G1予想[106]第47回スプリンターズステークス (2013年9月29日) 印刷
2013年 9月 28日(土曜日) 03:30

  いよいよ、秋のG1戦線が始まった。来週には、凱旋門賞がひかえている。はたして、オルフェーヴルは勝つのだろうか? 勝てば、その後、有馬記念に出走して今年を締めくくるわけだから、今年のG1戦線は、いやおうなしに盛り上がる。

 そこで、まず、私自身の予想のスタンス、競馬に対する考えをまとめておきたい。この欄で何度か書いているように、競馬予想は当てるためにやるものではない。いくら当てようと努力しても当てることは不可能だからだ。なぜそう言えるのか?

 以下、読んでほしい。

 

■なぜ予想は無意味か。投資と比較する

 

 ここでは、競馬を投資と考えてみよう。株と同じように馬券を買い、収益を上げられるかと考えてみよう。

 現在、投資の世界には、パッシブ投資とアクティブ投資の2通りのやり方がある。アクティブ投資というのは、いわゆるプロのファンドマネージャーが優良銘柄を選び、投資家はその選んだ銘柄に投資する。パッシブ投資では、初めから選ぶことを放棄(要するになにも考えない)し、ただ単に市場の平均(インデックス=世界全体の経済成長)に投資する。

 では、どちらが儲かるか? この答えは経済学では半世紀以上前に出ている。パッシブ投資である。なんにも考えないほうが、プロが考えた末に選んだ銘柄に投資するアクティブ投資を上回るのだ。もちろん、一時的にはパッシブがアクティブを下回ることもあるが、長期的には必ずパッシブが上回る。

 つまり、競馬も同じだ。考えるだけ無意味なのである。

 しかも、投資と違って、初めから25%の寺銭を取られているので、長くやればやるほど、予想して買おうとランダムに買おうと、的中と不適中を繰り返せば平均リターンは75%になる。要するに、予想は意味をなさない。

 

■データに基づいて検討すれば必ず答えは見つかる」はウソ

 

   では、こうした明白な事実がなにを物語るのだろうか?

 たとえば、競馬予想と学校の勉強と比較して見ると面白い。たとえば、学校では頭のいい子を集めた進学クラスは、当然、大学の受験合格率が高くなる。落ちこぼれクラスとなると、合格率はガクンと下がる。

 ところが、投資や競馬では、進学クラスと落ちこぼれクラスのリターン率は同じか、逆に落ちこぼれクラスのほうが上になってしまうのだ。そんなバカなと思うかたもいるだろうが、これは事実だ。

 つまり、このことから得られる教訓は、成績、血統、調子、騎手、コース適性などのデータをお勉強、検討し、じっくり予想するのは無意味ということ。まして、プロと言われる評論家、専門記者の見解を聞くことは、時間の無駄だ。彼ら予想家は、じつは、データなどなにも知らない素人、ド素人より、リターンで劣るのだ。

 じつはこれを証明する調査研究があるのだが、これを公表すると競馬メディアが成り立たなくなるので、いまのところ誰も公表していない。つまり、私たちは「専門家は素人よりすぐれている」「データに基づいて検討すれば必ず答えは見つかる」と、ありもしないこと信じているわけだ。

 

■人の意見を聞けば聞くほど、ドツボにはまる

 

 もう一つ。これも、競馬ファンが信じている、ありもしない思い込みだ。

 みんなの意見は案外正しい、という考え方がある。たとえば、ネットでの集合知や市場全体が出す結論は、少数の専門家が出す結論よりも正しいというものだ。競馬でも、本命になる馬は、多くのファンがそう結論した結果だ。それがオッズに反映される。

 しかし、そのオッズは本当に正しいと言えるのだろうか?

 「みんなの意見は正しい」となるためには、いろいろな見解を持った人が十分な数集まっていなければならない。集団に多様性が必要だ。同じような人間の集まりだったり、他人の意見に左右される人ばかりだったりでは、この考え方は成り立たない。

 そこで競馬だが、競馬サークルは同じような人ばかりで、みんな確信がもてない不安から他人の意見に左右されてばかりいる。したがって、この考え方は通用しない。競馬とは、人の意見を聞けば聞くほど、ドツボにはまるゲームだ。

 

■人間が勝手に「堅いレース」「荒れるレース」をつくっている

 

 テレビの競馬中継は100万年1日で、同じことを繰り返している。出演者(タレントと評論家)が、自分の予想を披露して、ああでもないこうでもないと言うだけ。その論法はいつも決まって「この馬を押します。そのワケは?」。これの繰り返しだ。

 しかし、その予想が当たること、外れることにワケなどない。

 前述したように、彼らがワケとする成績、血統、調子、騎手、コース適性などは、無意味だからだ。それなのに、こうしたデータがことごとく覆されて大穴が出たとき、全員、言葉を失って、こう言う。

 「荒れましたね」

  結局、人間が勝手に「堅いレース」「荒れるレース」をつくっているのだ。

 

■馬単でロードカナロア、ハクサンムーン、10-7の1点

 

 さてスプリンターズSだが、今回は、ロードカナロアで断然だろう。セントウルステークスで敗れたが、58キロで休み明け。今回は同斤量で、叩かれての上昇も見込める。となれば、ハクサンムーンを差し切れる。

 と、これが大方の見方だが、今回はこの大方の見方のとおり馬券を買う。

 つまり馬単で、ロードカナロア、ハクサンムーン、10-7の1点。

 考えるのが面倒なときは、大方の見方どおり買って負けるのが、もっとも正しい負け方ではないだろうか。自分で考えて負けると、やはり悔しいからだ。考えないで負ける。これが、いちばんすっきりする。

 すでに中秋の名月もすぎたので、ハクサンムーンは飛ぶだろう。

 

 第47回スプリンターズステークス(GI・芝1200m

  1-1 グランプリボス(5、内田博幸・矢作芳人)

  1-2 フォーエバーマーク(5、村田一誠・矢野英一)

  2-3 アドマイヤセプター(5、四位洋文・橋田満)

  2-4 サンカルロ(7、吉田豊・大久保洋吉)

  3-5 マヤノリュウジン(6、池添謙一・庄野靖志)

  3-6 ドリームバレンチノ(6、松山弘平・加用正)

  4-7 ハクサンムーン(4、酒井学・西園正都)

  4-8 パドトロワ(6、勝浦正樹・鮫島一歩)

  5-9 サドンストーム(4、武豊・西浦勝一)

  5-10 ロードカナロア(5、岩田康誠・安田隆行)

  6-11 スギノエンデバー(5、蛯名正義・浅見秀一)

  6-12 アウトクラトール(8、伊藤工真・宮徹)

  7-13 サクラゴスペル(5、横山典弘・尾関知人)

  7-14 マイネルエテルネル(3、柴田大知・西園正都)

  8-15 マジンプロスパー(6、福永祐一・中尾秀正)

  8-16 シルクフォーチュン(7、戸崎圭太・藤沢則雄)