10/02/02●アマゾンが「キンドル」での電子書籍価格を一部値上げ。なぜ?  印刷
 アマゾンは同社のサイトで、一部電子書籍の価格を12.99~14.99ドルに引き上げることを明らかにした。これまでは原則として9.99ドルだったが、マクミラン社(イギリス)の引き上げ要求に、アマゾンが応じることになった。

 アマゾンが出した「キンドル」利用者向けの発表文によると、「要求価格は不必要に高い」としながらも、「マクミラン社の作品も提供したい」と理解を求めている。マクミラン社は、電子版の価格が低くすぎるとして値上げを要求してきたが、これまでは、アマゾンが反発してマクミラン社の書籍は一時的に販売が中止されていた。

 では、なぜ、ここにきて要求をのんだのだろう? それは、アップルのiPadによる電子書籍リーダー市場の参戦で、今後のコンテンツ集め競争が激化すると考えたからだろう。米英ではハードカバー本は日本などよりはるかに高く、25~30ドルはする。これをアマゾンは10ドル以下で提供してきたから、「キンドル」も売れた。しかし、出版社も著者もこうした低価格では、苦しくなる一方だった。

 マクミラン社のあとに続く大手出版社が出るかどうかは不明だが、今後、電子書籍リーダー市場が拡大すれば、販売価格をめぐって、プラットホーム側とコンテンツ提供側の綱引きが活発化するはずだ。日本では先の話だが、電子書籍の販売価格に関して、再販制度の適用がないため、いったいどの程度が妥当なのかは、いまのところ誰もわからない。

 今回、アマゾンは、「14.99ドルが適正かどうかは利用者が判断する。ほかの大手出版社が同じ道を歩むとは思わない」と、価格引き下げに応じたものの、いちおうは読者よりのポーズを取っている。