[073]発売2日で68万部!水嶋ヒロ小説。「クズ本ほど売れる」を実証した販売戦略 印刷
2010年 12月 20日(月曜日) 03:17

水嶋ヒロ(26)は自身の名前を伏せて応募しており、ポプラ社側も受賞が決まるまでは、応募者である齋藤智が水嶋ヒロだと知らなかった。ちなみに応募名の齋藤智は本名の齋藤智裕から取ったもの――というストリーを本当だと思っている人間はどれほどいるだろうか?

  第5回ポプラ小説大賞受賞の水嶋ヒロの処女小説「KAGEROU」が飛ぶように売れているという報道が続いている。なんと予約注文は43万部! 発売2日目には25万部増刷されて発行部数が68万部に到達したという。

  もし、これが事実なら、今回の販売戦略は画期的である。というのは、作品がクズほど売れるということを見事に実証したからだ。普通は「いい本」「いい作品」が売れる。文学的価値は別にして、売れる作品にはそれなりの理由がある。しかし、今回に限って、その理由は「作品が箸にも棒にもかからないほどひどい」ということに尽きるからだ。

  アマゾンのレビューは5段階で作品を評価しているが、星1つという厳しい評価が圧倒的多数を占めている。どのレビューも、はっきり言ってボロクソだ。

 ということは、購入者は「どれだけひどいか確かめたくて本を買った」ということなのだろう。そうしてレビューを書いて再確認したということだ。

      

  それにしても、今回の受賞が出来レースなのは、ほぼ誰もがわかっていた。また、作品自体も文学などと呼ぶにはおこがましいクズ小説だと、初めからネタばれしていた。それを報道するマスコミもバカバカしいと思っていた。それでも、この結果ということは、やはりすごいと言うしかない。

  これまで話題づくりのために、既成の文学賞でもある程度の出来レースはあった。しかし、賞としての価値を保つためにそれなりの作品が選ばれてきたが、今回ばかりは、クズのまま出版してしまった。文学とか活字文化を考えたら慎むことをやってしまった。

  しかも、この本は「書店責任販売制」を採用した。これは、売れ残れば仕入れ値と同額で返品できる通常の委託販売とは違い、書店のマージンは増えるが返品はできない。書店にとっては、予約した冊数が必ず入荷されるという利点があっても、売れ残れば大きな損失を抱えるリスクもある。

  まさに、話題をつくって売ったほうの作戦勝ちである。

  というわけで、今後はどれだけ売れ残るかが注目だが、早くもネットオークションでは大きく値崩れしている。ヤフオクではすでに200以上出品されていて、“バナナの叩き売り”状態になっている。価格も500円以下に突入している。話題に便乗して買ったが、期待通りの「クズ」だったから、早く売り逃げしてしまいたいということなのだろう。