10/11/10●『1Q84』ほか人気作家の中国語海賊版がアップストアで販売されていた! 印刷

 ついにというか、いずれ起こるだろうと予測されたことが、電子書籍の世界でも起こった。11月9日に、各メディアが伝えるところによると、村上春樹氏の『1Q84』や東野圭吾氏の『白夜行』など日本のベストセラー小説の中国語版が、著者や出版社に無断で電子書籍化され、アップル「AppStore」で販売されていたという。村上氏の翻訳本を刊行した台湾の出版社は「われわれと無関係で海賊版だ」としており、日本の作家側は、当然のことながらアップルに削除を依頼したそうだ。

 それにしてもアップルの事前審査はコンテンツの内容に関しては厳しいが、著作権者の確認ということに関しては詰めが甘いというか、ほとんどチェックしていないということが、これで明らかになった。以前、音楽の世界でPerfumeの音源が「iTunesStore」に勝手にアップされて削除されたこともあったことを思えば、今回のことは、当然予測できた。

 おそらく、海賊版業者は、この盲点をついて、本をスキャナーで取り込むなどして電子化したはずだ。そうして「AppStore」に出し、バレるまでに稼げるだけ稼いでしまえばいいと、やったのだろう。これを事前に見破るのは難しいかもしれない。

    今回の海賊版のもとになった中国語版『1Q84』(時報文化出版)

 しかし、アップルは、電子書籍の販売から手数料を取っている。その意味では、チェックをスルーさせたことは、海賊版の販売に加担したことなる。じつは、収益だけを考えるなら、海賊版だろうと正規版だろうと、アップルにとってはたいした問題でない。実際、アプリに関しては、中国のiPhoneアプリはWebサイトのコンテンツをそのままパクってアプリ化したものだらけということも言われている。しかも、アップルはこの状態を放置しているとさえ言われている。

 アップルは、著作権者の依頼で、ただちに海賊版を削除することになるが、削除するだけでいいという問題ではないはずだ。皮肉なことに、海賊版はメイドインチャイナがほとんどだが、アップルの製品も一皮むけばほとんどがメイドインチャイナだ。

 あと、つけ加えておきたいのは、今回の件で東野圭吾氏は「自分の作品はすべて電子化を許可していない」と言っているが、巷では、読者は勝手に電子化してしまってPCや電子端末で読んでいる。いわゆる「自炊」が日本では大流行中だ。もちろん、中国でも行われている。
 今回は、そうしてつくった本を「AppStore」で売ったからバレたが、仲間やグループで売り買いしたら、当然、取り締まれない。電子書籍は、いまのままでは、そうした流通の方が主流になるだろう。これは、防ぎようがない。