教育[002]「なぜ日本人は英語ができないのか?」の真相 印刷

 英語ができないのは「自己責任」ではない

 よく、英語ができなくて自己嫌悪に陥る人がいる。あるいは、英文科を出たのに英語が話せない女子大生をバカにする人がいる。このどちらも、最悪である。なぜなら、日本人が英語を話せないのは、いまはやりの「自己責任」ではないからだ。

 中学、高校、大学と10年間も英語の授業を受けた。それなのに、話せない。かくいう私もそうだった。だから、自分が話せないのは、自分のせいだと思いがちだが、そんなことはない。

 では、日本人はなぜ英語が話せないのか? 

  これは、何十年も論争されてきたことだが、その本当の答えを書くと、じつにあっけない。また、これがわかれば、日本人は英語が話せないだけでなく、「読み書きはできても話せない」ということも、ウソだとわかる。

 日本人は、まったく英語ができないのだ。その理由は、英語教育を受けていないからである。これが、正真正銘の「真相」である。「そんなバカな。少なくとも、学校で勉強させられただでないか」と言う人もいるだろう。しかし、あれは、英語教育ではない。

 本当の英語教育を受ければ、英語で考えることが可能になる。少なくとも、頭の中に、英語の文が、1行、2行、3行……と浮かぶ。しかし、日本の英語教育では、1行すら浮かばず、単語さえも出てこない。私もそうだったから、このことはよくわかる。2行、3行と浮かぶようになるのは、英語を洪水のように浴びたあとである。

 

10年間というのは「数字のトリック」にすぎない



 では、ここで、なぜ、日本の英語教育が英語教育ではないか答えよう。それは、まず、圧倒的に時間数がたりないからだ。そして、その少ない時間数でのなかでやっているのは、「日本語で英語を教える」ことだからである。

「バカ言うんじゃない。中学、高校、大学まで入れたら、いったい何年勉強していると思っているんだ。10年間だぞ。これで、できないんだから、日本人はよほど英語に向かないか、英語そのものが難しいのだ」
 と、言う人がいる。 しかし、こういう人は、じつは「10年間」などという時間のトリックに騙されているのだ。

 ここで思い出してほしいのだが、中学でも高校でも、英語の授業はほぼ毎日あった。しかし、それはたいてい1時間だけ。しかも、ほとんどを日本人教師が日本語で教えているので、これは英語の授業ではない。では、この授業を、文科省がやっと「英語の授業は英語で」という方針をうち出したので、全部英語でやったと仮定してみよう。

 そうすると、週に7時間が英語を聞いたり話したりする時間になる。しかし、これは、言語を学ぶには圧倒的に少ない時間だ。考えてもみてほしい。これを1年間続けたとしても、1年52週として、7時間×52週=364時間にすぎない。これは、日数にすれば、364日÷24時間だから、わずか15日ほど。つまり約2週間である。



日本の英語教育は時間数が圧倒的に足りない



 約2週間、朝から晩まで英語漬けなら、話せるだろうか? 話せるわけがない。もちろん、英語の授業は1年間だけではない。中学、高校、大学と10年間ある。しかし、英語漬けを10年間を続けたからといっても、20週間、たったの5カ月だ。

 普通、留学生が英語漬けの生活を始めて、なんとか英語がわかるようになるのには、早くて半年はかかるとされている。つまり、中学、高校、大学と10年間も英語をやったからといっても、それではまったく足りないのだ。

 結局、日本人が英語ができないのは、この時間数の不足が決定的であり、英語が難しいわけでも、また、英語と日本語の言語構造lの問題でもけっしてない。だから、自分を責める必要などまったくない。

 責めるならこんなバカげ多た英語教育とは呼べない教育を、何十年もやってきた文部科学省以外にはない。