[064]なんと中国は、新聞発行量は世界第1位、電子ブック出版は世界第2位の巨大市場 印刷
2010年 8月 13日(金曜日) 02:51

 中国メディアが、8月10日に行われた中国新聞出版総署の柳斌杰署長による新華社記者の独占取材の内容を伝えている。それによると、現在、出版、新聞業、ニューメディア、印刷、発行などを含む新聞出版の上場企業は41社に達し、時価総額は2900億元(約3兆6700億円)、成長は著しいという。なんと、この上半期に新聞出版業は2桁の成長を記録しているというから驚きだ。ただ、問題点は多く、今後は国有出版企業の「連携・合弁・ドッキング」を奨励し、許容できる範囲で非公有資本(民間資本)の参入を奨励するという。

 北京政府発表の数字をそのまま鵜呑みにすることはできないが、中国のプリントメディア市場は、欧米や日本と違って年々成長を続けている。先月27日に、中国新聞出版総署が発表した報告書によると、中国の2009年の新聞・出版業の産出額は1兆元(約12兆8000億円)を超え、付加価値額は3000億元(約3兆8000億円)を上回っている。この報告書では、「新聞・出版業が文化産業ひいては国民経済において重要な位置を占めるようになった」ことが強調されていた。

 こうした背景の下に今回のインタビューが行われたわけだが、驚くべきことに、中国のプリントメディア業界の現状は、いまや世界一である。柳斌杰署長もこのことを強調している。

  

  ●中国の図書品種、印刷総数は世界第1位 ●中国の新聞発行量は世界第1位
  ●電子ブックの出版は世界第2位 ●印刷総額は世界第3位
 

 というわけだ。
 こうした市場をつくっている中国のプリンントメディアは、出版グループ29社、新聞業グループ49社、定期刊行物グループ4社、国有発行グループ24社である。

 同氏によると、中国は今後「3つの大規模」を建設しなければならないという。
  1、世界トップになる大規模出版グループを建設すること
  2、大規模印刷サービスグループを建設すること
 3、大規模発行・物流グループを建設すること
 つまり、現在、バラバラに成長してきた新聞・出版グループを合併・連携させ、世界規模のメガメディア企業をつくろうというのだ。すでに、この動きは始まっていて、中国の各省では、かなりの再編が進んでいる。だから、今後は、こうした省ごとの縛りもなくしていこうということらしい。それには、民間資本の導入も、許容範囲内でどんどん認めていくということなのだろう。

 また、中国のプリントメディアは、世界進出も進めている。この7月20日には、ついに日本進出を果たした。約2年の準備期間を経て、中日合弁の出版社・中国出版東販株式会社が設立されている。
 この新会社は中国出版集団公司、中国図書進出口(集団)総公司、日本の書籍取り次ぎ大手・トーハン、株式会社中国メディアが共同出資して設立したもの。中国出版と中国図書の2公司はすでに、シドニー、パリ、バンクーバー、ロンドン、ニューヨーク、フランクフルト、ソウルに進出、英語、フランス語、ドイツ語、日本語、韓国語の5カ国語からなる出版態勢を整えている。

 今回の日本進出では、中国語書籍の翻訳・出版、中国をテーマとした日本語書籍の共同出版、日本での中国語書籍・新聞・雑誌・音響映像(AV)製品・電子出版物の販売を主要業務とすると、発表されている。

 さて、中国のプリントメディアといえば、検閲や中央コントロールの問題が話題になり、民主主義や報道の自由の問題と絡められてばかり語られるが、その市場たるはすごい規模に達している。だから、最近は日本の企業も中国のケータイ配信市場などで、電子ブックを売り込もうと必死になっている。ただ、いくら市場規模が大きくても、中国はコンテンツ提供側にとっての旨味のない市場だ。

 先に紹介した報告書によると、中国の新聞・出版業は、商品構成や産業構造が不合理といった問題を抱えている。全業界のうち書籍、新聞、定期刊行物、CD・DVD、電子出版物、デジタル出版物などの産出額が占める割合は 19.7%、付加価値額は25.3%、営業収入は19.9%となっているが、その一方で、営業収入のうち、著作権関連の貿易やサービス、コンテンツの企画・制作・提供などの業務収入が占める割合は0.1%に満たないのである。

 ようするに、中国はいまだに海賊版天国で、パクリも横行。著作権者はほとんど利益が得られない構造になっている。なにしろ、ハリウッドの新作映画は公開されるやいなや海賊版DVDとなって、7元(約100円)で手に入る。
 じつは、私もこの恩恵に預かっていて、「Alice in Wonderland」や「Where The Wild Things Are」なんかは、このDVDで日本公開前に見てしまった。中国から帰ってくる知り合いから、毎回のようにお土産でもらうからだ。プリントメディアにしても同じで、海賊版書籍の天国状態は続いている。
 だから電子ブックも同じ。中国でネットの課金モデルが成功するなんて日が来るのだろうか?


  

  中国のiPadと言われる汉王科技(Hanvon)タブレット型ノートPC「BC10C」
 

 電子ブックでいえば、中国の3大通信キャリアのうち、中国移動(CHINA MOBILE)、中国聯通(CHINA UNICOM)はすでに参入。最後の1つ、中国电信(CHINA TELECOM)も電子書籍のプラットフォームを構築して、今月から市場へ参入した。しかしいったい、どうなるのか? いまのところ、誰にもわからない。