メディアの未来[004]休刊続々、雑誌の衰退が止まらない 印刷

■休刊続出、雑誌の衰退が止まらない

 

雑誌の「休刊」ニュースが止まらない

 

 現在、日本の雑誌はどんどん部数を落としている。このままいけば、今年は、去年を上回る勢いで、休刊する雑誌が増えるだろう。
 雑誌部数の低迷は、すでに十年以上も続いているが、この2、3年で急加速した。そして、世界同時不況で、さらに加速している。

 最近の「休刊」(事実上の「廃刊」)のニュースを拾ってみても、月刊総合誌『諸君!』(文藝春秋)、月刊女性誌『Cawaii!(カワイイ!)』(主婦の友社)、情報誌『エスクァイア』日本版(エスクァイア マガジン ジャパン)、就職情報誌「就職ジャーナル」(リクルート、今後はWebとムックに移行)など、もはやジャンルに関係なく、雑誌は市場から姿を消しつつある。



夢も希望もなく、ただ記事をつくる雑誌編集者



 こうした状態に、現在の雑誌編集者たちが打つ手はほとんどない。なぜなら、市場そのものが縮小しているからだ。かつて私も雑誌編集者だったから、その経験からいうと、部数が落ちたときにすることといえば、きまってタイムリーで当たる企画探しである。もちろん、スキャンダルやスクープ探しにも血眼になった。

 読者調査をし、企画を出し合い、編集会議を開いて「当たる企画」を決めた。私は、週刊誌の現場にいたから、スクープを求めてかけずり回った。
 そうして、うまく企画が当たれば、部数は回復したし、また、世間に雑誌のパワーそのものを認知してもらうことができた。

 しかし、いまはいくら企画会議を開き、タイムリーな企画、当たると思われる企画やスクープをやってみても、部数は回復しない。雑誌そのものが「時代遅れ」のコンテンツになってしまったからだ。これはもはや、手のつけられない状態と言っていい。

 いま、雑誌編集者は、夢も希望も失い、ただ、締め切りに迫られて記事をつくっているだけだ。この作業は、とてつもなく虚しい。



いずれ、2008年は「雑誌崩壊元年」と呼ばれるようになる



 ここで、昨年、2008年の雑誌界をふり返り、どんな雑誌が「休刊」したかを列記しておきたい。いずれ、出版界の歴史が書かれるとき、2008年は「雑誌崩壊元年」と言われるに違いない。それほど、有名雑誌の休刊が相次いだ。

 主なものだけを挙げると、まず、90年以上の歴史がある『主婦の友』(主婦の友社)、ノンフィクション系オピニオン総合誌『月刊現代』(講談社)、映画誌『ロードショー』(集英社)、斬新な誌面展開を続けた『広告批評』(マドラ出版)などが思い浮かぶ。いずれも、その分野で一時代を築いた雑誌だ。
さらに、『PLAYBOY日本版』(集英社)、『週刊ヤングサンデー』(小学館)、『BOAO』(マガジンハウス)などのほか、新聞社系では朝日新聞社の『論座』、読売新聞社の『読売ウィークリー』も休刊に追い込まれた。

『ロードショー』の休刊を発表したとき、集英社はこう説明した。
 「ネットやモバイルの比重の高まりで、部数、広告収入とも減少の一途だった」
 これは、なにも『ロードショー』だけではなく、休刊した雑誌すべてに共通する理由である。

 このブログでくり返し書くことになるが、出版界のピークは1996年である。出版科学研究所によると、取次ルート経由の書籍、雑誌の推定販売額は、1996年の約2兆6563億円をピークに下がり続け、2007年は約2兆853億円に減っている。長く「2兆円産業」と言われてきた出版界だが、もはや、そうは言えなくなったばかりか、この販売額の半分以上を閉める雑誌市場が1兆円割れするのは、時間の問題だ。



ショックだったのは、『月刊現代』と『読売ウィークリー』



 2008年の休刊誌でショックだったのは、やはり『月刊現代』(講談社)である。これは、私ばかりか、当事者である講談社の関係者たちも相当驚いたようだ。講談社社員のなかには、実際に発表されるまで「まさか、現代が」と思っていた者も多かったという。


『現代』ブランドは講談社の看板でもあり、総合出版社なら、こうしたオピニオン、ノンフィクション雑誌を持っていることで、ジャーナリズムの命脈を保っている。それが、突然の打ち切りに、たとえば作家の重松清氏などは、「講談社はジャーナリズムの看板を下ろすのか」とまで、残念がった。

 また、「ついに週刊誌までも」と思わされたのが、『読売ウィークリー』(読売新聞)の休刊だった。新聞系の週刊誌は、もともとそれほど部数が多くなく、内容もおとなしいから、やもうえない面もあるが、総合週刊誌だけにショックは大きかった。
 総合週刊誌は、いまやまったく売れない。読者は年々高齢化し、これに団塊世代の退職が拍車をかけ、今後は、さらに何誌か休刊に追い込まれるのは間違いない。



「冬の時代」を通り越して「氷河期」に突入



 金融危機がかってない消費不況をもたらし、それが影響しているのも事実だが、出版不況の最大の原因は、「紙ばなれ」である。もはや、紙による出版(プリントパブリッシング)は、「冬の時代」を通り越して「氷河期」に突入している。

 では、最後に、2008年の「出版界 10大ニュース」を業界紙「出版春秋」(2008.12.10)
から再録しておきたい。トップは、やはり「雑誌の休刊」である。

<2008年の10大ニュース>「出版春秋」(2008.12.10)

1、雑誌、構造的変革期に。主要定期雑誌が軒並み部数減、休刊誌も続出。
2、草思社が民事再生法申請を経て、文芸社傘下に。自費出版大手の新風舎の事業も継承。
3文芸社の『血液型自分の説明書』が累計で500万部を突破。
4、ブックオフが洋販ブックサービスより青山ブックセンターなど新刊書店12店舗を経営傘下に。
5、朝日新聞出版、4月1日から分社化。日経BP社、日経ホーム出版社と統合、7月から新体制に。新聞社系出版社が相次いで新体制に。
6、亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』(光文社)が累計で100万部を突破。海外文学の新訳ブームが持続する。
7、集英社、小学館プロダクションに資本参加。角川グループは中国の広州の出版社と提携。日本の出版社、海外戦略に本腰入れる。
8、小学館、「日本大百科全書(ニッポニカ)」をヤフーサイトに無料公開。
9、ベストセラーは東野圭吾のひとり舞台。『流星の絆』『容疑者Xの容疑者』などが映像化でベストセラーを席巻。
10、小学館、講談社が「少年マガジン」「少年サンゲー」創刊50周年でプロジェクトチームを組む。