11/03/20●1月の米電子書籍の売上げが前年から倍以上に!ついにクリティカルマス・ポイントを上回る! 印刷

 米出版社協会(Association of American Publishers)は3月18日、今年1月の市場統計情報を発表した。それによると、1月の書籍市場全体の出版社純売上高は卸売(出版社純売上)ベースで、前年同期比1.9%減の8億570万ドルだった。

 ただ、電子書籍(E-Book)販売は伸びており、なんと、前年同期比2.1倍となる6990万ドルになった。これは、卸売ベースであるため、小売ベースでの金額はさらにこの2倍強程度になっているという。

 このように電子書籍が伸びるなかで、ハードカバーやペーパーバックの売り上げは下落が続いている。大人向けハードカバーの売上げは2010年1月の5540万ドルから、2011年1月には4910万ドルに低下。大人向けのペーパーバックの売り上げは同じ期間に30%減少した。

 つまり、ついに紙のハードカバーやペーパーバックの売上げを電子書籍が上回ったことになる。

 このニュースは衝撃的である。E-Book の売上げの6990万ドルという数字は、1月の一般書籍販売額(2億9700万ドル)の23.5%に相当するからだ。もちろん、新刊ハードカバーを圧しており、これはかなりショッキングな数字だ。

 マーケティング用語に「クリティカルマス・ポイント」(Critical Mass Point)というのがある。1962年に米国の社会学者であるエベレット・ロジャース(Everett Rogers)が提唱したもので、これは、ある商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がるための分岐点となる普及率のこと。

 市場に登場した新製品は、最初は最も先進的なイノベーター(2.5%)と呼ばれる消費者層に受け入れられ、次に新しいものに敏感なアーリーアダプター(13.5%)と呼ばれる利用者層に広まる。続いて、遅れてやってきた利用者層レイトマジョリティ(34%)に広がり、市場全体の普及率が「クリティカルマス・ポイント」に到達すると、一気に普及するとされる。その際の分岐点とされる普及率は、市場の約16%だから、今回E-Book が記録した23.5%は、すでにこの「クリティカルマス・ポイント」を上回っている。

    

 こうなった以上、アメリカでは、今後は確実に「E-First」の時代になるのがはっきりしてきたと言えるだろう。「電子が先で紙が後」の時代の始まりだ。こうなると、当然のように、本の制作過程も変化する。もう、紙の本を制作してから電子版をつくるなどという編集作業はしなくなり、電子と紙の両方を見据えた編集作業に移行する。今後はHTML+CSSという「ePub」に適した方法が主流になり、それからプリント版のアウトプッをするようになる。

 アメリカでは、本はとうとうウエブ上で編集する時代になったのである。