11/04/06●ミッドクラスの作家は電子書籍では暮らせない? SF作家が「Kindle」上での自著販売推移を公開! 印刷

アメリカには、ミッドクラスと呼ばれる中堅の作家が多くいる。彼らは、一部のベストセラー作家のように数多くのファンを持たないが、それでもコアのファンを得て、作品を出版することで生計を立ててきた。そんな一人、SF作家のトバイアス・S・バッケル氏が、自身のブログで、自分の作品を電子書籍としてKindle上で販売した実績を公開した。4月1日にアップされたその記事「A year of selling Tides From The New Worlds」には、詳細な推移グラフも付けられているので、電子書籍がどれほどの収益を上がられるかを考察するうえで大いに役に立つ。

 今回公開されたのは、バッケル氏のショートストーリー集「Tides from the New World」の販売成績で、同氏は研究も兼ねて2010年4月からKindle上で同作品を販売し始めたという。当初、バッケル氏は、とくにプロモーションを行なわず、価格を2.99ドルに設定した。すると、月間の販売部数は最初は20部を超えたが、平均すると10部前後。その後は、価格を少し上げて4.99ドルにしてみたが、販売部数に変化はなかった。ところが、価格を99セントに下げると部数は一気に117部にまで跳ね上がり、収益も増えた。しかし、それもしばらくの間で、販売部数はまた元に戻っているという。

 そこで、収益をみると、月に少ないときで約15ドル、多いときでも約50ドルなのだから、 これでは生計は成り立たない。バッケル氏は、「SF小説のようなマニア向けのジャンルでは、旧作品をふくめ作品を数多く投入しないと、電子書籍はビジネスとして安定しない」と、結論付けた。つまり、プリント版でミッドクラスとなった作家でも、電子書籍では生計を立てることも難しく、また、電子書籍は99セントのような低価格でないと売れないということだ。

   ■Here’s all the data again : date copies sold profit price of book

    May-10  25   52.325   2.99
    Jun-10  27   56.511   2.99
    Jul -10  13   27.209   2.99
    Aug-10   8   16.744   2.99
    Sep-10   7   14.651   2.99
    Oct-10   8   16.744   2.99
    Nov-10   8   27.944   2.99
    Dec-10 11   38.423   4.99
    Jan- 11  9    31.437  4.99
    Feb-11 11    39.922  4.99
    Mar-11 117  47.228   0.99

   ■And here is a cleaned up chart: