[072]ウィキリークスによる情報漏洩はそんなに大問題か? 茶番劇ではないのか? 印刷
2010年 12月 10日(金曜日) 11:53

内部告発サイト「ウィキリークス」(Wikileaks)関連のニュースが続いている。漏洩情報の紹介記事が一段落したら、ウィキリークス支持派と反ウィキリークス派の「サイバー戦争」をメディアは面白おかしく伝えている。しかし、考えてみれば、ウィキリークスはこれまでたいした情報を流していない。ほぼ全部、アメリカの外交公電だ。いかにも重要な情報に見せかけて、出てくるのはインテリジェンスとは言えないレベルの、ただのインフォメーションではないだろうか?

 じつは、このウィキリークスの正体を暴く暴露本が、ドイツで出版される模様だ。本の内容が楽しみだが、ウィキリークス内部でも、情報の操作が行われているのは間違いないと思える。

  『Inside Wikileaks』は予約受付中

 ウィキリークスの情報リークは、今回で2回目。最初は7月末。その時は約9万ページの戦闘ログ(記録)だったが、今回はそれを上回って、なんと約40万ページが、ウィキリークスのサイトに上げられた。
 日本関係を見ると、
・韓国当局者が駐韓米大使に対し、北朝鮮の金正日総書記の死後2、3年で体制が崩壊すると伝えた
・中国の2高官が韓国外交通商省第2次官だった千英宇氏(現大統領外交安保首席秘書官)に対し、「朝鮮半島は韓国のコントロールで統一されるべきだ」との見解を示していた
・中国の何亜非外務次官が北京の米大使館当局者に対し、日本を国連安全保障理事会の常任理事国とすることへの反対を伝えた
 などだが、これのいったいどこが機密なのだろうか。この程度の話なら、国際情勢のウッチングレベルではないだろうか。


 前回のときは、イラク戦争のネタが中心で、
・イラクの警察隊や兵士が行った暴行、レイプ、殺人などが組織的に行われていた場合でも、これを米軍は調査しない方針をとった。
・これまで知られていなかった、1万5000人以上のイラク人市民が亡くなっていた。
・米英当局は、イラク民間人の犠牲者数は公式な記録をとってないとこれまで主張してきたが、実際には記録が残っていて、10万9000人のイラク人の死者がいて、この中の約6万6000人はイラクの民間人だった。
 と、まだ少しは衝撃的だったが、まったく知られていないレベルの機密ではない。

 となると、これまで各国とも、外交機密が漏れたことに対して神経を尖らせ、ウィキリークスを非難してきたのは、ポーズに過ぎないだろう。
 そのせいか、これまでもっともばからしく聞こえたのは、日本でも前原誠司外相が11月30日の記者会見で、ウィキリークスを激しく非難したことだ。
「言語道断だ。勝手に他人の情報を盗み取って、勝手に公開する犯罪行為だ」
 この人は、本当にインテリジェンスがあるのだろうか? これが表向きのポーズならわかるが、そうでないなら深刻な問題だ。

 今回の件で同じくみっともなかったのは、『New York Times』(NYT)。11月29日付の紙面を「ウィキリークス外交公電」記事で埋めているのに、そのソースを「もともとはウィキリークスだが、われわれは独自の情報源から匿名を条件に入手した」と説明していた。
 ところがそのソースはどこかというと、英『Guardian』だった。
 これを勘ぐっていくというか、明らかなのは、NYTがワシントンの御用新聞であるということだ。

 今回の件で、メディアは情報の漏洩先探しにも力点を置いたが、より重要なのは情報漏洩の背景だ。そのほとんどが、世界情勢になんの影響もないゴミ情報であったことを思うと、こちらのほうが重要だ。
 膨大な外交公電を事前に入手した欧米メディアは、過去数週間にわたり、どこを公表すべきでどこを公表すべきでないかなどについて、掲載前に議論を尽くしたというが、本当だろうか?
 
 今日までの経過を見ると、本当に暴露すべき情報(インテリジェンスレベル)がないとなると、ウィキリークスの背後にはなにかあると考えるのが自然だろう。たとえば、イスラエルに不利になるような情報はまったくない。代表者アサンジュ氏の指名手配などは、茶番劇の可能性もあるだろう。
 日本の尖閣ビデオ事件も報道は一段落してしまい、本当に個人の行為だったのかどうか追求されなくなった。

 
 ところで、『Guardian』のサイト(guardian.co.uk)によると、来年1月27日にドイツの出版社Econ Verlagがウィキリークスの内部暴露本『Inside WikiLeaks』を発行するという。著者ののDaniel Domscheit-Berg氏は、アンサンジュ氏に次ぐナンバー2の人物で、ウィキリークスではスポークスマンも務めていた。同氏は今年の9月に、ウィキリークスを辞めている。アンザンジュ氏に権限が集中して独裁者化してしまい、ウィキリークスの運営には透明性が欠けてきたからだとか。とすると、ウィキリークスの正体はいったいなんなのだろう?