G1予想[108]第18回秋華賞(2013年10月13日) 印刷
2013年 10月 11日(金曜日) 14:08

ティアーモから総流しで絶叫!

 

■初めから筋書き通りのTPP交渉

 

  TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が年内妥結に向けて動いていると、各メディアが伝えている。10日のニュ―スでは、安倍首相が訪問先のブルネイで会見し、「年内妥結に向け、大きな流れをつくることができた」と語った。また、この直前、バリ島で開かれたAPECでは、「交渉が前進した」と各紙が伝えた。さらに、今朝(1011日)の朝日新聞も、「聖域から除外220品目候補、TPPの重要品目」という記事を一面に掲載している。

 とすると、日本は大幅譲歩に踏み切ったことになる。というか、これは、予定通りの行動だ。「コメ、麦などの重要農産品5分野は絶対守る」というのは、ただの国内向けのポーズで、そんなことは初めからできるわけがないのだ。

 TPPに関しては、ここ2年間がいろいろと言われてきた。当初は反対の大合唱だった。それを見て、私は「どうかしている」と、ずっと思ってきた。だから、今回のことには全然驚かない。むしろ、5分野の加工品などに絞らず、全部キレイに撤廃してしまえばいいとさえ思っている。

「そんなことをしたら農家が続々と潰れる」というが、潰れた後、そこからまた新しい競争力のある農業を始めればいいだけだ。

 

TPPでは競争馬の輸入関税が撤廃される

 

 と、競馬の予想なのに、なんでこんな話を始めたかというと、TPPは競馬にも大きくかかわっているからだ。よく知られているように、現在、競走馬の輸入にも関税がかかっている。その額、340万円である。TPPが妥結すると、この関税も撤廃されることになる。

 なにしろ、TPPはすべての障壁をなくすことを究極の目的としているからだ。

 競馬に関して言うと、競走馬(受胎牝馬も含む)の輸入関税撤廃だけではない。日本国内の全レースの外国馬への開放、海外で認可された外国人馬主、調教師、騎手の参入なども含まれている。これは、条件付きの開放ではなく、無条件である。というのは、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドは日本馬や騎手を無条件で受け入れているからだ。

 つまり、TPPが妥結し、その中でこれらの項目が例外とされなければ、日本の競馬は大きく変わる。新馬戦や条件戦に、アメリカ産馬やオーストラリア産馬が出走し、それに各国の騎手が乗ったりする。馬主も多種多彩な顔ぶれとなり、レーシングプログラムも英語版が出る。なにしろ、全レースが国際競走なのだ。

 そうなると、馬主、騎手、厩舎から過去の成績など、国内だけではないから、予想の要素も増える。こんな楽しいことはない。

 

■農業だけを甘やかす理由なんてない

 

 と、私は一ファンとしてそう思うのに、競馬界におけるTPP問題の反応はまったく違う。輸入関税の撤廃問題だけに矮小化され、「海外から安い馬が入ってくれば、場産地の中小牧場はやっていけなくなる」ということだけが強調されている。

 つまり、ここでもTPPは反対なのだ。

 たしかに、TPP交渉参加国のかなで、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは日本以上に競馬が盛んだ。そして、とくにオーストラリアとニュージーランドは、日本に比べて馬の価格が安いとされる。だから、馬主は日本で買うより、オーストラリアとニュージーランドで「走りそうな馬」を買う。そうなると、日本の牧場はやっていけなくなるというのだ。

 これは、たとえばコメ農家、サトウキビ農家などとまったく同じ反応だ。

 しかし、やっていけないなら、ほかの仕事をすればいい。サラリーマンはどんどんリストラされている。サムソンに負けた半導体メーカーは潰れ、パナソニック、ソニー、シャープなどは、不要社員は「追い出し部屋」に入れられている。なぜ、農業だけ、国が税金で守らねばならないのか?

 

132億円が失われるという北海道庁の試算

 


 日本のTPP交渉参加が決まった後、北海道庁は競走馬の関税が撤廃の影響を試算した。それによると、道内の年間軽種馬生産額の約280億円は180億円に減少する。そうして、3000人の雇用が失われ、地域経済への影響は132億円に及ぶという。

 関税撤廃で輸入増加が懸念されるのが、「1000万円台の中堅馬」(道の担当者)だ。このクラスに関税がかからなければ「高額な優良馬以外の多くが米国産などに取って代わる」という。

 こうしたことを受けて、今年3月、同管内の生産農家約800戸でつくる日高軽種馬農協はTPP反対の決議を可決。木村貢組合長は「TPPで農家が減収になっても、コメなどのように国からの補填(ほてん)は受けられるのか」と心配しているという。(以上、北海道新聞記事参照)

 

■やってみなければわからない日本馬のレベル

 

 たしかに、こうなる可能性はあるだろう。

 JRAのデータを見ると、昨年はアメリカとオーストラリアからは、128頭しか輸入されていない。その額は計19億円である。また、昨年末段階でJRAに登録する競走馬約5200頭のうち、外国産馬は141頭とわずか約3%で、地方競馬では1%にすぎない。

 だから、関税撤廃後は、これらは一時的に急増するだろう。

 ただし、いくら安い馬が海外から入ってきたとしても、走らなければ、馬主に経済的なメリットはない。つまり、北海道庁の試算は、初めから日本馬のほうがコストパフォーマンスが悪いとしているのだ。

 しかし、競馬なんてやってみなければどうなるかわからない。最初は、そうやって安い馬がどんどん入ってきたとしても、もし日本馬のほうが走れば、多少値段が高くても、馬主はそちらを取るようになる。

 最近の日本馬は、ヴィクトワールピサ、オルフェーヴルを見ればわかるように、国際レベルにあるから、これは本当にやってみないとわからない。

 さらに、もし本当に日本馬のレベルが高ければ(私はそう思っている)、国際競争力があると証明されるのだから、今度は輸出していけばいい。安い馬が入って来ると困るなんて言っているより、輸出できる馬をつくるほうがよほどポジティブだ。

 

■日本馬のレベルが高いなら状況は逆転

 

 また、国際的にみて、日本の競馬の賞金は高い。だから、日本で競走馬を持ち、日本で走らせようとする海外馬主も多くなる。北海道生産馬のレベルが高いとなれば、牧場を買収して牧場経営に乗り出す国際資本も出てくる。

 実際、ドバイのシェイク・モハメドは、すでに「ダーレー・ジャパンファーム」を設立し、2008年には、鵡川にあった西山牧場を買い取るなどして、日本での馬産を拡大している。

 ダーレー・ジャパンファームは、現在では、北海道内に7つの牧場を持っている。

 こうしたことを考えれば、輸入関税の撤廃がそんなに問題があることとは思えない。それより、340万円という関税を維持し続けると、せっかく国際レベルに達した日本生産馬のレベルが落ちる可能性がある。

 規制に守られ、欧米諸国より賞金が高いレースを続けていると、結局はガラパゴス化しかねない。

 

■向こうの馬の値段は本当に安いのか?

 

 では、オーストラリア、ニュージーランドなどは、本当に馬の価格が安いのだろうか? 以下、日本でも名前が知られているオーストラリア産の活躍馬をネット検索で調べたところ、確かに安い。

◎サイレントウィットネス-----セリ価格約500万円(日本でもスプリンターズSを制覇、香港スプリント連覇。獲得賞金約94000万円)



◎ブラックキャビア-----セリ価格約1900万円(無敗のまま2525勝で引退、獲得賞金約55000万円)

◎テイクオーバーターゲット-----セリ価格約11万円(香港の名スプリンター、獲得賞金は約43000万円)



◎ロケットマン-----セリ価格約600万円(ドバイゴールデンシャヒーン、同レース22回。獲得賞金約4億円)

 なんと、テイクオーバーターゲットは約11万円である。これで億を稼げば、馬主にとっては投資効果抜群だ。私の記憶では、国内のG1ホースではテイエムプリキュアの250万円が一番安いはずだ。たしか、テイエムオペラオーは1000万円だったと記憶している。

 

■「思案中」と言うある馬主の見方

 

 しかし、安い馬がすべて走るわけではない。競馬を投資と考えれば、費用対効果がどれほどあるかである。とすると、オーストラリアなどで数百万円〜1000万円クラスの馬が、日本の条件戦(500万円下、1000万円下)でコンスタントに走れるかどうかである。

 そこで、知り合いの馬主に聞いたら、こんな答が返ってきた。

「平均するとオーストラリア、ニュージーランドの馬の値段は日本より安い。日本のセリの場合、落札平均価格はセレクトセールが約3000万円。それ以外のセリ市では約1000万円。それが向こうは半分以下だ。

 だから、関税がないなら買おうと思うけど、いきなりは無理で、エージェントを通すことになるから、輸送量などと合わせて200万円ほどは費用を見なければならない。で、もし馬の価格が500万円で、日本で23勝できるなら、十分もとが取れると思う。

 ただし、日本ならサンデーサイレンスの大成功で、だいたいどの血統の馬が走るかわかるが、アメリカやオーストラリアの場合はわからない。とくにオーストラリアの場合、血統は独特だし、南半球だから育成時期のずれもある。この辺を考えると、購入してみたいとは思うが、ちょっと思案中だ」

 

1000万円の馬と1億円の馬の違い

 

 日本の馬の価格は血統第一で、サンデーサイレンス全盛のときは、その子供は1億円はした。ディープインパクトは7000万円だったから、「安いほうだ」と言われた。

「馬主から見て投じられる金額にもよるが、たとえば、血統が悪い1000万円の馬と1億円の馬では、血統がいい1億円の馬のほうが、投資価値があると考える。それは、第一に活躍する確率が高く、その通り活躍すれば種牡馬として大きなリターンが得られるからだ。

 だから、血統が悪い1000万円の馬は、最低でもその額に見合った賞金と預託料などの費用を稼いでもらわねばならない。そういう馬が向こうにいるかだが、日本よりはいると言う人間が多いね」

 安い馬の中から走る馬を見つける。これは、長年、競馬に携わってきた人でも「なかなか難しい」と言う。たしかに、この確率が高ければ、馬主はビジネスとして成立する。

「それで成功しているのが、マイネルの岡田さんだ。ただ、あれはあの人だからできるわけで、それをオーストラリア産馬でできるかだね」

 

■投資、ビジネスとしての競走馬のコスト

 

 では、ここで、馬主の話から、実際に馬を持った場合、どれくらいのコストがかかり、このコストを回収するためにはなにが必要かを見てみたい。

 セリで1歳馬を1000万円で購入したとする。この場合、入厩するまでだいたい1年ほどかかるので、その費用はおよそ月30万円だという。つまり、1年で360万円。計1360万円だ。

 こうして2年目に厩舎に入ると、厩舎預託費がかかる。JRAの場合は、その費用は1頭あたり月に約60万円~80万円、地方競馬の場合は約20万円~30万円とされる。つまり、1年間預けると720万円~960万円である。そこで、この馬が怪我もなく7歳まで5年間現役を続けると仮定すると、36004800万円かかる。

 そこで、この高いほうの4800万円を取り、前記の1360万円と合算すると、1歳から7歳までのコスト総額は6160万円となる。

 

■カネをバラまく至れり尽くせりの制度

 

 では、このコストをどうやって回収するのだろうか?

 これは、競馬に出走して出走手当、賞金を稼ぐこと以外にない。

 JRAの場合、賞金は5着までに入った馬に対して支払われる。この賞金は、馬主に80%、調教師に10%、厩舎の厩務員に5%、騎手に5%といったかたちで分配される。新馬戦の場合、1700万円、2280万円、3180万円、4110万円、570万円となっている。仮にこの馬が新馬戦で1着になると、賞金は700万円なので馬主には560万円が入ることになる。

 次に出走手当てだが、これはいくつかあり、まずは「出走奨励金」で、5着までに入らなくても、一般競争では8着まで、重賞競争だと10着までに入ればもらえる。6着なら1着賞金の7%7着なら1着賞金の6%8着なら1着賞金の5%9着は1着賞金の3%10着は1着賞金の2%と決められている。

 また、ます。レースに出走させると着順に関係なくもらえる「特別出走手当」というのがある。これは、重賞競争の場合は41万円、特別競争は385000円、1勝している馬のレースは37万円、1勝もしていない新馬・未勝利戦は35万円となっている。

 さらに、中央開催とされる東京競馬場、中山競馬場、京都競馬場で行われたレースに関しては、これらの金額に1,000円を上乗せして支払われる。

 これ以外にも、「内国産場所有奨励賞」や「距離割増賞」、「父内国産馬奨励賞」などがあり、JRAの場合、ファンからのおカネを、まさにバラ巻いていると言える。こんな競馬は世界でも珍しく、日本は競馬関係者に至れり尽くせりの国だ。これなら、コスト回収は容易ではないかと思うが、そうでもないという。

 

■馬主はどうやって元を取るのか?

 

 知り合いの馬主が言う。

「元を取るという考えで行くと、月の厩舎預託費70万円を稼ぐには、月に2回レースに出走させれば出走手当だけで70万円を超えるので、これでランニングコストはカバーできるわけです。もし入賞すれば、これだけでプラスだ。

 しかし、そんな元気で丈夫な馬は少ない。休養期間もあるので、まあ、年間810レースで御の字です。これで23勝してくれれば、その馬はパフォーマンスがよかったということになる」

 問題は、そんな馬ばかり何頭も持てないこと。出走すらできなかったり、1勝もできなかったりするわけで、その場合は当然、赤字。また、故障する馬も多く、馬主経済はそこまでうまくいくものでないという。

 

■セリに来る海外バイヤーが増えている

 

 というわけで、TPPの話に戻るが、価格の安いオーストラリア馬、アメリカ馬が、こうした制度の中でコストパフォーマンスがいいかどうかは、やはりやってみなければわからない。ただ、香港やシンガポールを見ると、日本でも十分通用するか、あるいは費用対効果の面では上かもしれないと言う。

 最近、日本産馬の活躍で、年々、北海道のセリに参加する海外バイヤーは増えているという。TPPが決まり、海外との取引が活発になれば、海外バイヤーはもっと増えるという見方もある。

 いずれにしても、TPPは今後の日本の競馬を大きく変えるだろう。そんな中で、オルフェーヴルを超える馬がどんどん出てくれれば、競馬はもっと面白くなる。

 

■では、最後に秋華賞の予想をすると

 

 昨年は、ジェンティルドンナで絶対だった。

 しかし、今年は中心が不在だ。それでも、オークス3着馬でトライアルのローズステークスを制したデニムアンドルビーがやはり1番手だ。ただ、この馬は後方一気というスタイルなので、前が崩れない傾向の秋華賞では危なっかしい。続くのは、オークス馬で2冠を狙うメイショウマンボ、それに上がり馬で武豊の乗るスマートレイアーだろう。

   と、当たり前のことを書いても、買うのはまったく違って、ティアーモだ。これも上がり馬だが、買う理由はそんなことではない。

 ヒデとロザンナの『愛の奇跡』が大好きだからだ。あの曲の中で、ロザンナが「ティアーモ ティアーモ ティアーモ、アモーレ、アモレミオー」と叫ぶのを忘れられない。ティアーモから馬単、馬連総流しだ。

 そう言えば、ヒデはいつもデニムをはいていたので、デニムアンドルビーの馬単、馬連は厚めに買うことにしよう。

 

18回秋華賞

1-01 スマートレイアー       (3、武 豊・大久保龍志)

1-02 シャトーブランシュ      (3、北村友一・清水出美)

2-03 ティアーモ            (3、川田将雅・藤岡健一)

2-04 コレクターアイテム.     (3、秋山真一郎・須貝尚介)

3-05 セキショウ.           (3、吉田 豊・杉浦宏昭)

3-06 ウリウリ           (3、浜中 俊・藤原英昭)

4-07 トーセンソレイユ       (3I.メンディザバル・池江泰寿)

4-08 マコトブリジャール       (3、柴田大知・鮫島一歩)

5-09 ノボリディアーナ.        (3、幸 英明・松永昌博)

5-10 サクラプレジール        (3、福永祐一・尾関知人)

6-11 リボントリコロール       (3、横山典弘・菊沢隆徳 )

6-12 エバーブロッサム.       (3、戸崎圭太・堀宣行)

7-13 リラコサージュ.         (3、池添謙一・藤原英昭)

7-14 デニムアンドルビー      (3、内田博幸・角居勝彦)

7-15 ビーナストリック.      (3、津村明秀・中野栄治)

8-16 メイショウマンボ.        (3、武幸四郎・飯田明弘)

8-17 ローブティサージュ      (3、岩田康誠・須貝尚介)

8-18 セレブリティモデル.     (3、松山弘平・牧田和弥)