷え込んだままだ。