13/02/19 ●経団連が「電子出版権」の新設を求める声明(著作権法改正案)を公表 印刷

経団連は出版社などに著作権法上の権利を付与する(著作隣接権)動きが広がっていることを受け、独自の法改正案をつくり、HP上で「新設を求める」声明を発表した。

  そのポイントは、著作者と電子書籍の発行者が結ぶ契約によって生じる「電子出版権」を定義し、契約を結んだ出版社などの権利を確保することにある。従来の著作権法は、紙による出版を想定してつくられており、出版権の規定はあるが、電子出版権の規定はない。

  つまり、新たに「電子出版権」を確立するのが、この改正案の目的である。

  ただ、これは従来の出版社だけでなく、電子書籍を発行する者すべてに契約で与えられる権利とし、異業種の参入も想定している。経団連では、今後、この改正案を文化庁や出版社など関係者に提案し、同意を求める方針。

 

《著作権法》--------------------------------------------------------------------------------

(出版権の設定)
  第七十九条  第二十一条に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権者」という。)は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。
2  複製権者は、その複製権を目的とする質権が設定されているときは、当該質権を有する者の承諾を得た場合に限り、出版権を設定することができるものとする。

(複製権)
  第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

(出版権の内容)
  第八十条  出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。
2  出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき、又は、設定行為に別段の定めがある場合を除き、出版権の設定後最初の出版があつた日から三年を 経過したときは、複製権者は、前項の規定にかかわらず、当該著作物を全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)に収録して複製 することができる。
3  出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない。

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   経団連の改正案にある「電子出版権」の考え方は、従来の著作権法上の「出版権」の延長線上にある。

  以下、HPより、その考え方の根幹部分を引用する。

  「出版権」とは、著作権者との契約によって設定される権利であり、著作物を、(1)頒布の目的をもって、(2)原作のまま、(3)印刷その他の機械または化学的方法により、(4)文書又は図画として、(5)複製する権利 である。なお、著作権法上、出版権は「複製権」の一部である。

 同権利は、著作権者の有する、著作物を勝手に複製されない権利である「複製権」をもとに、著作権者が出版者に設定行為をして初めて発生する権利であり、自 動的に発生する著作権や著作隣接権とは性質が異なる。存続期間についても、出版権は設定行為に定めがないときは3年で消滅するが、既存の著作隣接権は権利 発生から50年存続する。

  また、「印刷その他の機械的または化学的方法により」という要件から、電子書籍を作成・流通させる権利や違法電子書籍の作成・流 通を差し止める権利は有しない。なお、他人への再許諾(サブライセンス)は禁止されている。

  これに対し、今回提案している「電子出版権」は、「印刷その他の機械的または化学的方法により」を「電磁的な方法により」に、または「文書又は図画とし て」を「デジタル情報として」に変換したものであり、著作権者が有する「複製権」と「自動公衆送信する権利」をもとに構成される。「自動公衆送信する権 利」により「電子出版権者」は電子書籍を作成・流通させる権利や違法電子書籍の作成・流通を差し止める権利を有することとなる。

  電子書籍は、紙媒体の著作 物と異なり適切な流通を確保することが重要と考えられることから、他人への再許諾(サブライセンス)が可能なものとして設計するものとする。

 

 以下は、同じくHPから引用した「改正案」のポイント

《電子出版権の要件》---------------------------------------------------------------------

(1)電子書籍を発行する者に対して付与される

(2)著作権者との「電子出版権設定契約」の締結により発生する

(3)著作物をデジタル的に複製して自動公衆送信する権利を専有させ、

  その効果として差止請求権を有することを可能とする

(4)他人への再利用許諾(サブライセンス)を可能とする

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(1)電子書籍を発行する者は、紙媒体を出版する既存の出版社(者)とは限らない。むしろ今後は異業種からの参入も促進されるべきである。従って、出版者ではなく電子書籍を発行する者に対して付与する権利とする。

(2)第一に守られるべきは著作者の権利であり、電子出版を行う者が著作権者の意向と関係なく権利行使する制度とすべきではない。従って、電子書籍を発行する者の権利は、著作権者と「電子出版権設定契約」 を締結することで初めて行使できる権利とする。同契約書の締結は、両者の間の合意が前提であるため、必ず著作権者の意向が反映され、「電子出版権者」の差 止請求権の行使は、著作権者の権利を守ることと同義となる。電子出版権の設定は、著作権者・「電子出版権者」間の書面による契約締結行為の促進につなが る。

(3)「電子出版権設定契約」によって、電子出版権が設定された「電子出版権者」は、著作物をデジタル的に複製し、自動公衆送信する権利を専有することを可能とする。この効果により、「電子出版権者」は、インターネットを介した違法な電子書籍の流通を自ら差止める権利を有することが可能となる。

(4)電子書籍は、電子出版権者が自ら配信するのみならず、配信業者等を通じて流通する可能性等も高いことから、電子出版権の第三者への再許諾(サブライセンス)を可能とすることにより、流通の円滑化を確保する。