[067]マカオから発展する東シナ海経済圏を考える 印刷
2010年 10月 13日(水曜日) 01:57

 1ドル=81円という記録的な円高が続くなか、日本経済は低迷し、アメリカもヨーロッパも低迷を続けている。ところが、アジアの経済成長は止まらない。とくにマカオのここ数年の成長は目を見張るものがある。カジノと観光が牽引する経済だが、いまだに5つ星ホテルやエンターテイメント施設が建設ラッシュ中で、行くたびにその変貌ぶりに驚かされる。

 いま人気なのは、マカオの新しいエンターテイメントスポット「シティ・オブ・ドリームズ」で、9月半ばから始まった「ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター(The House of Dancing Water)」。水を使ったアクロバットとスタントのショーだが、じつはラブストリー仕立てで、光と噴水のショーは幻想的であり、ステージ上のダンシングも美しい。
 評判は上々、連日満員だ。

 



 マカオのカジノ監督当局、澳門博彩監察協調局(GICB)が、このほど明らかにしたところによると、マカオのカジノ運営6社の9月の収入は153億パタカ(約1600億円)で、1-6月(上期)のマカオのカジノ収入の伸びは景気回復に後押しされて67%に達している。この結果、カジノ運営各社の株価はNY市場でも上昇を続けている。

 最近のマカオは圧倒的に中国人が多い。「ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」の客席も3分の2は中国人だ。もちろん、どこのカジノもいまは半数以上が中国人客。
 尖閣問題で日中間がギクシャクしているなか、同じテーブルで日本人、中国人がギャンブルを楽しんでいる光景を見ると、ここはまったくの別世界に思えてくる。

 北朝鮮では権力継承が進み、金正恩がリーダーの座に就くことが決まったが、その兄で金正日総書記の長男・正男は、マカオに住んでいる。北京にも本妻と息子が住む邸宅を持つが、マカオにも第2夫人と息子がいる。そんな正男が、メディアに「権力三代世襲には反対」と述べているから、これもまた不思議な光景だ。


 マカオ航空(NX)は、この10月31日から、日本の国内線での全日空とのコードシェア便を拡大し、日本の地方観光客誘致に乗り出した。対象路線は福岡/成田線、仙台/成田線、沖縄/関西線の3路線。また、9月にはマカオ観光局が日本のメディアの招待プレスツアーを実施、現在、日本の多くのメディアにマカオの新しい側面を描いたパブリシティ記事が掲載されている。

 2016年、マカオと香港を結ぶ大架橋の建設が予定されている。このままいけば、マカオ、香港、珠海、深圳、広州などの都市を含む珠江デルタは、2020年には日本の東京都市圏を抜き、世界最大のメトロポリタンエリアになるだろう。すでに台湾は、上海を中心とする長江経済圏、珠江経済圏に飲み込まれている。
 そうなれば、沖縄も尖閣もいまのままのポジション、考え方で存在することは難しい。東シナ海の経済圏全体を見渡した新しい視点で考えていかなければ、日本の将来は見えてこない。現在の日本の言論や政府には、こうした視点が決定的に欠けているように思う。