10/01/06●出版社の雑誌記事有料配信の実験が開始、来年実用化。成功の可能性は? 印刷

  講談社、小学館、集英社など大手を含む50の出版社が協力し、雑誌の記事をインターネットで有料配信する共同サイトの実証実験が1月27日から始まる。「週刊文春」「週刊現代」から女性誌や専門誌まで最大100誌が参加の予定だ。

 これは、「日本雑誌協会」を中心に、出版界が約1年前から検討を重ねてきたもので、業界全体が「デジタル化に対応しないと未来はない」という危機感を持ったからだ。そこで、2009年8月にまず協議会が設立され、その後は、携帯電話事業者や家電メーカー、印刷会社など40社以上の関連企業も加わって、課金・決済方法やデータ形式の統一、著作権処理などシステムづくりを協議してきた。

 今回始まる実証実験は約3000人のモニターで2年かけて行う予定で、1年目はパソコン、2年目は携帯電話や専用端末が対象になる。参加モニターには通貨に見立てたポイントが与えられ、購読したページ数などに応じてポイントが支払われる。

  ただ、この試みが成功する可能性は低いと、私は関係者から聞いている。それは、1、各出版社のスタンスがバラバラ 2、ほかの配信サービスとの差別化が曖昧  3、課金システムであること 4、単なる雑誌記事のバラ売りにすぎない 5、出版社側に専門家が少ない----など、さまざまなハードルがあるからだ。

 しかも、新聞社が連合してサイトをつくったのと同じく、単に雑誌出版社が連合しただけという感じは否めない。そんな特色のないプラットフォームに、はたしてアクセスが来るだろうか? 最新ニュースでもない雑誌記事に、ネットのようなインタラクティブなメディアで需要があるとは考えにくい。なぜ、出版社連合の枠を飛び越え、新聞などほかの紙メディアも巻き込んだ総合的な
プラットフォームをつくろうとしないのだろうか。