G1予想[073] 第42回高松宮記念(2012 年3月25日) 印刷
2012年 3月 22日(木曜日) 00:37

 馬券は物語(ストリー)を買う

 ロードカナロア、カレンチャンの1点勝負

 

 現在発売中の『文藝春秋NEXT』(2012年4月臨時増号)の「マネーの教科書」特集で、橘令氏が、こんなことを書いている。橘氏は、現代を「夢を語れなくなった時代」と言い、最近の金融危機による投資低迷について、こう述べるのだ。

 

 ≪株券という紙切れに価値があるのでなく、投資家は夢に対してお金を投じる。物語(ストーリー)がなくなってしまえば、証券会社は金融商品を売ることができない。金融危機の本質は夢の崩壊なのだ。

 日本では、もはや首相が国民に向かって夢を語ることはない。東日本大震災と福島原発事故のあと、私たちが聞かされるのは、財政の悪化、消費税増税、年金制度の危機といった暗い話ばかりだ。

 このようにして、国家にも市場にも夢を見ることができなくなって、私たちは家族とか恋人とか友だちかの身のまわりの小さな夢がすべてだと思い込むようになった。≫

 

 これは、投資の話だが、馬券購入も投資と考えるなら、競馬ファンもまた夢を買っているのである。橘氏の文章の言葉を代えてみれば、一目瞭然だ。 

 

≪馬券という紙切れに価値があるのでなく、競馬ファンは夢に対してお金を投じる。物語(ストーリー)がなくなってしまえば、競馬主催者は馬券を売ることができない。≫

 

 というわけで、今回あたりは、物語(ストーリー)を買ってみようと思い立った。この物語(ストーリー)に格好の馬がいる。カレンチャンとロードカナロアの2頭だ。まず、この2頭は、同じ厩舎(栗東・安田厩舎)の馬であり、担当厩務員も同じだ。

 その担当厩務員、岩本龍治助手(35)のインタビュー記事が、21日付の『日刊スポーツ』に載っている。それによると、岩本助手の父親の幸治さんもG1に担当馬を2頭出ししたことがあるという。1994年の阪神3歳牝馬ステークス(現阪神JF)に、エイシンバーリン(2番人気)とエイシンサンサン(5番人気)で、3、6着だったというのだ。

 

 厩務員の夢は、担当馬がG1を勝つことである。しかし、幸治さんはそれが果たせず、2009年に58歳という若さで、肺がんで亡くなってしまった。「父はG1を勝つには実力だけでなく運も必要と言っていた」と岩本助手。だから、去年の秋、カレンチャンがG1を勝つと、すぐに墓前に報告に行ったという。このカレンチャンに、今度はロードカナロアが加わった。そして、おそらく1、2番人気を分け合う。これこそ、ストリーだろう。

 

 これまでG1で、同厩舎の馬の1、2着(親子どんぶり)はあるが、それが同一厩務員ということはない。しかも、この2頭は、おそらく1、2番人気を分け合う。これこそ、ストリーだ。

 もう一つ。先週の阪神大賞典は、福永ギュスターブクライ、池添オルフェーヴルという順だった。今回も、ロードカナロアには福永、カレンチャンには池添が乗る。先週と同じことが、また起こる。

 ロードカナロア、カレンチャンの馬連1点勝負。