[079]ついに「ボーダーズ」が連邦破産法を申請し倒産。紙の時代は終わるのか? 印刷
2011年 2月 12日(土曜日) 20:19

アメリカの書店チェーン第2位の「ボーダーズ」(Borders Group)が、週明けの14日にも米連邦破産法Chapter11の適用申請を行うという。「ウォールストリート・ジャーナル」などが、いっせいに報じている。ボーダーズの倒産は、昨年の秋からずっと囁かれてきたが、ついに現実になってしまった。

 ボーダーズは、ミシガン大学アナーバー校の学生が1971年に創業した書店で、1992年にKマートに買収された。Kマートは、すでに1984年にワーデン・ブックスを買収していたので、これで2つの書店グループは統合され、名前も「ボーダーズ・ワーデン・グループ」(Borders-Walden Group)となった。その後、この書店チェーンは「ボーダーズ・グループ」として独立し、拡大に拡大を重ねてきた。アメリカでは、1990年代から書店が大型化し、国内はもとより海外まで進出するようになった。しかし、2000年代半ばになると、書籍のデジタル化が進み、いまのアメリカは日本と違って、完全な「電子書籍時代」に入ってしまっている。

 

  ボーダーズの業績が悪化したのは、このような流れが読めず、拡大路線を続けたからだ。ボーダーズは、国内の書店数を2000年からの6年間で、290店舗から499店舗、国外の書店数を2001年の22店舗から73店舗まで増やしている。ボーダーズは、書籍のオンライン販売にも興味を示さず、オンライン販売に関しては、アマゾンにまかせきりにしてきた。そうすることで、「われわれのやるべきことに集中できるようになる」と、旧来型の大型書店チェーンの拡大・維持を続けてきた。

  しかし、業績の低迷から、2010年6月、「iPad」が発売されて2カ月後、ついに独自の電子書籍リーダー「Kobo」(コボ)を発売して、電子書籍市場に参入した。が、やはり手遅れだった。電子書籍リーダーは「Kindle」の一人勝ちで、すでに市場に隙間はなかった。

 

  ハワイにいるときは、私は家族とよくボーダーズに行った。1990年代の半ば、ホノルルでは、ワードセンター内に「ボーダーズ・ブックス・ミュージック&カフェ」がオープンし、私たちはそれまでよく行っていたワイキキの「ワーデン・ブックス」からくら替えしてボーダーズに通った。ここは、当時のホノルルでいちばん大きな書店で、なにより児童書が充実していた。もちろん、ビデオもDVDも大量に置いてあった。

 カハラモールには「バーンズ&ノーブル」があったが、そちらよりワードセンターのボーダーズによく出かけた。行くと私は、娘と家内が本やビデオを探している間、きまってNYTのベストセラーリストにある本を持ってカフェに行き、コーヒーを飲みながら待った。

  大型書店にカフェが併設され、そこで本を読みながらくつろげる。そんな時代は、もう過去のものになった。

   

  ホノルルのワードセンターにある「ボーダーズ」

 ボーダーズの、負債総額は10億ドルを超える見通しで、破産法申請後も営業を続けるというが、約670カ所ある店舗のうち200店舗は閉鎖されるという。約2万人の従業員も数千人規模で削減するという。ボーダーズは、2006年1月期以降、5期連続で純利益が赤字で、結局、一度も業績が回復することはなかった。

  ボーダーズの倒産は、紙の書籍の時代が終わりを告げるということを意味しているのだろうか?

  私は来月、文藝春秋から『出版大崩壊』(文春新書)というタイトルの本を出すことになった。このなかで、ボーダーズの危機についても書いている。この本の主旨は、電子出版時代を迎え、既存のプリントメディア(とくに出版界)がどうなっていくのかということにあるが、自分の体験も踏まえて、かなり突っ込んで現在の状況を描いている。

興味のある方は、ぜひ、読んでいただきたい。

 

      『出版大崩壊 電子書籍の罠』(文春新書 3月18日発売 800円)