09/09/19●米司法省がグーグルの和解案にストップを! 印刷
 アメリカの司法省は、18日、グーグルの「ブックサーチ」をめぐり、著作権者への収益還元を柱とする和解案の修正を、同社や米作家らの業界団体に指示した。
 司法省は同日、来月7日に和解案を審理するニューヨーク州の連邦地裁に対し、問題点に関する見解を文書で提出した。この文書で、司法省は、「(現行の和解案は)審理開始の法的要件を満たしていない」と指摘。グーグルと昨年10月和解に合意した同国の作家協会、出版業界団体のほか、グーグルに対抗しているアマゾン・ドット・コムら全当事者に対し、「(ブックサーチの)使用許諾制限や潜在的な著作権者への追加保護策」など具体的な課題を挙げて協議を続けるよう求めた。

 司法省がこうした見解を出したのは、和解が成立すればグーグルに世界最大のデジタル書籍の商業利用を独占的に認めることになるため、反トラスト法(独占禁止法)に触れると考えたためだろう。
 また、アメリカ以外の著作権者についての「利益保護が明確でない」点も、考量したものと思われる。それは、和解離脱を申告しない限り合意とみなす「オプトアウト方式」ではなく、合意表明による「オプトイン方式」などの改善策も提案していることで、明らかだろう。

 グーグルが進める「ブックサーチ」は、この先、まだまだ波乱が続きそうだ。この問題に関して、「時事Blog」や連載blogの「メディアの未来」で何度も書いてきたが、書籍のデジタル化が、この先、どのようなかたちで収束するのかは、私も予想できない。

 司法省は、今回の文書のなかで、(1)反トラスト法について、現状では違反の疑いが濃厚(2)原告を除く多数の著作権者を代表していない−−の2点については、明確に指摘している。
(2)に関しては、明らかにアメリカ以外の著作権者の権利保護や抗議を配慮した結果だろう。それは、和解離脱を申告しない限り合意とみなす「オプトアウト方式」に否定的なことで明らかだ。多分、この問題は、今後、合意表明による「オプトイン方式」で決着するのではないかと思う。

 ただ、今回の司法省の見解がどうであれ、現実問題として本のデジタル化はどんどん進んでいく。これによって、私たちの本の読み方が、今後、革命的に変っていくのは事実だ。
 それが、グーグルのような単一の企業とそれと連動した一握りの著作園団体によってコントロールされるのか、それとも司法省が示した(グーグルが反トラスト法に抵触する)ように、複数のサービス提供社によってもたらされるのか、その岐路に来ているということだろう。

 とすれば、今回の司法省の見解は、きわめて健全である。なぜなら、グーグルが先行したとはいえ、書籍デジタル化のほぼすべてを一私企業にすぎないグーグルに独占させるのは危険すぎるからだ。
 もし、グーグルのやり方を認めてしまえば、英米圏で人類の文字化された文化は独占されかねない。これは、いい悪いという単純な問題を超えている。文化の多様性のためにも、避けなければならないことだ。