G1予想[026]第54回有馬記念(12月27日) 印刷

12月24日記

もっともストリー性のある馬、それは ミヤビランベリ

 

 今年はいつもと違う有馬記念だ。こんな不思議な年は本当に珍しい。まず、4歳馬が不在。一般的に競走馬は4歳の秋に完成すると言われているが、その4歳馬が一頭も出走しない。こんな年は過去にあっただろうか?

 さらに、今年はジャパンカッブ馬(ウオッカ)も秋の天皇賞馬(カンパニー)も出走しない。そればかりか、ジャパンカップの4着までの入着馬も、天皇賞の5着までの入着馬も出ていない。

 そのせいか、3歳馬は菊花賞馬スリーロールスをはじめにして、なんと7頭も出走する。そして、そのなかのたった1頭の牝馬ブエナビスタが1番人気になるのは確実だ。まさに、過去のどんな年とも違う有馬記念であり、そのため「1年の総決算」的な意味合いはまったくないと言っていい。つまり、今回の有馬記念は、ただの年末G1であって、ここで年度代表馬や最強馬が決まるわけではない。

  今年のJRAストリーCMのポスターも、この有馬が最後

 思えば今年は3歳のG1の勝ち馬はすべて違った。牝馬のほうはブエナビスタが2冠を取ったが、オークスは辛勝であり、秋華賞もエリザベス女王杯も追い込み不発に終わっている。こうなると、3歳馬が主役と競馬マスコミは書き立てるが、はたして本当にそうなのかと不安になる。とくにブエナの場合、横山典に乗り替わったとはいえ、中山コースであの乗り方をしたら届かないだろう。

 

 過去に秋の天皇賞とジャパンカップを勝った日本馬が出走しなかった有馬記念は4回(83年、87年、96年、01年)あり、いずれも人気薄馬が劇走している。このうち私が鮮やかに思い出すのは、83年の有馬記念。この年は私の父が死んだ年でもあり、その1カ月前に1人娘が生まれた年でもあるから、有馬記念をその年の締めくくりとして特別な思い入れで見た。

 勝ったのは、菊花賞4着馬リードホーユー(田原成貴)で、2着はテュデナムキング(郷原洋行)だった。この年は言うまでもなく、ミスターシービーが3冠馬になった年だが、そのシービーは有馬に出走しなかったので、リードホーユーなどの3歳馬は主役とは目されなかった。

 1番人気は7歳馬のアンバーシャダイ。レースはハギノカムイオーが逃げて、リードホーユーは2番手を追走し、4コーナーの内から鮮やかに抜け出して快勝した。アンバーシャダイの追い込みは届かず、2着に一緒に追い込んできたテュデナムキングも交わせなかった。

 テュデナムキングもリードホーユーと同じ3歳馬だったが、直前のダービー卿CTで初重賞勝ちをしたばかりで、まったく人気がなかった。

 

私はリードホーユーから買っていたが、テュデナムキングは無視。アンバーシャダイやその年のオークス馬ダイナカール、5歳牝馬のビクトリアクラウンなどに流していて馬券をハズした。テュデナムキングとアンバーシャダイが外から来たときは当たったと思ったが、アンバーシャダイがテュデナムキングを交わせないとわかった瞬間、力が抜けた。

それにしてもリードホーユーは不思議な馬で、有馬記念後に致命的な故障が判明して、そのまま引退した。つまり、唯一の重賞勝ちが有馬記念、それも3歳馬という記録を残した馬として、いまでも語り継がれている。まさに、有馬記念を勝つためにだけに生まれてきたような馬なのだ。

 

 そんなことが思い出されるから、今年の有馬記念も、強いとされる3歳馬が勝つ可能性が高い。とくに菊花賞の1、2着馬のスリーロールス、フォゲッタブルは有力だろう。G1勝ち馬が全部違った年は、やはり直前のG1馬のほうが有利であり、また強いはずだ。リーチザクラウンやアンライバルドも人気になるが、この2頭のほうが上だろう。

 ただし、ブエナビスタという牝馬が牡馬以上に人気になるのは、今回にかぎってなにか変だ。ジャパンカップで同じ3歳牝馬のレッドディザイアが3着に来たので、たしかに強いが、後ろから行ったら届かないと思う。かといって、中団につけてインを狙っても、中山は京都のように内は開かない。しかも、前には、逃げるテイエムプリキュア、追走のリーチザクラウン、ミヤビランベリがいる。

 

 さて、これを書くまでに過去の有馬記念の映像を、ユーチューブで何本か見た。前記したリード―ホーユーから、シンボリルドルフ、オグリキャップ、マヤノトップガン、マンハッタンカフェ、昨年のダイワスカーレットまで見て思うのは、このレースは本当に不思議なレースだということだ。逃げきりもあるし、中位差し、追い込みある。ただ、総じて中山だけに追い込みは不利である。そこで、今回もまた的中をめざして予想するので、まず、ブエナビスタを切ることにした。

 私は逃げ馬が好きだからよく買う。有馬記念でも何度も買った。しかし、今回のテイエムプリキュアは、まず無理だろう。過去にニットウチドリや去年のダイワスカーレットのような例はあるが、この馬はそれらに比べたら圧倒的に落ちる。ただ、2、3番手を行くと思われるリーチザクラウン、ミヤビランベリ、マツリダゴッホ、シャドウゲイトらが馬鹿にして追走しなかったときだけ怖い。

 

それでは、好位追走から抜け出すであろう馬はなんだろうか?

3歳馬からはスリーロールス、フォゲッタブル、イコピコ、そして古馬からは天皇賞後ここ1本に絞ったドリームジャーニーではないだろうか? ドリームジャーニーは宝塚記念馬だし、右回りが得意なので、古馬のなかでは最有力だと思う。ただ、私がもっとも気になるのは今年もっとも活躍したミヤビランベリだ。2、3番手追走からインを突ければ、暮れの中山の荒れた馬場でもっとも粘りこみがはかれるのは、この馬だと思う。

ミヤビランベリは、日高の零細牧場、原武久牧場の生産馬で、牧場主の原さんは今年69歳にして、初めてG1に生産馬を出走させる。日刊スポーツの記事には、「まだ夢を見ているようで、いまだに信じられない」というコメントが載っている。また、妻の66歳になるナツ子さんとともに「これが最初で最後になるんじゃないか」と言い合っているという。 

原牧場は、老夫婦2人の牧場。後継者もいなくて、廃業を考え始めていた昨年、突如としてミヤビランベリが重賞を勝ち、今年はなんと重賞を3勝して、夫婦を夢の舞台へと連れてきた。

原さんはこれまで2回、脳梗塞で倒れている。そして、妻のナツ子さんも暴れた馬に引きずられ足に大けがをしたことがある。それでも牧場を営んできたという。

 

リードホーユーが有馬を勝つためにだけ生まれてきた馬とすれば、このミヤビランベリも、この老夫婦に最後の夢を与えるためにだけ生まれてきた馬かもしれない。高齢化社会になったいまの日本を思うと、今年の有馬を勝つのは3歳馬でなく古馬であり、しかも、こうしたストリーを持つミヤビランベリがいちばんふさわしのではないだろうか?

ほかの馬のストリーがたいしたことがない以上、私はこの馬から買おうとほぼ決めた。そして、本線も、夢をかなえる意味で、古馬のドリームジャーニーにしようかと思っている。もちろん、3歳馬スリーロールス、フォゲッタブル、イコピコはきちっと押さえる。したがって、結論は、ミヤビランベリからの馬単と、馬連総流しをまず買い、そのうえで本線のドリームジャーニーを厚く、3歳馬スリーロールス、フォゲッタブル、イコピコもやや厚めに買ってみようと思う。ただし、これらの3歳馬がブエナのように後方から追走するとしたら、ブエナともども届かないかもしれない。

 いずれにしても、逃げるテイエムプリキュアを好位で追走し、4コーナーからインを突いてまくった馬が勝つはずだ。 武豊のリーチザクラウンがそれをやるという可能性もある。蛯名のマツリダゴッホもやりそうだが、この馬は外をまくるだろう。だから、ミヤビランベリが勝つためには、ペースがやや早めで、リーチザクラウンとマツリダゴッホと同じようにまくりに出て、直線の坂でバテないことだ。バテないという面では、ミヤビランベリのほうがこの2馬より確実に上だ。

 そして、そこに ドリームジャーニーの最後の瞬発力勝負の中位差しが決まれば、今年の有馬の「夢」は完成する。しかし、こんなにうまくいくはずはないだろうな?