[100] 世界同時不況に突入!今後「2番底」は確実。いまは超円高だが、それでもドルとアメリカは復活するだろう 印刷
2011年 8月 10日(水曜日) 20:38

世界経済はどうやら「二番底」に向かい出した。米議会で2日に成立した政府の債務上限の引き上げ法で、財政赤字削減策の総額が2兆4000億ドルにすぎなかったことから、投資マネーの大移動と、株の失望売りが始まった。この流れを加速させたのが、5日、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、米国債の格付けをAAAからAA+に引き下げたこと。

   以来、世界は同時株安とドル安、ユーロ安が進み、今日10日なってやっと下落に歯止めがかかった。しかし、この先、景気が上向くことは考えられず、なによりその影響をもっとも受けるのは、この日本だろう。この1カ月あまり、世間を歩いての実感は、日本の景気が相当悪化していることだ。まさに、震災大不況が到来しているといっていいと思う。

    

 

 

ついにやってきた「震災大不況」、復興などしなくてもいい

 

  震災大不況がやってくることは、震災直後から予想できた。なにより、政治がまったく機能しないのだから当然だ。復興が単なるスローガン倒れに終わるのは目に見えていた。ただ、マスコミも識者も、世間のムードに水を差すのを恐れて、これを指摘してこなかった。復興政策や脱原発が、日本全体を貧困化させる経済政策より優先されていいわけがない。場合によっては、東北の復興などコストがかさみすぎるので、後回しにすべきだった。

  被災した地域をもう一度つくりなおす意義などない。かえって放置してしまったほうが、被災者のためにも、日本のためにもよかったはずだ。しかし、そんな議論はこれまで一度も起こらなかった。

  あと1日で、震災から5カ月になる。機能しない政治をいいことに、菅直人首相はなにもしないまま居座り続けてきた。ただ、今日、「公債発行特例法」の衆議院通過の目処がたったので、首相退陣の3条件は「エネルギー特別措置法」だけとなり、にわかに退陣ムードとなった。しかし、首相が交代しようと、日本経済は今後どん底に向かって進んでいくだろう。

  首相が代わろうと、万が一総選挙になって政権交代が起ころうと、日本がすべきことは、財政赤字の大幅な削減と思い切った金融・経済刺激政策と金融緩和、そして、グローバル経済に適応した「開国」政策以外にない。しかし、それをやろうとする政治家もいないし、官僚もいない。

  民主党では後継に野田佳彦財務相を選びそうだが、彼は大胆なことができる人物とは思えない。なにより、財務省が掲げる「増税路線」をそのまま認めている。

 

まったく無益な円高阻止の為替介入

 

  これだけ円高になれば、企業は国内から脱出するしかない。日本経済より、自社の存続のほうが大事だ。日本に居続ければ、株価は暴落し、社員も株主も不幸になる。じつは円高は、大震災後の日本経済には好機ととらえることができる。自国通貨高は購買力のアップにつながるのだから、今後、脱原発を進めるなら、必要な石油やLNGなどをどんどん買い占めればいい。円高のおかげで将来値上がり確実な資源が、いまなら安く買える。外貨準備金を投入して円安誘導しても焼け石に水の効果しかない。それをわかっていてそれをするのは、本当に愚かな行為だ。

  今回の為替介入での野田財務相の記者会見を、世界の投資家は嗤っている。無理やりドルを買い支えているのだから、単にアメリカに貢ぐ行為としか見えないからだ。

  日本の外貨準備の額は復興に必要とされる20~30兆円を軽く上回って、約90兆円はある。しかも、財務省はこれをTB(短期国債)で運用している。なぜ10年債にしないのか?短期では平均利回りは3%ぐらいにすぎず、10年債で得られる5%ほどに比べると、あまりに愚かなやり方だ。

  さらに言えば、外貨準備金の外国為替資金特別会計は、一般会計ではない。国会の審議、議決を経ないで内閣・官僚が勝手に使えるおカネだ。今回の介入では、約4兆6000億円がつぎ込まれている。しかし、これは単にアメリカに貢いだだけで、なんの効果もなかった。円相場をいったんは80円台に戻したが、それもたった1日で終わった。東日本大震災で日本全体が危機に瀕し、国民生活も窮乏しつつあるなかで、なぜ、ざるに水を注ぐような杜撰なおカネの使い方が許されるのか?野田財務相と財務官僚に説明してもらいたい。

 財務省はこういうことを平気でやり、しかもこの先、増税して財政を再建しようというのだから、この役所は国民にとっては「罪務省」と言うしかない。

  いまベストセラーになっている『日本中枢の崩壊』(古賀茂明・著)を読めば読むほど、暗い気分になる。

 

イギリスの暴動は日本の未来の姿ではないか?

 

  イギリスでは6日から、各地で暴動が起こった。このため、ロンドンは厳戒態勢が敷かれ、9日には警察官が1万6000人も動員された。マンチェスターやバーミンガムなどでは、9日も暴徒化した群衆と警官隊が衝突したほか、放火や略奪が相次いでいる。今回の暴動で、これまでに685人が逮捕されたほか、死者も出た。

  この暴動の背景には、英国社会の貧困化、二極化がある。英国の失業率は若年層では20%を超えている。財政赤字の削減のためキャメロン首相が進めた緊縮路線で、こうした若者層の不満が爆発した。ワーキングクラスに職がなくなり、ぶらぶらするしかない若者が暴徒化した。テレビ画面では黒人などの暴徒が多く映っているが、これは彼らに罪をなすりつけるためのすり替えだ。

  イギリスの若者の姿は、日本の若者の明日の姿だ。

  日本の失業率は現在4.5%だが、この数字はわざと低くされている。まず、今回の震災で岩手、宮城、福島での調査が困難となったため、カウントされていない。次に、雇用調整金による企業内の潜在失業者がカウントされていない。さらに、増え続けてついに200万人を突破した生活保護対象者もカウントされていない。

  そこで、これらをすべて加えると約600万人が失業者となり、10%を軽く超えてしまう。若年層となるとさらに跳ね上がり、20%近くなるはずだ。この若年層の失業率は、今後どんどん上がる。なにしろ、空前の就職氷河期が訪れていて、今年の6月時点での大卒者の内定率は49.2%と、半分に達していない。これに、今後は震災大不況の影響が加わること考えると、暗澹たる気分になる。

 

中国の新幹線事故をバカにしてもなんにもならない

 

  中国の新幹線が事故を起こしたのは、2週間ほど前のことだった。このときの日本のメディアの報道を見て、私はいやな気分になった。どのメディアも「それみたことか」と、日本人として溜飲を下げたという気分でしか報道しなかったからだ。

  中国の新幹線は確かにひどい。独自技術などなく、単に政府の威信のためにつくられ、人命など軽視している。しかし、今回それが明らかになったことで、彼らは今後、死に物狂いで改良、改善を進めてくるだろう。そうすれば、本当に日本の新幹線を凌駕する日が来るかもしれない。

   中国を見下し、いつまでも中国人を甘く見ていると、そのうち日本は取り返しのつかないところに追いやられる可能性がある。これは、新幹線だけの話ではない。中国はいまや日本企業の生命線だ。中国経済はインフレが止まらず、すでにバブル崩壊の兆しがあるが、ここで崩壊してしまうと、その被害をもろに被るのは日本になる。中国バブルはソフトランディングしてもらわないと、困る。

 

アメリカがこのまま衰退してもいいことはなにもない

 

  リーマンショック以後、日本ではアメリカ型の資本主義、金融のあり方が否定されるようになった。また、グローバル経済に対しての批判も強くなった。アメリカばかりかEU経済も惨憺たることになったので、一気に欧米至上主義は崩壊した

  しかし、ここで間違えていけない。ドルが凋落し、アメリカによる一極支配構造が崩れようと、アメリカは衰退しない。アメリカはそんなヤワな国ではない。いまでも、アメリカは世界最高水準の教育と潜在能力を持ち続けているから、いずれ必ず復活する。それに、アメリカ人は世界のどの国民より楽観的だ。

  日本のメディアや識者は、アメリカも中国も嫌いで、アメリカ型の新自由主義経済を批判し、中国のできそこないの社会主義市場経済も批判し続けてきた。どちらも、やがて行き詰ると言い続けてきた人々は、いまや予想が当たってウケに入っている。しかし、そのとばっちりをもっとも大きく受けるのは、この日本だ。 今回の「二番底」世界不況は、前回がリーマンショックによる民間経済の危機だったのに比べ、政府債務による国家経済の危機だから、資本主義体制の崩壊と見る向きもある。前回は、民間の債務が政府債務に置き換えられたが、今回は置き換える主体がない。

  また、基軸通貨ドルの凋落によって、ブレトンウッズ体制の崩壊と考える向きもある。しかし、いまのところドルに代わりえる基軸通貨は世界にはない。第一次大戦後ポンド・スターリング体制が崩壊してドルがその座を獲得するまで、世界は混乱が続いた。ふたたび、そうした時代が訪れるのだろうか?

  とすれば、それを解決するには、全世界的な知恵が必要になる。ではその力があるのはどこか? やはりアメリカ以外には考えられない。多極化による国家間の集団体制が確立され、その秩序のなかで各国経済が維持されていくという道はあるかもしれない。しかし、現状ではすぐにそうなるとは考えにくい。やはり、アメリカを復活させるほうがマシだろう。

 

 

ドルとアメリカに賭けるか?円と日本に賭けるか?

 

  いまここで、アメリカ経済とドルの衰退に賭けるか、日本経済と円の衰退に賭けるかの2択の賭けがあれば、私は間違いなく前者に賭ける。日本人なのに日本に賭けられないのは無念だが、これは愛国心の賭けではない。現在の政策が続けば、どうみても長期的には日本経済は衰退し、円の力は衰えるだろう。ギリシャやポルトガルの例を見れば、いかに財政赤字が深刻な問題かは明らかだ。GDPの2倍もの債務を持つ国家が簡単に復活できるはずがない。いかにアメリカの財政赤字が大きかろうと、債務はGDPの範囲内だ。

 

  私は投資家ではない。投資するようなおカネは持っていない。でも、もし円かドルかどちらかを選べと言われたら、躊躇なくドルを選ぶ。長期的なことを考えると、円を持っていることが不安でたまらない。この一時的な円高のうちに円をドルに替えてしまおうという、富裕層や個人投資家たちの心理を否定することはできない。短期的な投機は別として、彼らの見方は間違っていないと思う。

  FRBはゼロ金利を2年間、2013年半ばまで続けると発表した。これに併せてさらに第3の金融緩和策も実施されるだろう。つまり、あと2年間、世界は不況に喘ぎ、世界各国は「借金との戦い」を続けることになる。この泥沼からどこが先に抜け出すのかはわからない。しかし、日本でないことは確かだ。

  日本ではまだ本格的な借金との戦いが始まっていない。民主党の「子供手当」「高速道路無料化」などのばらまき政策は崩壊したが、今後も政治家はカネもないのに「これをやる」「あれをやる」というウソをつき続けなければならない。

 

すべてが先送りされてきた日本で暮らして幸せか?

 

  最近つくづく、日本でこのまま暮らしていって幸せなのか?と思うようになった。

 この20年間、私たち日本人は、衰退するだけの国で生きてきた。経済も政治もまったく不振で、状況は悪化するばかりなのに、なにもかもが「先送り」されるなかで、黙って暮らしてきた。こんなふうに言うと、「そう思うのはお前だけだ」と反論されるが、私の正直な実感はこの通りだ。

  日々の自分の生活は別として、日本と日本人という大きな枠組みで考えたときは、いつも暗い気分になり、スカッとすることはあまりなかった。実際にも、この20年間は生活は向上せず、苦労ばかりが多かった。

  まあ、それはそれで仕方ないとしても、若者が将来の希望を持てないということに対しては、本当に情けないと思う。

  この猛暑のなかでも、就活を続けている学生の姿を見かける。電車に乗ると、黒いリクルートスーツ姿の女子学生が汗をふきながら乗ってくることがある。バッグのなかに資料をいっぱい入れ、ケイタイで訪問先の企業の場所を確認している。

  政府はまず、この国の経済を成長させ、そのうえで、いかに雇用をつくりだすかを最優先に考えるべきだ。